OpenAI内紛の新事実:株式を現金化したい従業員、アルトマンへの不信感…

OpenAIの内紛における従業員の熱狂的なサム・アルトマン支持は、投資家による株式買い取りのもたらす臨時収入に起因していたようだ。対立は「AIをめぐる思想の違い」と説明されたが、数ヶ月間続いたアルトマンへの不信が背景にあったという新事実が明らかになっている。

OpenAI内紛の新事実:株式を現金化したい従業員、アルトマンへの不信感…
Photographer: David Paul Morris/Bloomberg

OpenAIの内紛における従業員の熱狂的なサム・アルトマン支持は、投資家による株式買い取りのもたらす臨時収入に起因していたようだ。対立は「AIをめぐる思想の違い」と説明されたが、数ヶ月間続いたアルトマンへの不信が背景にあったという新事実が明らかになっている。


アルトマンの退社は、従業員が株式をOpenAIに売却し、会社の株式公開を待たずに株式を現金化することを可能にする投資取引を危うくした、と米メディアThe Informationが報じた。スライブ・キャピタルが主導するこの取引では、4月時点の評価額280億ドルの3倍以上となる900億ドル近い価格がOpenAIに付けられた。アルトマンの解雇によってこの取引は停止され、彼の復帰が確定すると、この取引は復活した。

これが従業員であるAI研究者とソフトウェアエンジニアの95%が、アルトマンの復帰を支持し、そうならなければマイクロソフトに移籍する、と取締役会を脅かしたことの主要なモチベーションだった、と米メディアのビジネスインサイダーは複数の関係者の談話を引用して報じた。従業員は実際にマイクロソフトに行くつもりはなく、ブラフだったという。

この運きを主導した上級職の一部は、経済的な問題を抱えていたとされる。匿名アプリ「Blind」では、OpenAIの現従業員であることが判明(投稿にはメンバーの勤務先メールアドレスが必要)している人々が、集団辞表に署名するよう強い同調圧力に直面したと書いている。同調圧力は、株式報酬を現金化したいという集団的欲求の発露だったのだろうか。

アルトマンへの不信

取締役会の動きは、アルトマンのCEOとしての取り組みと、彼とのコミュニケーションにおける透明性の不足についての議論を反映したものであり、数か月にわたる検討の結果だった。

ワシントン・ポストのNitasha Tikuの報告によれば、OpenAIの上級幹部は、CEOのSam Altmanが従業員同士を対立させ、混乱と遅延を引き起こし、心理的な虐待を行っていたと懸念した。アルトマンの解雇は、当初はAIの安全な開発に関する衝突と見られていたが、最終的にはCEOの行動が取締役会の監督を困難にするという感覚によって部分的に動機づけられたものだった。

ブルームバーグのRachel Metzが引用した関係者によると、取締役会のメンバーは秋の初めから、アルトマンを解任するかどうか話し合い始めていたという。

取締役会のメンバーは、アルトマンとの長年にわたるやりとりから生じた不満を考慮し、CEOの責任を監視する取締役会の能力について議論していた。アルトマンはOpenAIに批判的な論文を発表した取締役の一人、ヘレン・トナー(ジョージタウン大学の安全保障・新技術センター(CSET)ディレクター)を解任しようと策謀をはかり、他の取締役と個別に話した際に「他の取締役もトナーを解任従っている」と嘘をついた、とその関係者は言ったようだ。取締役会は、アルトマンを解雇した最初の声明で、彼が取締役との話し合いで「一貫して率直」でなかったと述べていた。

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の報告によると、この時点で、OpenAIの当時のディレクターの何人かは、すでにアルトマンの誠実さに懸念を抱いていたと、彼らの考え方に詳しい関係者は述べている。それに加えて、アルトマンに対する信頼を徐々に削ぐような一連の行動があり、感謝祭前の金曜日に予期せぬ解雇に至ったと、その関係者は語った。この問題に詳しい関係者によると、アルトマンは復職する前に、論文をめぐるトナーへの振る舞いについて謝罪を申し出たという。結局、彼はその申し出を実行することなく、会社のトップに復帰した。

また、アルトマンの意見に批判的な意見を述べた従業員に対して、報復を行ったという従業員の報告も検討されていたとされる。

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By 吉田拓史
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