アマゾンの3.5兆円規模の広告事業がベールを脱いだ

アマゾンは2月3日、昨年の広告収益が310億ドル(約3兆4,482億円)を超えたと発表した。アマゾンが世界で最も急速に成長している広告事業者のひとつになったことが明らかになった。

アマゾンの3.5兆円規模の広告事業がベールを脱いだ
Image via Amazon

アマゾンは2月3日、昨年の広告収益が310億ドル(約3兆4,482億円)を超えたと発表した。アマゾンが世界で最も急速に成長している広告事業者のひとつになったことが明らかになった。

現在では、Microsoft、Snapchat、Twitterの合計よりも多くの広告費を稼いでいる。

アマゾンが広告ビジネスに本格的に取り組み始めたのは、10年ほど前に最初のアドエクスチェンジを立ち上げたときだった。紆余曲折を経て投資を再開したことで、過去4年間で事業は大きく成長した。

アナリストたちは以前から、アマゾンの広告事業が巨大であることを疑っていたが、その規模がどの程度であるかについては、これまではっきりとしたことは言えなかった。アマゾンはこれまで、広告収入を"その他"という広いセグメントの一部として報告していた。

アマゾンは2021年第4四半期に97億ドル近くの広告収益を得たが、これはホリデーシーズンの商戦によるものと思われる。昨年のブラックフライデーからサイバーマンデーまでの流通総額は過去最大だったとのことだ。

アマゾンの広告事業は巨大だが、Eコマースやクラウドなどを含む事業全体の中ではごく一部に過ぎない。前四半期の収益1,374億ドルのうち、広告事業が占める割合は約7%だった。

アマゾンは、動画広告やバナー広告など、さまざまな広告ユニットを販売している。しかし、広告収益の大部分は、検索結果の上部に表示されるスポンサープロダクト広告によるものだ。

アマゾンの広告ビジネスはソーシャルメディアではなく検索に関連しており、その多くが自社サービス内に限定されているため、Facebookの広告ビジネスに大きな影響を与えているとされるAppleのプライバシー変更の影響を受けにくい。

AWSに次ぐ売上成長率を示す広告事業。利益率はどの程度だろうか。出典:アマゾン、2020Q4 earnings.
AWSに次ぐ売上成長率を示す広告事業。利益率はどの程度だろうか。出典:アマゾン、2021Q4 earnings.

AmazonはGoogleなどとは異なり、広告した商品の実際の販売を行っているため、広告主に最も価値のあるデータを提供している。Amazonのデータは非常に強力であるため、広告主はプレミアムを支払ってでも、インターネット上の他の場所での広告買付の判断材料にしたいと考えている。このような方法でデータを使用すると、買付価格が20%から50%上昇するとのことだ。

アマゾンは広告事業の利益率を公表していないが、The InformationのSahil PatelとMark Di Stefanoの調査記事によると、広告はAmazonのクラウドコンピューティング事業と並んで、同社の最大の利益源のひとつであり、その利益率は60%から80%と、小売から来る一桁台前半の利益率よりもはるかに高いと、Amazonの元営業担当役員は語っている。

広告ではなく「アマゾン税」

アマゾンの広告ビジネスはマーチャントへの「課税」の側面を持っている。マーチャントから商品を顧客の目に触れるようにするために手数料を取っているといえるだろう。この種の電子商取引の収益化は中国のeコマース最大手アリババがリードしてきた。

アマゾンは今後もどの程度までマーチャントから徴税できるかを探っていくことになるだろう。マーチャントが重税に耐えかねて、D2Cを始めたり、他のプラットフォームに乗り換えたりすると元も子もない。

しかし、アマゾンはいまや全米最大の物流業者になろうとしており、マーチャントは物流網への依存を断ち切るのは難しいだろう。そして、消費者の中には、買い物に関連する検索をGoogleではなくアマゾンで行う消費者も数多くいるほど、デジタル消費行動の中心地となっている。

アマゾンは今後も広告という名前の「課税」を積極的に行っていくだろう。

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米国のEV革命は失速?[英エコノミスト]

米国のEV革命は失速?[英エコノミスト]

米国人は自動車が大好きだ。バッテリーで走らない限りは。ピュー・リサーチ・センターが7月に発表した世論調査によると、電気自動車(EV)の購入を検討する米国人は5分の2以下だった。充電網が絶えず拡大し、選べるEVの車種がますます増えているにもかかわらず、このシェアは前年をわずかに下回っている。 この言葉は、相対的な無策に裏打ちされている。2023年第3四半期には、バッテリー電気自動車(BEV)は全自動車販売台数の8%を占めていた。今年これまでに米国で販売されたEV(ハイブリッド車を除く)は100万台に満たず、自動車大国でない欧州の半分強である(図表参照)。中国のドライバーはその4倍近くを購入している。

By エコノミスト(英国)
労働者の黄金時代:雇用はどう変化しているか[英エコノミスト]

労働者の黄金時代:雇用はどう変化しているか[英エコノミスト]

2010年代半ばは労働者にとって最悪の時代だったという点では、ほぼ誰もが同意している。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの人類学者であるデイヴィッド・グレーバーは、「ブルシット・ジョブ(どうでもいい仕事)」という言葉を作り、無目的な仕事が蔓延していると主張した。2007年から2009年にかけての世界金融危機からの回復には時間がかかり、豊かな国々で構成されるOECDクラブでは、労働人口の約7%が完全に仕事を失っていた。賃金の伸びは弱く、所得格差はとどまるところを知らない。 状況はどう変わったか。富裕国の世界では今、労働者は黄金時代を迎えている。社会が高齢化するにつれて、労働はより希少になり、より良い報酬が得られるようになっている。政府は大きな支出を行い、経済を活性化させ、賃上げ要求を後押ししている。一方、人工知能(AI)は労働者、特に熟練度の低い労働者の生産性を向上させており、これも賃金上昇につながる可能性がある。例えば、労働力が不足しているところでは、先端技術の利用は賃金を上昇させる可能性が高い。その結果、労働市場の仕組みが一変する。 その理由を理解するために、暗

By エコノミスト(英国)
中国は地球を救うのか、それとも破壊するのか?[英エコノミスト]

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脳腫瘍で余命いくばくもないトゥー・チャンワンは、最後の言葉を残した。その中国の気象学者は、気候が温暖化していることに気づいていた。1961年、彼は共産党の機関紙『人民日報』で、人類の生命を維持するための条件が変化する可能性があると警告した。 しかし彼は、温暖化は太陽活動のサイクルの一部であり、いつかは逆転するだろうと考えていた。トゥーは、化石燃料の燃焼が大気中に炭素を排出し、気候変動を引き起こしているとは考えなかった。彼の論文の数ページ前の『人民日報』のその号には、ニヤリと笑う炭鉱労働者の写真が掲載されていた。中国は欧米に経済的に追いつくため、工業化を急いでいた。 今日、中国は工業大国であり、世界の製造業の4分の1以上を擁する。しかし、その進歩の代償として排出量が増加している。過去30年間、中国はどの国よりも多くの二酸化炭素を大気中に排出してきた(図表1参照)。調査会社のロディウム・グループによれば、中国は毎年世界の温室効果ガスの4分の1以上を排出している。これは、2位の米国の約2倍である(ただし、一人当たりで見ると米国の方がまだひどい)。

By エコノミスト(英国)