金属不足は再エネ普及のボトルネックになるか?

世界で再生可能エネルギーが急速に普及している。しかし、再エネ発電設備の材料となる様々な金属の不足が、普及のボトルネックになるという懸念がある。

金属不足は再エネ普及のボトルネックになるか?
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世界で再生可能エネルギーが急速に普及している。しかし、再エネ発電設備の材料となる様々な金属の不足が、普及のボトルネックになるという懸念がある。


2023年上半期のドイツの電力消費量に占める再生可能エネの割合は52.3%で過半に達した、と再生エネルギーを研究するNPOであるBDEW and the Centre for Solar Energy and Hydrogen Research(ZSW)はデータを公表した。原子力、石炭、天然ガス、石油を含む従来型エネルギー の消費量は、160テラワット時(TWh)から128.4 TWhまで減った。

気候変動対策とウクライナ戦争によるガスパイプラインの途絶によって、同国の電力政策の主軸が再エネへと大きく振れたことを示している。

ただ、再エネへの転換には、以前から重大なボトルネックが指摘されている。資源だ。マッキンゼーは先週、クリーンエネルギー転換の鍵とされる金属が今後数年で不足し、EVや風力タービン、ソーラーパネルの普及を抑制する可能性があると警告した。同社の最新の報告書は、EVの動力源であるリチウムイオン電池に必要なニッケルは、2030年までに約10%から20%の不足に直面すると予想し、モーターによく使われる希土類元素であるジスプロシウムは、70%もの不足に見舞われる可能性があると述べている。銅、リチウム、コバルト、イリジウム、錫の供給も不足する可能性があるようだ。

シニア・パートナー、ミシェル・ヴァン・ホーイはこう付け加えている。「過去の成長率を上回る原料の採掘が必要になると同時に、2030年以降の供給をさらに拡大するために探査を倍増させる必要がある。これは、需要を満たすために年間約3,000億ドルから4,000億ドルの投資増が必要なことを示している」

最近のいくつかの分析は、鉱物・金属需要の大幅な増加を示唆している。2020年には、世界銀行がクリーン・エネルギー需要の増大が鉱業に与える影響に関する報告書を発表し、さらに最近の国際エネルギー機関(IEA)の調査でも、エネルギー転換における重要素材の役割が強調されている。銅、銀、希土類金属が注目されているが、グラファイトやチタンなどの他の材料もこの文脈で言及されている。

A.T. カーニーの報告書は、ウクライナ戦争の影響を指摘している。侵略の開始以降、ロシアが生産するニッケル、アルミ、銅、亜鉛、鉄のような基礎金属は価格上昇を経験しており、特にロシアが世界生産量の約10%を占めるニッケルに関しては、EVと再エネに対する需要の高まりと、エレクトロニクスと鉄鋼生産における同金属の重要性のせいで、長期的に大幅に上昇する可能性が高い、と説明した。

一方、IRENAは、この懸念は誇張されていると主張している。同機関は、多くの材料において、エネルギー転換に必要な量は総消費量のほんの一部に過ぎないこと、リサイクルにより、一次生産の必要性を減らすことができること、そして、必要な資源は入手可能であり、あとは生産量を増やすだけであることを指摘している。

再エネ材料が先進国に集中する

先進国が、途上国で産出された金属を優先的に利用し、経済的利益の多くを享受する「不均衡」も課題の一つだ。『Nature Communication』に6月に掲載された研究は、再生可能エネルギー発電設備のサプライチェーンにおける貴金属の流れを調査し、金属鉱石総量の不平等が拡大していることを明らかにした。研究者たちは、バリューチェーン分解モデルと組み合わせた多地域産業連関モデル(MRIO)を用いて、世界の主要経済国の再生可能エネルギー発電部門のメタルフットプリント(MF)と付加価値を追跡。

彼らは、2005年から2015年にかけて再生可能エネルギーインフラにおける金属使用量が97%増加したことを発見し、途上国は、大量の金属を供給しているが、得られる経済的利益はわずかである、という構造を観測した、と主張する。

山東大学、復旦大学、広西大学、中国科学院、米メリーランド大学の研究者らは、貿易構造を修正することで、こうしたバリューチェーンに含まれるリスクと消費の不平等を緩和できる可能性を示唆した。彼らは、輸入に大きく依存する先進国経済が、より金属効率の高い供給源に向けて貿易配分を調整できることを提案している。

Tracing metal footprints via global renewable power value chains - Nature Communications
In this study, the authors report that, developed economies allocate metal-intensive-low value-added production activities to developing economies in global renewable power value chains. It necessitates building metal-efficient and green supply chains for just transition of power sector.

