暗号資産の巨星墜つ トランプ再選が唯一の血路か
米当局は暗号資産取引所FTXに続き、最大手バイナンスにも鉄槌を下した。「残党」にも厳しい態度で臨んでいる。トランプ再選が、米国に足場を残す唯一の方法だろう。
米国は暗号資産取引所FTXに続き、最大手バイナンスにも鉄槌を下した。「残党」にも厳しい態度で臨んでいる。トランプ再選が、米国に足場を残す唯一の方法だろう。
世界最大の暗号通貨取引所であるバイナンスの最高経営責任者チャンポン・ジャオ(趙長鵬)が退任し、米国のマネーロンダリング(資金洗浄)の罪を認めた。銀行秘密法(BSA)、送金業登録の不備、国際緊急経済権限法(IEEPA)の違反に関する司法省の捜査を解決するため、ジャオは有罪を認め、バイナンスは43億ドルの罰金を支払うことに合意した。ジャオは最高で18ヶ月の禁固刑に処される。
原告は、テロリスト集団とみなす組織との取引を含め、10万件以上の疑わしい取引の報告を怠り、児童性的虐待資料の販売に特化したウェブサイトとの取引も報告しなかった、と訴えていた。米財務省金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)は、バイナンスの過失により、ハマス、ISIS、アルカイダがビットコイン取引を実施した、と明らかにした。
司法省の発表によると、アラブ首長国連邦(UAE)在住のジャオは米連邦政府の規定に従い、最長18ヶ月の刑期を受ける可能性がある。彼は判決が出るまで上訴をしないことに同意した。検察官は、2月23日にシアトルで開かれるジャオの量刑公判に向けて、どの程度の懲役を求めるかを決定する予定だ。
メリック・ガーランド司法長官は火曜の記者会見で、「司法省はこの1カ月で、世界最大の暗号通貨取引所2社のCEOを、2つの別々の刑事事件で起訴することに成功した」と言った。「このメッセージは明確であるべきだ。法律を破るために新しい技術を使うことは、あなたをディスラプターにはしない。あなたは犯罪者になるのだ」
米メディアCNBCが引用したブロックチェーン分析会社Nansenのデータによると、創業者でCEOのジャオが退任し、司法省との取引で火曜日に有罪を認めた後、バイナンスからの流出額はビットコインを除いて過去24時間で10億ドル以上に相当するという。それでも、バイナンスに残っている650億ドル以上の資産に比べれば、流出は少額だとNansenは指摘した。
昨年11月に破産を申請した暗号資産取引所FTXの創設者であるサム・バンクマン・フリードは、詐欺や共謀の罪に問われ、ニューヨーク市の連邦裁判所で有罪評決を言い渡された。陪審員は、バンクマン・フリードはが、FTXの顧客の口座から数十億ドルを不正に取り扱ったと認定した。また、FTXの顧客資金を管理していた関連会社であるヘッジファンドのアラメダ・リサーチが関与する貸し手への詐欺行為も認定した。
これで、二つの巨塔に米規制当局の鉄槌が下されたことになる。
残党狩り
残党に対しても追手が迫っている。
今週、証券取引委員会(SEC)は別の暗号資産取引所であるKraken(クラーケン)を、未登録の証券取引所として運営しているとして提訴した。SECの訴えはまた、同取引所が顧客の資産と自社の保有資産を混同しているとしている。
コインベースは、2021年9月、取引所の個人顧客が取引資金を借りられるようにする「Lend」と呼ばれる商品について、SECから訴えると脅されて以来、薄氷の上を歩いている状態だ。SECは6月にコインベースを無登録の証券取引所、ブローカー、清算機関として暗号資産取引所を運営したとして告発した。
コインベースのCEOであるブライアン・アームストロングはバイナンスの一件の後、「2012年にコインベースを設立して以来、私たちは長期的な視点に立ってきました。時の試練に耐える世代交代企業になるためには、コンプライアンスを受け入れる必要があるとわかっていました」とXに投稿した。
暗号資産産業の生死はドナルド・トランプ前大統領の再選の有無が握っている。共和党大統領候補のビベック・ラマスワミは、暗号通貨業界の大規模な規制緩和とSECの縮小を求めている。彼が大統領候補になる公算は薄いが、数多の刑事事件の被告になりながらも選挙での強さを示すトランプ氏の陣営に参画すれば、業界の状況は一変するだろう。
大統領選次第で復活も
ラマスワミの選挙運動は、暗号資産取引所Geminiの共同設立者であるタイラー・ウィンクルボスとキャメロン・ウィンクルボスの兄弟を含む業界の一部から資金的な支援を受けている。暗号資産ベンチャーキャピタルのParadigmとコインベースの共同設立者であるFred Ehrsam、Bitgoの共同設立者であるMichael Belshe、Blockchain AssociationのCEOであるKristin Smithも彼に寄付を行った。