暗号資産に金融業と同等の規制を適用するかを巡って暗闘が続く

米規制当局は、この数週間で暗号資産業界に対して警告を発し、インサイダー取引や詐欺などの違反行為を、従来の金融業界と同じ精度で取り締まることを示唆した。他方、業界はこれを避けるためのロビイングに熱を上げている。

暗号資産に金融業と同等の規制を適用するかを巡って暗闘が続く
Photo by Kanchanara

米規制当局は、この数週間で暗号資産業界に対して警告を発し、インサイダー取引や詐欺などの違反行為を、従来の金融業界と同じ精度で取り締まることを示唆した。他方、業界はこれを避けるためのロビイングに熱を上げている。

7月下旬、市場規制当局がインサイダー取引事件の一環として、証券とみなされる9つの暗号資産を特定するという異例の措置を取ったことで、暗号通貨トレーダーの間で不安が高まった。そのうちの7つは、米国最大の暗号取引プラットフォームであるコインべースで取引されていた。

SECは5月に暗号資産の執行部門の規模をほぼ2倍に拡大すると発表しており、この規模拡大がコインベースや暗号資産取引所Krakenの調査につながったとみられる。

米国の法規で何かが証券であるかないかは、基本的に、それが資金を調達する企業が発行する株式にどれだけ似ているかという問題である。2020年12月、同庁は当時3位だったデジタルトークン「XRP」を有価証券として登録せずに販売し、資金を集めたとして、リップルラボを提訴した。SECは、同社がXRPの価値上昇に賭ける投資家にXRPを発行して成長資金を調達していたと主張した。この事件は、リップルラボが元SEC委員長のメアリー・ジョー・ホワイトを弁護士として採用したことで、大規模な法廷闘争に発展している。

米国の規則は、証券と区分されたものに対して、プラットフォームと発行者に厳しい投資家保護要件を課す。暗号資産企業がかなり緩い法規に従って運営できていたものが、証券会社と同様のコンプライアンスと監視を受け入れることを意味する。

SECを含む米国の規制当局は、デジタル資産として圧倒的に大きいビットコインは証券ではないとの見解で一致している。

SECの最近の事例は、ワシントンでも突出している。議員たちは暗号資産を規制する枠組みについて議論しているが、まだ合意に至っていない。具体的な規則がない中、ゲンスラーは、デジタル資産の多くは証券であると主張し、数十年前に米国で制定された事例や判例を引用して、自身の主張を後押ししてきた。

誰がどうやって暗号資産を規制するかを巡って、政府内で様々な綱引きがあるようだ。3日、上院農業委員会のデビー・スタベノウ委員長と同委員会の共和党トップであるジョン・ボーズマン議員は、商品先物取引委員会(CFTC)にデジタル商品取引に関する独占的な管轄権を与える消費者保護法案を提出した。元CFTC委員長のブライアン・クインテンツは暗号資産に積極的に投資するアンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)に参加している。

ブルームバーグが取得したパブリック・シチズンの連邦政府の開示資料の分析によると、2018年以降、米暗号資産業界によるワシントンでのロビー費用は4倍になったという。業界は合計で900万ドル以上を費やした。主な支出者は、コインベース、リップルラボ、ブロックチェーン協会などという。

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