参考文献

Fu, R., Peng, K., Wang, P. et al. Tracing metal footprints via global renewable power value chains. Nat Commun 14, 3703 (2023). https://doi.org/10.1038/s41467-023-39356-x

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新たなスエズ危機に直面する米海軍[英エコノミスト]

新たなスエズ危機に直面する米海軍[英エコノミスト]

世界が繁栄するためには、船が港に到着しなければならない。マラッカ海峡やパナマ運河のような狭い航路を通過するとき、船舶は最も脆弱になる。そのため、スエズ運河への唯一の南側航路である紅海で最近急増している船舶への攻撃は、世界貿易にとって重大な脅威となっている。イランに支援されたイエメンの過激派フーシ派は、表向きはパレスチナ人を支援するために、35カ国以上につながる船舶に向けて100機以上の無人機やミサイルを発射した。彼らのキャンペーンは、黒海から南シナ海まですでに危険にさらされている航行の自由の原則に対する冒涜である。アメリカとその同盟国は、中東での紛争をエスカレートさせることなく、この問題にしっかりと対処しなければならない。 世界のコンテナ輸送量の20%、海上貿易の10%、海上ガスと石油の8~10%が紅海とスエズルートを通過している。数週間の騒乱の後、世界の5大コンテナ船会社のうち4社が紅海とスエズ航路の航海を停止し、BPは石油の出荷を一時停止した。十分な供給があるため、エネルギー価格への影響は軽微である。しかし、コンテナ会社の株価は、投資家が輸送能力の縮小を予想している

By エコノミスト(英国)
新型ジェットエンジンが超音速飛行を復活させる可能性[英エコノミスト]

新型ジェットエンジンが超音速飛行を復活させる可能性[英エコノミスト]

1960年代以来、世界中のエンジニアが回転デトネーションエンジン(RDE)と呼ばれる新しいタイプのジェット機を研究してきたが、実験段階を超えることはなかった。世界最大のジェットエンジン製造会社のひとつであるジー・エアロスペースは最近、実用版を開発中であると発表した。今年初め、米国の国防高等研究計画局は、同じく大手航空宇宙グループであるRTX傘下のレイセオンに対し、ガンビットと呼ばれるRDEを開発するために2900万ドルの契約を結んだ。 両エンジンはミサイルの推進に使用され、ロケットや既存のジェットエンジンなど、現在の推進システムの航続距離や速度の限界を克服する。しかし、もし両社が実用化に成功すれば、超音速飛行を復活させる可能性も含め、RDEは航空分野でより幅広い役割を果たすことになるかもしれない。 中央フロリダ大学の先端航空宇宙エンジンの専門家であるカリーム・アーメッドは、RDEとは「火を制御された爆発に置き換える」ものだと説明する。専門用語で言えば、ジェットエンジンは酸素と燃料の燃焼に依存しており、これは科学者が消炎と呼ぶ亜音速の反応だからだ。それに比べてデトネーシ

By エコノミスト(英国)
ビッグテックと地政学がインターネットを作り変える[英エコノミスト]

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今月初め、イギリス、エストニア、フィンランドの海軍がバルト海で合同演習を行った際、その目的は戦闘技術を磨くことではなかった。その代わり、海底のガスやデータのパイプラインを妨害行為から守るための訓練が行われた。今回の訓練は、10月に同海域の海底ケーブルが破損した事件を受けたものだ。フィンランド大統領のサウリ・ニーニストは、このいたずらの原因とされた中国船が海底にいかりを引きずった事故について、「意図的なのか、それとも極めて稚拙な技術の結果なのか」と疑問を呈した。 海底ケーブルはかつて、インターネットの退屈な配管と見なされていた。現在、アマゾン、グーグル、メタ、マイクロソフトといったデータ経済の巨人たちは、中国と米国の緊張が世界のデジタルインフラを分断する危険性をはらんでいるにもかかわらず、データの流れをよりコントロールすることを主張している。その結果、海底ケーブルは貴重な経済的・戦略的資産へと変貌を遂げようとしている。 海底データパイプは、大陸間インターネットトラフィックのほぼ99%を運んでいる。調査会社TeleGeographyによると、現在550本の海底ケーブルが活動

By エコノミスト(英国)