米テック企業は今年7.7万人を解雇した

米テクノロジ企業によるレイオフは7万7,000人に及び、経済見通しの不安やテックセクターへの投資停滞などを理由に、社内の「合理化」が進んでいる。GoogleやMetaのようなリッチな会社も例外ではないようだ。

米テック企業は今年7.7万人を解雇した
Photo by Antonio Janeski

米テクノロジ企業によるレイオフは7万7,000人に及び、経済見通しの不安やテックセクターへの投資停滞などを理由に、社内の「合理化」が進んでいる。GoogleやMetaのようなリッチな会社も例外ではないようだ。


米金融メディアCNBCが入手した音声によると、今週行われた全社会議でGoogle CEOのスンダー・ピチャイは、旅行や娯楽予算の削減、生産性の管理、レイオフの可能性に関連する従業員からの厳しい質問に直面した。

ピチャイは、Googleの社内システムDoryで従業員から高い評価を得た質問で、「Googleには膨大な手元資金がある」にもかかわらず、なぜ予算を削減するのかと聞かれた。これに対してピチャイはマクロ経済状況に言及し、「私は、会社として、このような瞬間を乗り越えるために力を合わせることが重要だと思います」と答えたという。

7月、Googleの親会社Alphabetは2四半期連続で予想を下回る業績を報告し、第3四半期の収益成長率は前年同期の40%超から1桁に落ち込むと予想されている。Googleは、次世代ノートパソコン「Pixelbook」を開発停止し、社内インキュベーター「Area 120」への資金提供を打ち切った。

これは、Googleだけで起きていることではない。 MetaのCEOであるマーク・ザッカーバーグは、6月に行われた会社の全員参加の会議で、より率直にこう言った。「皆さんの中には、ここは自分には合わないと判断する人もいるかもしれないし、その自己選択も私は構わないと思う・・・現実的には、この会社にいてはいけない人たちがたくさんいるだろう」。

Metaは職場経費を10%削減する予定だとウォールストリートジャーナルは最近報じたが、その一部は人員削減によるもので、いくつかのチームを静かに解散させ、従業員に社内で新しい仕事を見つけるための30日間を与え始めている。このような別の仕事を得るための猶予期間を与える方法を新たなレイオフの仕方だと主張する報道もある。

人材市場の流動性の低下が、従業員側の交渉能力を落としているかもしれない。通常、Googleの社員は、自分の仕事に不満があれば、MetaやApoleなど、人材獲得にしのぎを削る近隣のハイテク大企業に簡単に転職できたが、最近では、ほとんどのテクノロジー企業が新規採用を減らしているのだ。

Crunchbase Newsの集計によると、2022年9月中旬の時点で、これまでに米国のハイテク分野で4万2,000人以上が大量解雇されたことが判明した。また、レイオフを追跡するクラウドソースサイト「Layoffs.fyi」によると、580社以上の新興企業が7万7,000人近くを解雇したとも言われる。

Netflixと同じくらいの規模のテック企業が今年に入ってから雇用を削減しており、コロナのパンデミックの影響を挙げる企業もあれば、急成長期の過剰雇用を指摘する企業もある。

テクノロジー企業の雇用が減速し、従業員が解雇されるにつれ、かつて多忙を極めたリクルーターは他の職務にシフトし、料金を引き下げている、とニューヨーク・タイムズのErin Griffithは書いている。

昨年まで、テック業界の人材採用は驚くべき活況を示していた。Griffithが取材したデザインソフトウェア新興企業Canvaの採用担当者によると、昨年LinkedInで、テクノロジー業界のリクルーターの求人情報(36万4,970件)がソフトウェアエンジニア(34万2,586件)よりも多かったという。

一つ勘案しないといけないのは、従業員数の多い製造業のような業界と比べると、ソフトウェア業界の人員数は小さく、7.7万人という数は雇用統計に大きなインパクトを与えるサイズではないことだ。レイオフの対象となった人々のうち多くは、次の職場を探すのに苦労しないだろう。

ウォール街は格好のエンジニア採用の機会と見ているようだ。証券取引所、銀行、マーケットメーカーが最近の市場の落ち込みを乗り越えて拡大を続けており、不況を乗り越えてきた安定性が、テック企業や暗号通貨企業で不安定さを味わったエンジニアに響いている、とインターコンチネンタル取引所の幹部は語っている。

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米国のEV革命は失速?[英エコノミスト]

米国のEV革命は失速?[英エコノミスト]

米国人は自動車が大好きだ。バッテリーで走らない限りは。ピュー・リサーチ・センターが7月に発表した世論調査によると、電気自動車(EV)の購入を検討する米国人は5分の2以下だった。充電網が絶えず拡大し、選べるEVの車種がますます増えているにもかかわらず、このシェアは前年をわずかに下回っている。 この言葉は、相対的な無策に裏打ちされている。2023年第3四半期には、バッテリー電気自動車(BEV)は全自動車販売台数の8%を占めていた。今年これまでに米国で販売されたEV(ハイブリッド車を除く)は100万台に満たず、自動車大国でない欧州の半分強である(図表参照)。中国のドライバーはその4倍近くを購入している。

By エコノミスト(英国)
労働者の黄金時代:雇用はどう変化しているか[英エコノミスト]

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2010年代半ばは労働者にとって最悪の時代だったという点では、ほぼ誰もが同意している。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの人類学者であるデイヴィッド・グレーバーは、「ブルシット・ジョブ(どうでもいい仕事)」という言葉を作り、無目的な仕事が蔓延していると主張した。2007年から2009年にかけての世界金融危機からの回復には時間がかかり、豊かな国々で構成されるOECDクラブでは、労働人口の約7%が完全に仕事を失っていた。賃金の伸びは弱く、所得格差はとどまるところを知らない。 状況はどう変わったか。富裕国の世界では今、労働者は黄金時代を迎えている。社会が高齢化するにつれて、労働はより希少になり、より良い報酬が得られるようになっている。政府は大きな支出を行い、経済を活性化させ、賃上げ要求を後押ししている。一方、人工知能(AI)は労働者、特に熟練度の低い労働者の生産性を向上させており、これも賃金上昇につながる可能性がある。例えば、労働力が不足しているところでは、先端技術の利用は賃金を上昇させる可能性が高い。その結果、労働市場の仕組みが一変する。 その理由を理解するために、暗

By エコノミスト(英国)
中国は地球を救うのか、それとも破壊するのか?[英エコノミスト]

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脳腫瘍で余命いくばくもないトゥー・チャンワンは、最後の言葉を残した。その中国の気象学者は、気候が温暖化していることに気づいていた。1961年、彼は共産党の機関紙『人民日報』で、人類の生命を維持するための条件が変化する可能性があると警告した。 しかし彼は、温暖化は太陽活動のサイクルの一部であり、いつかは逆転するだろうと考えていた。トゥーは、化石燃料の燃焼が大気中に炭素を排出し、気候変動を引き起こしているとは考えなかった。彼の論文の数ページ前の『人民日報』のその号には、ニヤリと笑う炭鉱労働者の写真が掲載されていた。中国は欧米に経済的に追いつくため、工業化を急いでいた。 今日、中国は工業大国であり、世界の製造業の4分の1以上を擁する。しかし、その進歩の代償として排出量が増加している。過去30年間、中国はどの国よりも多くの二酸化炭素を大気中に排出してきた(図表1参照)。調査会社のロディウム・グループによれば、中国は毎年世界の温室効果ガスの4分の1以上を排出している。これは、2位の米国の約2倍である(ただし、一人当たりで見ると米国の方がまだひどい)。

By エコノミスト(英国)