トランプ前大統領に漂う刑事訴追シナリオ

昨年1月6日の連邦議会襲撃事件に関する下院特別委員会の公聴会が今月4回開催され、トランプ氏に不利な証言がいくつか得られた。民主党や共和党穏健派は司法省による刑事訴追の可能性に言及している。

トランプ前大統領に漂う刑事訴追シナリオ
2022年4月23日(土)、米オハイオ州デラウェアのデラウェア郡フェアグラウンドで行われた「Save America」集会で笑顔を見せるドナルド・トランプ前米大統領。 Eli Hiller/Bloomberg

昨年1月6日の連邦議会襲撃事件に関する下院特別委員会の公聴会が今月4回開催され、トランプ氏に不利な証言がいくつか得られた。民主党や共和党穏健派は司法省による刑事訴追の可能性に言及している。

9日の公聴会では、約1年にわたり委員会が行ってきた関係者の聞き取り映像などが紹介され、トランプ氏の家族や側近の証言映像も流れた。その映像の一つで、大統領選後の2020年12月に退任したビル・バー司法長官(当時)は、選挙が「盗まれた」と繰り返すトランプ氏の主張はまったく「でたらめ」だと本人に「はっきり」伝えたと証言した。同様に紹介された証言映像では、トランプ氏の娘イヴァンカ氏も委員会に対して、自分の父親の陰謀論をバー氏が拒絶したことを「受け入れている」と発言した。

バー氏は任期中はトランプ氏寄りの行動が目立つと考えられていたが、今回の公聴会ではトランプ氏に不利に働く証言を続けている。

13日の公聴会で、バー氏はトランプ氏が支持する不正選挙にまつわる複数の主張を取り上げ、否定した。具体的にはミシガン州デトロイトでの違法な「票の廃棄」、投票集計機メーカーのドミニオン・ボーティング・システムズが自社の集計機で行ったとされる全国規模の票の操作、その他の陰謀説だ。バー氏はトランプ氏の擁護する言説は「馬鹿げていて」「素人臭く」、「現実とかけ離れている」と語った。

初回の公聴会はアメリカのゴールデンタイムに生中継され、2,000万人が視聴したとされる。

ただし、委員会はトランプ氏に批判的な態度の議員によって構成されていることに留意が必要だ。ナンシー・ペロシ下院議長(民主党)は、ケビン・マッカーシー共和党院内総務が指名した共和党議員らを除外し、共和党からはトランプ氏を辛口で批判するリズ・チェイニー下院議員とアダム・キンジンガー下院議員のみを参加させている。

前述のバーの証言が持たされて以降、左派からはトランプ氏が刑事訴追される可能性が取り沙汰されている。

オバマ政権では訴訟長官(代行)を務めたジョージタウン大学法科大学院の教授ニール・K・カティアルはニューヨーク・タイムズへの寄稿でトランプ氏が司法省によって刑事告訴されるシナリオを検討している。彼によると、本件でトランプ氏に適用されうる最も有望な罪状は公務執行妨害だという。「法律では、(連邦議会襲撃のあった)1月6日に議会と副大統領が投票を証明しなければならない。その認定を妨害しようとする何者かの組織的な陰謀があったようだ。問題は、前大統領がその陰謀の一端を担っていたかどうかだ。委員会は、トランプ氏が弁護士のジョン・イーストマンや、おそらくホワイトハウス首席補佐官のマーク・メドウズ、元司法省職員のジェフリー・クラークなどとともに、1月6日の選挙認定を妨害しようとしたことを示唆する証拠を示している」

彼が次に挙げたのが共謀罪だ。2人以上の人間が国を詐取することに合意したという証拠を必要とする。陰謀罪の主な特徴は、計画が成功する必要がないことで、これはトランプ氏が「1月6日の選挙認定を妨害しようとした」という証拠がある有力と見ることができる。

もう一つが扇動罪だ。この罪状では、2人以上の人間が、法律の執行を遅らせたり、政府を転覆させたりするために武力を行使することに合意したことを検察が証明する必要があるという。このような容疑は、司法省がすでに極右集団の「オース・キーパーズ」や「プラウド・ボーイズ」のメンバーに対して用いているが、「現在公に知られている一連の事実の下では、前大統領に対してその刑事責任をもたらすことはないだろう」とカティアルは指摘している。

トランプ氏は2024年の大統領選出馬を目論んでおり、トランプ氏に対する刑事訴追は高度な政治性をはらむことになる。

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