ウェイモが米ロボタクシー市場をリードか?
米国のロボタクシー市場をリードしているのは、ウェイモのようだ。ライバルのクルーズは事故が多発しており、品質の差が露見しているだろう。だが、事故は、懐疑派の反発を引き起こしており、社会実装の黎明期は続いている。
米国のロボタクシー市場をリードしているのは、ウェイモのようだ。ライバルのクルーズは事故が多発しており、品質の差が露見しているだろう。だが、事故は、懐疑派の反発を引き起こしており、社会実装の黎明期は続いている。
アルファベット傘下の自律走行ソフトウェア企業Waymo(ウェイモ)は、10月10日、サンフランシスコでの完全無人タクシー(ロボタクシー)のサービスエリアを拡大し、ウェイモの乗客は市内の大半でサービスを利用できるようになったと発表した。同社はこれまで、市の北東部の多くの地区での利用を月数千人に制限していた。月曜日の時点で、この数字は数万人の乗客に拡大している、とこの件に詳しい人物は米テクノロジーメディアTechCrunchに語った。
8月、ウェイモとゼネラルモーターズ(GM)傘下のCruise(クルーズ)は、カリフォルニア州の規制当局から24時間365日の商用サービスの運営承認を獲得した。同社の自律走行車が時折緊急車両の妨げになり、交通渋滞を引き起こすという批判と戦ってきた自律走行業界にとっては、この投票は大きな勝利だった。
TechChrunchの報道によると、承認後、ロボタクシーを予約し、支払うための「Waymo One」アプリのダウンロード数は67%増加し、5日間で15,400回ダウンロードされた。同様に、「Cruise」アプリも77%増加し、同じ期間に8,300回ダウンロードされた。8月17日までに、Waymo Oneアプリは約51万3,000回、Cruiseアプリは14万6,000回ダウンロードされていたという。
米EV専門メディアElectrekのJameson Dowは、ロサンゼルスの非常に混雑する繁華街ベニスビーチウェイモを試した経験について詳細なルポを残した。様々な自律走行車を試したDowにとって、これまで体験した中で最も自律走行に優れていたことが強調されている。
Dowによると、ウェイモの車両は一瞬「ためらい」を見せたり、時折「優柔不断になる」ことはあったが、明らかに危険だと感じることはなかったようだ。多くの場合、ウェイモの車両は歩行者に対し、「一般的な人間のドライバーよりも大きな警戒心」を示したという。
Dowは、この車両が自動車以外の道路利用者を優先していることを高く評価した。「このシステムは完璧ではないし、特に南カリフォルニアのような地域では個人の自動車所有に取って代わることはないかもしれないが、公共交通インフラが整備された都市では可能性がある」と書いた。Dowの体験はこのYou Tube動画で視聴することができる。
EV化の方向性も示されている。ウェイモと中国の自動車メーカー、吉利汽車の協力関係は進展を見せたようだ。吉利汽車の電気自動車(EV)ブランド、Zeekrは「ウェイモとの協業プロジェクト」のため、米国におけるZeekrの車両とスペアパーツの流通網の開発に取り組む、物流マネージャーを募集している(*1)。 Zeekrの広報担当者は、ロボタクシー・プロジェクトが順調に進んでおり、米国でテストする車両が年末までにウェイモと共有されると認めた。
クルーズはここ数カ月で複数の事故を起こし、ウェイモとの品質の差が出ているようにも見える。
最近、サンフランシスコで、ある女性が人間のひき逃げ犯にはねられ重傷を負い、クルーズの車両が彼女の上で停止するという起こり得ないような出来事が起きている。最初の衝突で歩行者はクルーズの自律走行車の進路に飛び込み、クルーズは強くブレーキをかけたにもかかわらず、女性を轢き、車両の下に閉じ込めたという。
クルーズは、8月17日には非常灯を点灯していたサンフランシスコの消防車との衝突事故を起こした。この事故を受け、カリフォルニア陸運局はクルーズに対し、日中は50台以下、夜間は150台以下に車両を削減するよう要請した。緊急車両を扱う州機関にも懐疑派を増やす結果となり、ウェイモにとっても痛手となった。
このような事故は、どうしても不安を煽りかねない。ウェイモとクルーズは、労働組合、サンフランシスコ市の公共交通機関、そして市の弁護士デビッド・チウの抵抗に直面している。チウ弁護士は、拡大された運賃認可の一時停止を申し立てており、自動運転車に投資する企業にとっては大きな後退となる可能性がある。
オピニオン・ライターであり、調査ジャーナリストでもあるJulia Angwinはニューヨーク・タイムズへの寄稿で、自律走行車を操作するソフトウェアに対する政府の監督が不十分だ、と主張した。「自律走行車企業は、自社のソフトウェアが人間のドライバーを凌駕していると主張しているが、それを検証するデータは不十分である」。
マッキンゼーの資料
市場は黎明期にあり、「産みの苦しみ」の最中にあるのかもしれない。マッキンゼー・アンド・カンパニーの分析によれば、先進運転支援システム(ADAS)と自律走行は、2035年までに乗用車市場で3,000億ドルから4,000億ドルの収益を生み出す可能性がある。より広範な社会的影響としては、安全性の向上、高齢者のモビリティ強化、保険モデルの転換の可能性などが挙げられる。マッキンゼーはさらに、自律走行を搭載した乗用車の成長について、2030年までに販売される新車のわずか4%に高度な機能が搭載されるといった遅延シナリオ、2030年までに20%、2035年までに57%が採用されるといった加速シナリオまで、3つのシナリオの可能性を示した。
脚注
*1:LinkedInに掲載された求人情報によると、中国の自動車大手Geelyが立ち上げた若い電気自動車ブランドZeekrは、米国でロジスティクス・マネージャーを募集している。