データ分析で年俸31億円の複数年契約を勝ち取ったベルギー選手
NEWCASTLE UPON TYNE, ENGLAND - DECEMBER 19: Kevin De Bruyne of Manchester City applauds fans following the Premier League match between Newcastle United and Manchester City at St. James Park on December 19, 2021 in Newcastle upon Tyne, England. (Photo by Lynne Cameron - Manchester City/Manchester City FC via Getty Images)

データ分析で年俸31億円の複数年契約を勝ち取ったベルギー選手

デ・ブライネは、データアナリストのチームと協力して、マンチェスター・シティでの彼の現在の影響力と将来の価値を評価し、高額年俸を勝ち取った。

吉田拓史

サッカー・ベルギー代表のケビン・デ・ブライネは、2021年4月、現在の契約が2年残っているにもかかわらず、マンチェスター・シティと大型契約を結んだ。これは、現在の契約から30%増で、イングランドプロサッカー選手協会(PFA)年間最優秀選手の契約期間を2025年まで延長するものだ。

デ・ブライネの契約のニュースは、シティが世界的なパンデミックの影響で、2019-20シーズンに1億2600万ポンドの損失を発表していた。シティは、前シーズンに比べて試合日の収入が1,350万ポンド、UEFA放送収入が1,800万ポンド、プレミアリーグの収入が4,400万ポンド減少し、その他の事業からの収入は2,000万ポンド増えたものの、コストも8,100万ポンド増加していた。

年次報告書によると、シティは選手へのボーナスを支払っていないにもかかわらず、賃金総額が前シーズンに比べて11.4%増加したことも明らかになっている。

このような環境下の中で、シティがデ・ブライネに提示した最初のオファーは年俸ダウンを告げるものだった。

29歳のデ・ブライネは、8,300万ポンドの契約に合意。それまでの契約でデ・ブライネの週給は35万ポンド(約5280万円)だったが、今回の契約延長で週給40万ポンド(約6040万円)、年俸にして2080万ポンド(約31億円)までアップした。だが、彼は代理人を通さず、ブリュッセルの法律事務所Atfieldと、ヒップホップの大物Jay-Zが設立したマネジメント会社Roc Nationからアドバイスを受けて、交渉を行った。

驚くべきは、デ・ブライネは、データアナリストのチームと協力して、マンチェスター・シティでの彼の現在の影響力と将来の価値を評価したことだ。

デ・ブライネは、Atfieldを通じて、スポーツデータ分析企業アナリティクスFCに、彼の過去、現在、そして将来のパフォーマンスとチームにとっての重要性を分析したレポートの作成を依頼し、また、世界トップレベルの攻撃的MFの給与と比較して、彼の給与をベンチマークした。同社が作成した報告書によって、彼の給料がパフォーマンスに対して大幅に不足していることが明快になったとされている。

アナリティクスFCは、元ウェストハムのスカウト兼ブレントフォードBチーム・コーチのジェレミー・スティールが2015年に設立したサッカーデータ分析会社だ。同社はプレミアリーグ、セリエA、ベルギーリーグをはじめ、さまざまな国や地域のクラブと提携している。同社は選手の「貢献度」を計算するアルゴリズムを搭載した採用ソフトウェア「トランスファーラボ (TransferLab)」を開発した(詳しくは下の動画)。

このソフトウェアは、予想ゴール数や予想アシスト数などの様々な指標を用いて、選手がチームの得点や失点の可能性に与えた影響を算出する。そして、この貢献度は、異なるリーグの同じ年齢カテゴリーやポジションの選手と比較して、ベンチマーキングすることができる。

TransferLabを使った選手のバックグラウンド分析には「サッカー以外のデータ」も含まれている。例えば、あるクラブはあるストライカーが2度にわたってチームメイトを故意に負傷させたことを調べた。あるクラブはこの選手との契約に興味を持っていたが、このデータに基づいて彼の購入を見送ったとTransferLabは説明している。

アナリティクスFCのような企業と協力することで、デ・ブライネは、マンチェスター・シティに対する自分の貢献度を定量化して伝えることができた。データは30%の昇給交渉に役立っただけでなく、彼にとってマンチェスター・シティがキャリアを継続するのに最適なクラブであることを確信させた。

選手の代理としてクラブと交渉するエージェントがデータを扱うことは珍しくなくなっている。珍しいのは、選手自身がクラブとの契約再交渉の際に、自分の価値を証明するために第三者に依頼することであり、特にデ・ブライネのような優秀な選手がそれを使ったことだ。

デ・ブライネと仕事をする機会を得た経緯について、アナリティクスFCのCEO兼共同設立者のジェレミー・スティールは、スポーツメディアThe Athleticに対して次のように語っている。「デ・ブライネと彼のチームは、データ業界の企業や、彼らが調べたいと思っている具体的な質問について、非常によく知っていた」。

報告書では、欧州の他のトップタレントとの比較も行われている。デ・ブライネの活躍ぶりは、アナリティクスFCが独自に開発した「攻撃貢献度」という指標では、過去12カ月間で欧州最高レベルとなっている。この指標は、ある試合で選手がタッチするたびに生じるプラスまたはマイナスの影響を評価するものだ。また、元マンチェスター・シティのジャドン・サンチョが2位にランクインしており、若いウインガーの能力の高さを示している。

デ・ブライネは、他の選手の賃金と比較すると、欧州のトップアタッカーたちと比べて低賃金であることがわかる。これらの選手は、他のベルギー人選手よりも多くの収入を得ているが、アナリティクスFCの指標によれば、貢献度ははるかに低いものだったという。

レポートでは、デ・ブライネが近い将来に退団する場合、シティには両面の影響があると指摘している。1つ目は、シティ自身への影響で、チャンピオンズリーグ(CL)優勝の確率が大きく下がることになる。2つ目は、デ・ブライネが欧州のライバルチームと契約した場合に、そのライバルチームの優勝確率がプラスになることだ。この2つの効果を合わせて考えると、CLのトロフィーを獲得するシティの能力に大きな影響を与えると考えられた。

移籍先をデータ分析で探したメンフィス・デパイ

プロスポーツ選手が契約交渉にアナリティクスを活用したのは、デ・ブライネが初めてとされているが、キャリアの決定要因としてデータを活用したのは彼が初めてではない。

2016年末、マンチェスター・ユナイテッドのFWメンフィス・デパイは、別のデータ分析会社サイスポーツのサービスを利用して、低迷するキャリアを復活させるために最も適した5つのクラブを特定した。2017年1月に加入したリヨンでは、1試合に1ゴール(90分の0.52)、3試合に1アシスト(90分の0.33)を記録しており、誰が見ても、この移籍は同選手にとって非常にうまくいっている。

現在はバルセロナに所属しているメンフィス・デパイ. Image via FC Barcelona.

サイスポーツは「サイスポーツのアルゴリズムに基づき、彼のキャリアの次のステップに適した5つのクラブを取り上げた」という「移籍成功レポート」を作成したことを明らかにした。レポートには、クラブや監督のプレースタイル、彼が好むポジションでの競争、その他メンフィスの個人的な希望に基づくキーポイントなど、いくつかの要素についての綿密な分析が含まれていたという。

「サイスポーツの代表団は、彼の好みを知るために、彼の自宅を訪問しました。その中で、メンフィスは、彼の重要な資質の一つである創造性を最大限に発揮できるよう、攻撃時の自由度を高めたいと考えていた」と同社は主張している。

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