アマゾン、労組結成が決定的か
これまで労働組合の結成を防ぎ続けてきたアマゾンだが、政府サイドの圧力で防壁を守れるか危うくなってきた。労働者不足により労働者側の交渉力も高まっており、全米最大級の雇用者の組織化は不可避な情勢だ。
要点
これまで労働組合の結成を防ぎ続けてきたアマゾンだが、政府サイドの圧力で防壁を守れるか危うくなってきた。労働者不足により労働者側の交渉力も高まっており、全米最大級の雇用者の組織化は不可避な情勢だ。
アマゾンは、12月下旬、独立行政機関の全国労働関係委員会(NLRB)との全国規模の和解の一環として、倉庫で働く従業員が職場でより簡単に組織化できるようにすることに合意した。大規模な和解案は、全米最大の電子商取引企業であるアマゾンの労働者を組織化する橋頭堡を築く絶好の機会となりそうだ。
この和解案では、アマゾンは過去および現在の倉庫労働者(100万人以上と思われる)に権利に関する通知を電子メールで送り、建物内での組織化をより柔軟に行うとしている。また、不当労働行為を調査するNLRBは、アマゾンがこの条件に違反していると判断した場合、アマゾンを提訴することが容易かつ迅速にできるようになった。
和解案は、NLRBの民主党議員たちが、連邦政府の権力を行使して、労組結成の能力を労働者に与えようとしていることを示している。アマゾンはこれまでにも労働局と個別に和解してきたが、今回の和解は全国規模で、組織化への譲歩も含めて、これまでのどの合意よりも踏み込んだものとなっている。
アマゾンの規模は非常に大きく、米国内だけでも75万人以上が同社の事業に従事しているため、今回の和解は史上最大規模の労働者グループに影響することになる。
今回の和解は、アマゾンの労働者が同僚を組織することを制限されたとするシカゴで3件、ニューヨークで3件、計6件の労働者からの苦情がきっかけとなった。この和解を最初に報じたニューヨーク・タイムズによると、労働者は、アマゾンがシフトの前後15分以内に休憩室や駐車場などの場所にいることを禁止し、組織化を妨げていると訴えていた。
和解文書の中で、アマゾンは、労働者がシフトのはじめと終わりの15分間以外は休憩所やその他の共有スペースに入ることを許されず、組織化やその他の問題について労働者同士が話し合うことを妨げていたことを認めた。同社はこの方針を撤回し、その旨を従業員に通知することを約束した。
NLRBのデータベースによると、パンデミックが始まって以来、アマゾンに対して75件以上の不当労働行為を主張する訴訟が起こされているという。11月、アラバマ州ベッセマーのアマゾンの倉庫で行われた組合結成の選挙では、NLRBの地域局長は11月、倉庫の監視カメラに映る場所に設置された郵便受けに投票するよう労働者に圧力をかけて威圧した可能性があると判断し、新たな代表選挙を命じた。
今回の合意は、NLRBのジェニファー・アブルッツォ法律顧問にとって大きな一歩となるだろう。アブルッツォは、就任後5ヶ月の間に、大学のスポーツ選手を従業員として分類したり、不法解雇された労働者に対してより大きな和解金を求めたり、不当労働行為を阻止するために裁判所の命令を積極的に求めたりするなど、労働者の立場に立った行動をとってきた。
全米最大級の雇用者アマゾンの動向に注目が集まる
このプロセスは他の大企業の関心を集めているようだ。労働者不足による賃上げ圧力が生まれる中、様々な企業で労働組合結成の動きが見られるからだ。スターバックス、ケロッグ、農機メーカーのディア・アンド・カンパニーなど、他の企業も同様に組合活動の活発化に直面している。
パンデミックで雇用を増やし、ウォルマートに次ぐ全米第2位の民間雇用者となったアマゾンは、その労働力が全世界で150万人近くに急増したことで、労働圧力の増大に直面している。同社は、パンデミックによって従業員が雇用主に期待するものが変化したことで、労働者の組織化の流れが高まっていることを示す代表的な例となっている。
さらに、アマゾンはその成長に見合うだけの従業員を確保するのに苦労している。アマゾンは離職率の高い雇用モデルで成り立っていたが、今では多くの業界の労働者がより良い条件を求めて仕事を辞める現象への対応を迫られている。