インド、半導体産業育成の野心をたぎらせる
要点
インドは自国半導体産業育成の野心をたぎらしている。インドは長年の蓄積のある欧米日韓中台からは遠く遅れた位置にあるものの、国内にエレクトロニクス産業が立ち上がりつつある今、育成は合理的な判断に見える。
インドのナレンドラ・モディ首相は、4月下旬に開催された「Semicon India 2022」でのスピーチで、インドを半導体製造のハブにする可能性を訴えた。
しかし、この目標はすぐさま達成されるものではない。特に、米国、ドイツ、日本といった先進国が、すでにトップクラスのチップメーカーから大規模な投資を集めている現状ではなおさらそうだ。製造業大国である中国が本格的なグローバル・チップメーカーになろうとしているのとは異なり、インドにはチップの強固な国内市場がない。
インド政府によると、インドの半導体市場は2020年に推定150億ドル、2026年には630億ドルに達する可能性があるという。インドでは以前、政府が自国での半導体産業育成を試みたが失敗し、現在では半導体需要のほぼすべてを海外メーカーに頼っている。インドがファブの夢を実現し、国際的な競争力をつけるには、半導体材料や装置のサプライヤーを集めたエコシステムを構築する必要がありますが、それには数十年かかると考えられている。
現在、インドでは5社から205億ドル相当の提案を受けている。その中には、インドの石油・ガス開発大手ヴェダンタとフォックスコン、シンガポールのIGSSベンチャーズ、アブダビのNext Orbit Venturesとイスラエルのタワーセミコンダクターによる合弁会社ISMCが含まれている。
ヴェダンタとフォックスコンは100億ドルを投じて早ければ2025年にも半導体生産を開始する予定だと報じられている。
ISMCのプロジェクトは南西部のカルナタカ州に同国初となるICファウンドリーを建設する計画だ。65ナノメートル(nm)のプロセスに約30億ドルを投資する予定だ。タワーセミコンダクターがこのプロジェクトの技術提供者になる予定だ。
4月下旬にはインドの電子情報技術相であるアシュウィニ・ヴァイシュナウ情報技術大臣が、世界最大手のチップメーカーの一部は、インドでの新工場の立地可能性を評価していると発言した。ヴァイシュナウ大臣はブルームバーグの取材に対し、「インテルにせよ、グローバルファウンドリーズにせよ、インドは彼らのグローバルプランの真っ只中にいる」と述べた。「TSMCはまだ時間がかかるが、他の大手企業は非常に真剣に計画を立てている」
インド政府はオープンソースの命令セットアーキテクチャ(ISA)である「RISC-V」に注目している。インド政府は最近、RISC-V Internationalプレミアメンバーになり、国産プロセッサのRISC-Vロードマップを明らかにした。このDigital India RISC-V (DIR-V) プログラムでは、2023年12月までに商用シリコンの製造とシリコン設計を実現することを目標としている。
電子情報技術およびスキル開発・起業家精神担当のラジーヴ・チャンドラセカール大臣はDIR-Vでは新興企業、学術機関、多国籍企業間のパートナーシップを実現し、インドを世界のRISC-V人材ハブにするだけではなく、サーバー、モバイル機器、自動車、IoT、マイクロコントローラ向けのRISC-V SoC(システムオンチップ)を世界に供給する国にすると言及している。