統一教会が米国にスシを「布教」した際の驚異的な事業開発力
統一教会の文鮮明はアメリカ人に「スシ」を布教した第一人者のようだ。統一教会は日本を重要な資金源とするだけなく、日本の文化を海外に持ち込んで儲けることにも成功していた。その成功請負人は日本人信者である。
統一教会の文鮮明はアメリカ人に「スシ」を布教した第一人者のようだ。統一教会は日本を重要な資金源とするだけなく、日本の文化を海外に持ち込んで儲けることにも成功していた。その成功請負人は日本人信者である。
統一教会が米国のスシに強い影響力を持っていることは、シカゴ・トリビューン紙(2006年4月11日付)に掲載された、文鮮明の寿司王国についての調査報道によって明らかにされた。
1970年代、文鮮明牧師は教会の資金調達のため、精巧な漁業事業の立ち上げに着手した。現在では、漁船の建造から漁獲、加工、配送に至るまで、すべてを行う世界的な企業となっている。非営利団体である統一教会は、事業についてはUCIと呼ばれる別の非営利企業によって管理している。このUCIの傘下にある「トゥルー・ワールド・フーズ(True World Foods)」 は、国内のほとんどの寿司レストラン、全部で9,000軒のレストランに商品を供給していたという。
シカゴ・トリビューン紙が調査したシカゴの有名な寿司レストラン17軒のうち14軒がトゥルーワールド社から仕入れをしていると答えたほど、トゥルーワールドは支配的な企業だった。
1980年の講演「マグロの道」で、文は「私は船を作ることから始めて、すべてのシステムを完成させた」と語ったという。「船を作った後、魚を獲って、加工して市場に出し、さらに流通網を持つ。これは絵に描いた餅ではなく、すでに実行している」
2001年6月、アラスカ州コディアックにあるトゥルーワールド・フーズの水産加工会社は、30万ポンドの漁獲制限を超えるスケトウダラを引き受けたとして、罪に問われ有罪を認めた。検察当局との司法取引により、同社は15万ドルの罰金と5年間の保護観察処分を受けた。
さらに彼は、教会の集団結婚式が、日本人会員をアメリカ国民にすることで、このビジネスプランの一翼を担うことができるとさえ示唆した。そうすれば、外国人に適用される漁業制限を避けることができる。
「数年前、アメリカ政府は外国船による沖合での漁業に200マイルの制限を設けた」と文は1980年の「マグロの道」の説教の中で述べている。しかし、日本人会員をアメリカ人と結婚させることによって、「我々は外国人ではないので、日本の兄弟、特にアメリカ人と結婚させた兄弟は、漁業と流通のリーダーになっている」と、水産業について述べている。
ニューヨーク・タイムズ・マガジンの“The
Untold Story of Sushi in America”(最近、東洋経済が翻訳)によると、ヤシロ・タケシという日本人が文の野望の成就に大きな役割を果たしたという。八代さんは、英国国教会の牧師の息子としてアメリカに渡り、サンフランシスコで学生時代に教会に入った。1982年7月1日、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで行われた合同結婚式で、2,000組以上のカップルと一緒に祝福された。
彼は川上から川下までの面倒を見る名経営者だったようだ。シカゴトリビューンの調査によると、全米に漁師集団の拠点を立ち上げ、卸売業のトゥルー・ワールド・フーズだけでなく、寿司屋まで経営した。八代と教会員がシカゴのノースウエストに設立した「レインボー・フィッシュ・ハウス」は、シカゴのみならず全米で圧倒的なシェアを誇る寿司屋になったという。ヤシロが立ち上げたトゥルー・ワールド・フーズは世界中からマグロを大量に買い付け、最高級のマグロの調達と値付けに専従しているとされた。
トゥルーワールドの強みは、営業担当者が中国語、韓国語、日本語を話せることで、移民一世のレストランオーナーでも簡単に取引できることだという。
事業の立ち上げ資金の一部は、統一教会から提供された。シカゴ・トリビューンが調査した1978年の議会報告書によると、1976年10月から1977年5月までの7カ月間に、漁業ビジネスを立ち上げるために使われた100万ドル近い小切手の一部に文氏がサインをしたという。
経営難に陥っていたボート製造会社マスター・マリンを買収した後、文とその信奉者たちは、ネットワークの次のつながりを確立することに目を向けた。漁業を天職とする教会員たちは、マスター・マリンのボートを使って海に出て行った。文のオーシャンチャーチは、毎年夏になると会員や改宗希望者を集め、文が購入した80隻のボートで40日間のマグロ釣り大会を開催した。
この大会の多くは、マサチューセッツ州グロスターの海岸で行われた。偶然にも、この海岸は教会に関連した水産加工工場が最初に建設された場所の一つである。文は「グロスターは今やほとんど統一教会の町だ!」と演説で誇らしげに語ったそうだ。
「統一教会とその信奉者たちは、時には密かに主要な漁村の大部分を購入し、どの場合も最初は、長年住んでいる住民たちの怒りと疑念を引き起こした」とシカゴ・トリビューン紙は書いている。
アラバマ州にエビ漁の拠点を建設した際には、地元住民の反発を受けたが、統一教会の巨額の資金を注ぎ込んだためか、沈静化したようだ。「連邦政府の資料によると、アラバマ州のエビビジネスはメキシコ湾で最大級であり、近くの造船工場は300隻以上のボートを建造した」
そして、水産業も盛んになった。同社関係者によると、卸売販売部門であるトゥルー・ワールド・フーズの2005年の売上は2億5千万ドルであった。同社によれば、230台の冷蔵トラックで全国7000軒の寿司屋や高級レストランに生魚を配達しているという。これらのトラックは、全国に22カ所ある流通施設の1つであるエルク・グローブ・ビレッジの倉庫から毎日数十台が出発する。
トゥルー・ワールド・フーズのアラスカ工場では、毎年2,000万ポンド以上のサーモン、タラ、スケトウダラを加工していると同社は言う。グロスターにある同社のロブスター事業部では、東海岸で最大級の25,000平方フィートの冷蔵施設から、モンクフィッシュとロブスターを世界中に出荷していたという。