先端半導体のトレンドは少しも衰えていない
出典:台湾積体電路製造(TSMC)

先端半導体のトレンドは少しも衰えていない

半導体業界は近年享受してきたブームの調整を強いられるとの見方が強いが、5G、AI、HPC、自律走行車のトレンドは勢いを増しており、先端半導体の需要は少しも衰えていない。

吉田拓史

半導体業界は近年享受してきたブームの調整を強いられるとの見方が強いが、5G、AI、HPC、自律走行車のトレンドは勢いを増しており、先端半導体の需要は少しも衰えていない。

先週、台湾積体電路製造(TSMC)は2022年第2四半期の決算を発表した。同社の収益は過去最高の182億ドル(約2兆4,800億円)を記録し、前年同期比43.5%増となった。4月と5月の収益が前月比でそれぞれ55.5%、65.3%増加したのに対し、6月は18.5%増であったことで、収益の伸びが鈍化している。

同社は、コンシューマ機器向けチップの需要が減速していることを認めている。TSMCのCEOである魏哲家(C.C.Wei)博士は、同社の決算説明会で「スマートフォン、PC、コンシューマーエンド市場セグメントにおけるデバイスの勢いが軟化しているため、サプライチェーンがすでに行動を起こしており、2022年後半を通じて在庫レベルが減少すると観測している」と述べている。

TSMCの決算は常に素晴らしいため看過されているが、この会社はまごうことなき紙幣印刷機である。TSMCは使用した380万枚の12インチシリコンウェハ相当で181億ドルを稼ぎ、そのうちの80億6000万ドル(収益の44.4%、前年同期比67.6%増)を利益としている。驚異的だ。

現金も豊富である。TSMCは本四半期末時点で、ファウンドリの拡張を続けるために74億ドルの資本支出を行った後にも、480億ドル近くの現金を握りしめている。これは少なくとも2つの最新鋭ファブを建設するのに十分な資金と言えるだろう。

PCやスマートフォンの販売が減速し、在庫を消化するのに数四半期かかる見通しの一方、5G、AI、HPCアプリケーションをサポートするように設計されたチップの需要は依然として同社の供給能力を超えている。

魏は「消費者向け最終市場セグメントでは軟化が見られるが、データセンターや自動車関連など他の最終市場セグメントは堅調に推移している」と述べた。「これらの分野をサポートするために、生産能力を再配分することができる。在庫調整が続いているが、お客様の需要は当社の供給能力を上回っている。2022年まで生産能力はタイトな状態が続き、通年の収益成長率は米ドルベースで30%半ばになると予想している」

また、懸案となっている微細化についても見通しがついていることを強調している。TSMCは5ナノメートルと4ナノメートルのノードを立ち上げ、生産しており、3年後くらいには2ナノメートルのノードも視野に入れているとのことだ。

TSMCの3ナノメートルの「N3」プロセスに何らかの問題が発生したという噂があったが、「N3は歩留まりもよく、今年後半の量産に向けて順調に進んでいる」と魏は電話会議で説明した。

「2023年前半から収益貢献が見込まれ、2023年にはHPCとスマートフォンの両方のアプリケーションに牽引され、スムーズに立ち上がるだろう…N3Eは、スマートフォンとHPCアプリケーションの両方に対応する完全なプラットフォームを提供する。N3Eでは、お客様から高い評価をいただいており、N3から約1年後に量産を開始する予定だ。当社の3ナノメートル技術は、導入されれば、PPA(Power、Performance、Area:消費電力、性能、チップ面積)とトランジスタ技術の両方で最先端の半導体技術となる」

ASMLの受注残が4.6兆円に到達

リソグラフィツールの世界最大のメーカーである ASMLの決算もまた先端半導体の需要が旺盛であることを示唆するものだった。

ASMLは先週、2022年第2四半期の収益を54億3100万ユーロ(約7,500億円)とし、前年同期比53%増を記録した。第2四半期に、同社は合計91台(2021年第2四半期の59台から増加)の新しいリソグラフィ装置を供給し、そのうちの12台がEUV(極端紫外線リソグラフィ)装置(2021年第2四半期の3台から増加)であったという。

ASMLは、世界的なコンピューター・チップ不足の中、世界中の技術グループがその入手に努める中、同社の半導体製造装置に対して記録的な純受注を計上した。ASMLの新規システムの純予約が四半期中に84億6,100万ユーロ(約1兆1,800億円)となり、同社の予約は四半期収益を上回っている。同社のビジネスには予約、納品、稼働、収益認識という長いリードタイムが存在するのだ。

ますます多くのファブがASMLの前で長蛇の列をなしている。受注残は現在330億ユーロ(約4.6兆円)に上る。深紫外(DUV)露光装置の受注残は現在約600台で、新しいDUV露光装置を顧客が手にするまでの「待ち時間」は現在約2年である。EUV装置の受注残は100台を優に超えている。

会社側は2022年10-12月期からの業績減速を想定している。ピーター・ヴェニンクCEOは、決算発表会で、ASMLはインフレ、サプライチェーンの制約、不況懸念など、他の多くの企業と同じ課題に直面しているものの、大量の受注残を抱え、今後数年間は強い需要があると予測している、と明らかにした。