シンガポールの個人投資家、テスラ一点張りで70億ドルの資産を築く

シンガポール在住の個人投資家レオ・コグアンはテスラへの投資で70億ドル相当の資産を築いた。パンデミックの最中、全財産を一点張りするリスキーな戦略で、テスラ株の急騰の恩恵を享受し尽くした。

シンガポールの個人投資家、テスラ一点張りで70億ドルの資産を築く
Image via @KoguanLeo (Twitter).

要点

シンガポール在住の個人投資家レオ・コグアンはテスラへの投資で70億ドル相当の資産を築いた。パンデミックの最中、全財産を一点張りするリスキーな戦略で、テスラ株の急騰の恩恵を享受し尽くした。


シンガポール在住のレオ・コグアン(Leo Koguan)はこれまで、テスラへの出資比率が1%未満で、米国で公開が義務付けられている5%の基準を下回っているため、規制当局や一般投資家の詮索を避け続けることができた。

しかし、彼は9月頃からTwitterで詳細な情報を自らリークし始め、やがて報道機関の取材を受けるようになった。その間にも彼が保有しているテスラ株式の価値は70億ドル以上にまで高騰した。

コグアンがBloombergに提供した銀行記録と、彼の投資に精通した人々が確認したところによると、彼は9月下旬の時点で631万株のテスラ株を所有していた。また、1株あたり450ドルから550ドルの間でテスラを購入する権利を与えるオプションを182万株保有しており、金曜日のニューヨーク市場で株価が1,114ドルで引けた後、この契約は大きな利益をもたらしている。

2020年3月の狂気

各社の報道をつなぎ合わせると、コグアンが行った取引はこのようなものと推測される。

2019年に株取引を始めた彼は、Baidu、Nio、Nvidiaなど、いくつかの有名企業に資金を投入し、序盤は成功を収めた。しかし、年が明けると、彼の運用は不調になった。

そこでコグアンは、テスラを除いたすべてのポジションを売却した。テスラの投資家であるデイブ・リーが司会を務める最近のポッドキャストで、コグアンは、バロン・キャピタル・マネジメントの億万長者であるロン・バロンとリー自身が、カリフォルニア州を拠点とする電気自動車メーカーに注目するきっかけとなったと語っている。

2020年初頭には230万株(昨年の株式分割を考慮すると約1,200万株)、約15億ドル相当の株式を保有していた。その前の年には、ロサンゼルスにあるSpace Xの本社で、イーロン・マスク本人にも会っている。

彼は「オプションを買い、株価が上がったときの利益の一部で実際の株を買い、残りは別のオプションに回す」というシンプルな戦略に従って買い続けた。つまり、ダブルダウンを何度も何度も繰り返す、「死をいとわない信者」とも言うべき非常にアグレッシブな戦略だった。

2020年3月、株式市場が暴落し、追証が求められたとき、コグアンは、当時保有していたテスラ株1,200万株の大部分を含む株式ポートフォリオの多くを売却せざるを得なかった。

彼はかつて経営していた非上場のSHIの株式32億ドル相当を保有しており、これが窮地を救ったという。

パンデミックの混乱の中、コグアンはBaidu、Nvidia、China Mobile、Nioなどの残りの株式を売却し、その資金でテスラのコールオプションを購入した。リスクの高い行動だったが、それが功を奏した。テスラの株価は、3月1日以降、1,440%以上も上昇した。

コグアンの経歴

コグアンは1955年にインドネシアで中華系の両親のもとに生まれ、その後アメリカに渡り、コロンビア大学で国際関係学を、ニューヨーク・ロースクールで法学を修めた。

1989年、コグアンはニュージャージー州にあるソフトウェア会社の倒産した資産を100万ドル以下で大幅に値引きして購入し、これがSHIの基礎となった。当時、韓国系アメリカ人女性として初めてハーバード・ビジネス・スクールに入学したタイ・リーと一緒に会社を経営した。2002年に離婚したときには、同社は年商10億ドルを超えていたという。

リーは現在も会社を経営しており、数年前にアジアに戻ってきたアメリカ人のコグアンは、現在も会社の大部分の株式を保有し、会長を務めている。

フォーブス誌の試算では、テスラ株と、非上場IT企業であるSHIの株式を合わせて、コグアンの資産は86億ドルとされている。

コグアンは1980年代、何年にもわたって中国のいくつかの大学に寄付を行い、そのうちのいくつかの大学には彼の名前を冠した建物がある。

最近では、4,600万ドルのシンガポールのペントハウスを、バッグレス掃除機の発明者であるジェームズ・ダイソンから購入したことで、彼の名前が知られるようになった。

コグアンは自身が3番目のテスラ株大量保有の個人投資家だと語っている。もしかしたらこの世界には彼以上にテスラの株価急騰で儲けた人がいるのかもしれない。

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