エネルギーシフトの加速:太陽光への投資が石油を上回る
今年、太陽光発電への投資が石油を超えると、国際機関が予測している。化石燃料に代わるクリーンエネルギーの導入が予想以上の速さで進んでいる。
今年、太陽光発電への投資が石油を超えると、国際機関が予測している。化石燃料に代わるクリーンエネルギーの導入が予想以上の速さで進んでいる。
国際エネルギー機関(IEA)の最近の報告書は、化石燃料に1兆ドルに対し、クリーンテクノロジーに1.7兆ドルが投じられると予測している。5年前、年間20億ドルのエネルギー投資は、化石燃料と、再生可能エネルギー、EV、低排出ガスなどのクリーンテクノロジーとで均等に分けられていた。
報告書は太陽光発電(PV)への投資が、今年初めて石油生産への支出を上回ると予想。2023年のPVへの総投資額は3,820億ドルに達すると予測され、石油生産に投じられる予定の3,710億ドルを上回る。2013年には、石油生産に6,360億ドル、PVに1,270億ドルが費やされていた。
PVの確実性が好まれているようだ。他のクリーンエネルギー技術のプロジェクトは信頼性に欠けるものもある。「風力発電への投資は、政策状況の変化に応じて、主要な市場において毎年変化している。原子力発電への投資は増加しているが、電力市場の柔軟性をもたらす水力発電は減少傾向にある」と報告書は指摘する。
導入量の急増
リサーチ会社BloombergNEFによると、世界のPV市場は急成長しており、最終的な今年の導入量は前年比3割増の344GWに達すると予想されている。
リサーチ会社TrendForceの2月時点の報告は、モジュール価格の低下と、2021年と2022年の遅延プロジェクトが現在進捗しているため、今年のPV需要は53.4%以上成長する可能性があると主張していた。同社は、今年の導入量の順位は、中国で148.9GW、次いで米国40.5GW、インド17.2GW、ブラジル14.2GW、ドイツ11.8GW、スペイン11.4GW、日本8GWの順となる見込みと予想した。
中国は依然としてPV導入のフロントランナーである。米国立再生可能エネルギー研究所(NREL)は新しい報告書の中で、中国では2022年には導入量が前年比57%増となり、世界需要の42%を占めた。
今年は更にこの傾向が加速している。中国・国家能源局の発表によると、中国で1月から4月末までの間に設置されたPV導入容量は、2022年の同時期の約3倍。ポリシリコンメーカーTongweiの会長であるLiu Hanyuanは先月、中国での導入量は来年200~300GWまで急増する可能性があると述べた。中国では、PVのサプライチェーンにおけるコスト低下と電力消費量の増加が、クリーン電源の需要を促進している。
米国でも、PVを採用する需要が強い。調査会社のAurora Solarは最近の業界調査の中で、PV専門家の45%がインフレ抑制法(IRA)の結果、需要が増加したと報告し、さらに40%が近いうちに需要が増加すると予想し、70%がビジネス規模が拡大したと指摘。住宅所有者の77%近くが太陽光発電を導入しているか、購入に関心を持っているという。
米国では、住宅用および商業用のPV設備に対して、連邦税制上の優遇措置が存在する。最も大きな優遇措置は、PVの投資税額控除(ITC)で、住宅や商業施設でのPVプロジェクトに対して、設置費用の30%を控除することができる。また、多くの州で州レベルの税額控除が利用できる。特にニューヨークは、商業用PV設備に対して最大5,000ドルの州税額控除を実施しており、PVの開発者にとって魅力的だ。今後IRAの詳細が決まり次第、PV導入は更に魅力的な選択肢になる可能性がある。
供給過多のおそれも
一方、供給サイドでは過熱が起きているかもしれない。世界最大級の太陽電池企業LONGiのボスであるLi Zhenguoは、現在の積極的な生産能力拡大が続けば、倒産が相次ぐ可能性があると、この分野の最大手企業が主張した。
BloombergNEFのアナリスト、ジェニー・チェイスは、今年中にパネルに使用されるポリシリコンの生産だけでも600GW分の生産能力に達すると述べた。「価格の暴落、痛手、そして業界全体の倒産もあるだろう」