長距離輸送の規制緩和を切望する米自律走行トラック業界

長期的な投資フェーズが続く自律走行車の分野で、自律走行トラックはビジネスの立ち上がりが早いと考えられている。収益化企業たちは規制当局により積極的な秘術の活用を許容する規制緩和を求めている。物流業界は一変するのか?

長距離輸送の規制緩和を切望する米自律走行トラック業界
Image credit: TuSimple

長期的な投資フェーズが続く自律走行車の分野で、自律走行トラックはビジネスの立ち上がりが早いと考えられている。収益化企業たちは規制当局により積極的な秘術の活用を許容する規制緩和を求めている。物流業界は一変するのか?

米自律走行トラック企業による業界団体は、カリフォルニア州は公道での自律走行トレーラートラックの運行を解禁しなければ、「競争力」を失う危険性があると、ギャビン・ニューサム知事への公開書簡述べた。書簡には、Waymo、Aurora、TuSimple、Embark、UPS、Volvo、Uber Freightなど、自律走行車(AV)企業、配送・物流企業、自動車メーカーが横断的に署名している。同団体は、大型自律走行トラックの公開実験を禁止する規則を見直すよう、ニューサム氏に求めているのだ。

カリフォルニア州は2019年から、小型の自律走行トラックの公開テストを許可している。ミニバン、ピックアップトラック、ユーティリティバン、ステップバンを含むクラス1と2のトラックは、現行の規則でテストと商用配送のための許可を受けることができる。しかし、重量が10,001ポンドを超える車両(セミトラック、バス、大型建設車両など)は、州の許可制では許可されていない。

長距離トラック輸送は、AV技術の最初の広範なアプリケーションの1つになる可能性が高い。実際、トラック運送業界では、自律走行技術がトラック運転手の間に膨大な置換をもたらすのではないかという懸念が広まっている。2017年の調査では、自動運転トラックは2030年までに米国と欧州でドライバーの需要を50~70%も減少させ、両大陸のプロドライバー640万人のうち440万人が時代遅れとなる可能性があるとされている。ハイテク企業が、ドライバーを完全に排除するために設計された、人目を引く運転席なしのプロトタイプを発表するにつれ、こうした懸念が高まっている。

一方でこれは危険できつい仕事から人を解放することに繋がり、同時に生産性を大いに高めることも期待されている。自律走行車が一般的になった世界では、都市当局が大型トラックと乗用車の経路を分離する施策を取ることで、より安全性が増した交通環境が生まれる可能性もある。

振り落とし

このような規制当局への要請が行われる背景には、長期にわたって赤字を出してきたAV企業が、収益化を急いでいることがある。業界最大手のWaymoは前進のGoogleの社内プロジェクトから累積で数十億ドルが投じられてきた一方で、目立った収益は見当たらない。Uberのように「金食い虫」を支えきれず部門を売却した会社もある。彼らはAVが社会実装されない限りは赤字を垂れ流し続けるしかないのだ。

AVトラック新興企業のTuSimpleは収益化を急いでいる会社の最新の例だ。同社は昨年上場し、世界的なハイテクブームに乗って時価総額150億ドルに達したが、最近の向かい風の中で容赦ない売り浴びせに直面していた。同社は、昨年12月にアリゾナ州ツーソンからフェニックスまでの80マイルを走行した初の無人運転トラックが、同社の株価を後押しをすることを期待していたが、実施にはそうはならなかった。

これによって、人工知能の専門家である共同創業者のXiaodi Houが元未公開株投資家のCEO Cheng Luを非難し、これと直接の関係があるかわからないが、Luは辞任した、と米テクノロジーメディアThe Informationは報じた。加えて、同社は最近、CFOの退任を伴うマネージメントのシャッフルを実行してもいる。

TuSimpleの苦戦は、AV業界のより大きな問題を反映している。都市部での無人タクシーの導入が予想以上に時間がかかることが明らかになった後、投資家は近年、物資輸送用のロボットトラックを開発する企業に数十億ドルを投じている。しかし、トラックもまた困難であることが判明している。

各社の市場への取り組みはやや異なっている。TuSimpleとAuroraは、トラックメーカーと協力して人間の運転手が不要なトラックを開発し、使用料を支払う運送業者や荷主に提供しようとしている。一方、Embarkは、自動運転ソフトウェアをフリートオペレーターに販売することで収益を上げることを目指している。

いずれの企業もまだ大きな収益を上げていない。TuSimpleは第1四半期に、UPSやバークシャー・ハサウェイ傘下の卸売サプライチェーン企業McLaneなどの顧客向けに、ドライバー付きのトラックを使って貨物を運搬し、226万ドルの収益を上げた。2020年、TuSimpleはトラックメーカーNavistarとの提携を発表し、両社は2024年までに目的別の自律走行トラックの生産開始を目指すと述べていた。しかし、TuSimpleは最近、生産は2025年まで遅れると述べた。

Auroraは第1四半期に4200万ドルの収益を計上したが、これはAuroraがミニバン「シエナ」(㊦画像)の自動化を目指すトヨタとの契約によるものだ。Auroraは、Auroraに出資しているトヨタとの協業により、合計1億5,000万ドルの収益を見込んでいるとのこと。Embarkは収益を計上していない。

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