クレディ・スイスのソフトバンクG提訴は今年後半か

クレディ・スイスはグリーンシル・キャピタルの破綻に関連した損失について、今年後半と目されるソフトバンクグループを相手取った提訴のための準備を着々と進めている。

クレディ・スイスのソフトバンクG提訴は今年後半か
2021年2月5日(金)、ソフトバンクグループの本社が入る東京ポートシティ竹芝ビル。 Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg.

クレディ・スイスはグリーンシル・キャピタルの破綻に関連した損失について、今年後半と目されるソフトバンクグループを相手取った提訴のための準備を着々と進めている。

4月下旬、米国の裁判官はクレディ・スイスが、ソフトバンクGを相手取った提訴を行うため、カテラの子会社から文書を召喚できると判断した。

同行は、米国に拠点を置く建設会社カテラの大株主であるソフトバンクGに対して「英国で予定されている裁判手続き」のためにKaterra Cayman(タックスヘイブンのケイマン諸島登記の法人)からの情報が必要だと裁判所に提出した書類で述べている。アリゾナ州の連邦判事は4月29日にこの要求を認めた。

クレディ・スイスは3月下旬、サンフランシスコの米連邦判事に対し、開示する情報は英国での訴訟の後期にのみ関連するものに限るというソフトバンクGの主張を退けるよう要請していた。

同行は召喚した文書から、会長兼CEOの孫正義を含むソフトバンクの幹部がこの取引について何を知っていたかを明らかにしようとしている。

クレディ・スイスは、2021年に起きたグリーンシル破綻による損失を回収するため、英国で訴訟を起こす準備を進めており、ソフトバンクGに情報開示を求めてきた。

同行は、ソフトバンクGが主要投資家だったカテラの取締役会の情報を求めている。同行は、カテラを含む借り手から、延滞しているローンの支払い27億ドルを取り戻そうとしている。同行はカテラへの融資を裏付けとする約4億4000万ドル相当の債券に投資したと発表している。

ブルームバーグが確認した申請書によると、クレディ・スイスは米国の裁判官に対し、英国の慣行を遵守するために講じた措置を詳述し、2月10日に訴訟の根拠を明記した「letter before action」をソフトバンクGに送付したことを明らかにした。「letter before action」は請求の詳細を記した原告から潜在的な被告に送られる手紙であり、訴訟が近いことを明示するものだ。

この事件は、2020年にソフトバンクGがグリーンシルに緊急資金を注入することに合意し、その資金でカテラの負債を補填する予定だったことが中心となっている。2020年末、グリーンシルはカテラの残債の返済を見送る代わり、その見返りとしてソフトバンクGから直接資本注入を受けた。しかし、フィナンシャル・タイムズ(FT)はその後、この現金がクレディ・スイスのファンドに届くことはなかったと明らかにした。グリーンシルが見送った負債の負担は、もっぱらクレディ・スイスのファンドの他の投資家が負担しなければならなかったことになる。

FTによると、次の審問は5月20日に行われる予定だ。クレディ・スイスは、今年後半に英高等法院 (イングランド・ウェールズ)で手続きを開始するつもりであるとソフトバンクGに通知している。また、FTは「最終的には裁判外の和解が最も可能性が高いが、クレディ・スイスのトーマス・ゴットスタイン最高経営責任者と孫の間には個人的な敵意があるため、それが当然の結論とは言えない」とも書いている。

ソフトバンクGはかつてクレディ・スイスの主要顧客だったが、同行は孫がカテラの取引でゴットスタインを欺いたと主張しており、FTが引用した関係者によれば、ゴッドスタインはこの件に関して深い憤りを抱き続けているという。

ゴッドスタインが憤っているのは、ソフトバンクGがクレディ・スイスとの取引において連続して、同行を欺く行動をとったと彼が考えていることに由来するかもしれない。スイスでは「サイドレター事件」と呼ばれているようだ。スイスの金融メディア finews.com によると、2020年3月、グリーンシルのサプライチェーンファンドはすでに深刻な流動性問題を抱えており、ソフトバンクGはそれを維持するために15億ドルの追加投入に同意した。

しかし、ソフトバンクGはまた、クレディ・スイスがグリーンシルからのみ新たな債権を購入することを約束しなければならない、いわゆる「サイドレター」に署名するようクレディ・スイスに求めたという。

同行は、このサイドレターがすべての債権投資家を平等に扱っていないことが明らかであるにもかかわらず、この取引に同意した。2020年にかけて、明らかに下品な提案であることを知った同行幹部は、速やかにサイドレターを取り消し、内部調査を開始した。

グリーンシルは2021年に破綻したが、ソフトバンクGはこの「サイドレター事件以来」、2020年7月までに、グリーンシルに直接関係する資金をすべて引き揚げたと finews.com が当時独占的に報じていた。

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