中国スパコン、水面下で世界首位説 デカップリング恐れ秘匿か
中国は水面下で3台の先端スパコンを稼働させており、その性能が世界で首位に立っている可能性があることが反響を呼んでいる。米国の孤立化政策は、中国を頑強にし、技術的な独立を促した可能性がある。
中国は水面下で3台の先端スパコンを稼働させており、その性能が世界で首位に立っている可能性があることが反響を呼んでいる。米国の孤立化政策は、中国にどのような影響を与えているのだろうか。
米国のスーパーコンピューターの第一人者であるジャック・ドンガラ教授(テネシー大学)は、先月、北京で開催されたエクサスケールのハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)に関するワークショップに参加し、米国に帰国後、アリババグループが所有する香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)のインタビューに応じた。
「コンピュータ科学のノーベル賞」と言われるチューリング賞受賞者である共同創設者でもあるドンガラは、米国がリードしているというスパコンランキングにおける一般的な認識とは裏腹に、中国が3台目のエクサスケール級スパコンを導入し、トップランナーになっている可能性がある、と指摘した。
ドンガラによれば、中国のエクサスケール級スパコンは、テネシー州のオークリッジ国立研究所にある米国のものと同様の性能を持つと予想され、ピーク性能はそれ以上かもしれないという。中国のスパコンは、ドンガラが共同創設したスパコン性能ランキング「TOP500」に登場していないため、ステルス的な存在だった。
中国は、米国のさらなる制裁を招くことを恐れて、そのスーパーコンピューティングの実力を明らかにすることには慎重だと考えられているが、その進歩を示す証拠はある。例えば、中国のスパコンのうち2台が、高性能計算(HPC)分野の最高栄誉であるゴードン・ベル賞に応募されている。江蘇省無錫市の国立スパコン研究機関が開発した「神威太湖之光(Sunway TaihuLight、英語名OceanLight)と、天津市の研究機関が開発した「Tianhe-3」である。さらに、広東省深圳市の研究機関には、同じく深圳に拠点を置くSugon(中科曙光)製とされる第3のスパコンも存在する。 停止中とされていたこのスパコンも再び稼働したようだ、とドンガラは言及している。
Sugonは、米国のブラックリスト入りによって、AMDのZen設計をベースとした一連の中国製x86プロセッサーである「Hygon CPU」を手に入れられなくなったはずだ。AMDの合弁会社が米国の制裁によって閉鎖されている。Sugon製のマシンにどのプロセッサーが使われているかは不明である。
ドンガラは、SCMPのLing Xinに対し、「中国がこれらのコンピューターを持っていることはよく知られていることで、しばらく前から稼働している。彼らはベンチマークを実行していないが、(コミュニティは)それらのマシンから出る科学を記述するために発表された研究論文に基づいて、そのアーキテクチャと能力の一般的なアイデアを持っている」と言った。
無錫市のチームが提出した論文は、2022年3月に、アリババ・グループ、清華大学、DAMOアカデミー、Zhejiang Lab、北京人工知能研究院が、TaihuLightで3700万以上のコアと14.5兆のパラメータを使って、「BaGuaLu」と呼ばれる事前学習された機械学習モデルを実行したことについて記述されている。
論文の著者によれば、このシステムには、中国の国立並列コンピューター工学技術研究センター(通称NRCPC)が設計したプロセッサーが10万個以上搭載されている。これは、中国の国営半導体製造企業である中芯国際集成電路製造(SMIC)の14ナノメートルの製造プロセスでエッチングされたとされる。
2010年代半ばから続く、一連の「制裁」措置によって、報告される中国のスパコンの数が減り続けるにつれ、同国はTop500のスパコンの総数では1位の座を失ったという。しかし、ドンガラは、中国は依然として最も多くのスパコンを生産している国であり、国産チップと欧米設計のチップを搭載し、中国で組み立てられたスパコンは、米国を含む世界中で販売されている、とSCMPに対して話した。中国の技術的・経済的進歩を抑制するデカップリングの効果には疑問が残る。
参考文献
- Yuhang Fu et al. Towards Exascale Computation for Turbomachinery Flows. arXiv:2308.06605 cs. DC.