アプリストアと各国規制当局の戦いの火蓋が切られた

各国当局がアプリストアの運用方法や手数料についてAppleとGoogleに対し圧力をかけている。ただ、韓国やオランダでの事例が示すとおり、2社は規制をかわす戦術を世界中で繰り出し続けるだろう。

アプリストアと各国規制当局の戦いの火蓋が切られた
各国当局がアプリストアの運用方法や手数料についてAppleとGoogleに対し圧力をかけている。ただ、韓国やオランダでの事例が示すとおり、2社は規制をかわす戦術を世界中で繰り出し続けるだろう。

各国当局がアプリストアの運用方法や手数料についてAppleとGoogleに対し圧力をかけている。ただ、韓国やオランダでの事例が示すとおり、2社は規制をかわす戦術を世界中で繰り出し続けるだろう。

この数週間の間で、アプリストアにおける決済ポリシーに関連する4つの重要な動きが見られた。時系列で追っていこう。

まず、Spotifyは、Googleとパートナーシップを締結し、世界中のAndroidアプリに第三者決済方法を追加で提供できるようになると発表した。ただし、Spotifyが参加するパートナーシップ・プログラム(今後、他の参加者も加わる予定)の取引条件は、まだ好評されていない。なお、Googleは、韓国でGoogle Power-abuse-prevention法が制定されたことを受けて、韓国のGoogle Playストアフロントでこれを可能にしたが、Googleの手数料は4ポイントしか減少していない(3月23日)。

アプリストア紛争で大きな進展: グーグルが外部決済を認める
グーグルとスポティファイは水曜日、スポティファイのアプリの将来のバージョンで、ユーザーがアプリ内でサインアップしてスポティファイのサブスクリプションに直接支払うことを可能にすると発表した。

次に、欧州委員会、欧州議会、EU加盟国の3者間交渉が終了し、欧州議会はデジタル市場法(DMA)の最終テキストを承認することを決議した。DMAは、「ゲートキーパー」、すなわちApple、Meta、Google、Amazonといった超大手ハイテク・プラットフォームを対象とした一連の改革から構成されており、定性的・定量的基準によって特定される。特に、ゲートキーパーは、決済システムなどのプラットフォーム固有のサービスの独占的利用を要求してはならず、また、ゲートキーパーは、そのプラットフォーム上で代替的なアプリストアの存在(およびアプリのサイドロード)を認めなければならないと規定している。

DMAの最終テキストが合意されたことにより、欧州議会での最終的な形式的投票にかけられ、同法案は可決される見込みである。DMAに続いて、主にコンテンツモデレーションとデジタル広告のターゲティングに焦点を当てた姉妹法であるデジタルサービス法(DSA)が成立する見込みである(3月24日)。

Appleは、オランダで出会い系アプリの第三者決済プロバイダーの使用要件を緩和した。オランダの独禁当局である消費者・市場庁(ACM)がAppleが出会い系アプリに対して第三者決済を認めなければ罰金を科すとの声明を出したことを受けてのものだ。しかし、Appleが徴収する税は残存し、Appleのプラットフォーム手数料をわずか3ポイント削減するにとどまっている(2022年3月30日)。

Appleは、昨年発表した「外部リンクアカウント権限」を導入し、「リーダーアプリ」がアカウント作成・管理のために自社のWebサイトにリンクすることを許可した。リーダアプリとはデジタル版の雑誌、新聞、書籍、オーディオ、音楽、ビデオの購入済みコンテンツまたはサブスクリプションコンテンツを提供するアプリ。SpotifyやNetflixはここに含まれる。もともとAppleは昨年、日本の公正取引委員会との和解を経て、これを認める意向を表明していた(3月30日)。

韓国放送通信委員会(KCC)は、Googleが、アプリストアの運営者に第三者決済を許可することを義務付けた世界初の法律を遵守していないと判断した。Googleはこの法律を遵守することに同意したが、迂回作として外部支払手段へのリンクを削除する計画をアプリ開発者に提示していた。これにより事実上、第三者決済の採用が不可能になる。KCCは、Googleがアプリを削除する計画を推進した場合、事実関係の調査につながる可能性のある違反行為を判断するための予備的状況調査を実施しうると述べている(4月7日)

グーグルはKCCの指針を検討中で、Androidのエコシステムへの投資を継続する一方、現地のアプリ開発者と協力してユーザーの選択肢を広げる方法を模索すると、同社の広報担当者はWSJに対し述べた。ハイテク大手は以前、サードパーティの決済オプションが扱うアプリ内決済には、自社の決済システムで課金する場合よりも4%ポイント低い手数料を適用すると述べていた。電子書籍プロバイダーの場合は6%、人気のあるモバイルゲームアプリの場合は26%という低い手数料になる可能性があると、Googleは述べている。

このような規制の取り組みとプラットフォームポリシーの変更は、昨年導入された多くの断片的な開発と合わせると、アプリエコノミーにおけるプラットフォーム税が引き下げられる徴候を示している。

AppleとGoogleの両方が、オンプラットフォームの収益がわずかな開発者に対して、それぞれのプラットフォーム手数料を15%に減らすスモールビジネスプログラムを保持していることを考えると、ほとんどの開発者に関連するプラットフォーム手数料は30%ではなく15%だが、アプリストア収益の大半を占める大型アプリに対する手数料はそうではない。App Storeはゲームストアでもあり、AppleとGoogleはそのためにアプリ内購入の手数料を引き下げることに抵抗してきた。ゲームはモバイルプラットフォームの収益の大部分を生み出している。

しかし、韓国やオランダでの事例が示すとおり、AppleとGoogleは規制をかわす戦術を世界中で繰り出してくるだろう。現在確認されている代表的な2つの戦術は、外部決済は認められたものの「税率」は引き下げないことと、外部決済は認めるもののそのリンクは拒否することだ。

EUのような広範な経済圏で統一した規制が作られるのは、アプリストアの支配力を緩和するのに有効だろう。韓国のような国がプラットフォームを既定路線に載せるためには、世界の規制当局のチームワークが求められているのではないか。

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新たなスエズ危機に直面する米海軍[英エコノミスト]

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世界が繁栄するためには、船が港に到着しなければならない。マラッカ海峡やパナマ運河のような狭い航路を通過するとき、船舶は最も脆弱になる。そのため、スエズ運河への唯一の南側航路である紅海で最近急増している船舶への攻撃は、世界貿易にとって重大な脅威となっている。イランに支援されたイエメンの過激派フーシ派は、表向きはパレスチナ人を支援するために、35カ国以上につながる船舶に向けて100機以上の無人機やミサイルを発射した。彼らのキャンペーンは、黒海から南シナ海まですでに危険にさらされている航行の自由の原則に対する冒涜である。アメリカとその同盟国は、中東での紛争をエスカレートさせることなく、この問題にしっかりと対処しなければならない。 世界のコンテナ輸送量の20%、海上貿易の10%、海上ガスと石油の8~10%が紅海とスエズルートを通過している。数週間の騒乱の後、世界の5大コンテナ船会社のうち4社が紅海とスエズ航路の航海を停止し、BPは石油の出荷を一時停止した。十分な供給があるため、エネルギー価格への影響は軽微である。しかし、コンテナ会社の株価は、投資家が輸送能力の縮小を予想している

By エコノミスト(英国)
新型ジェットエンジンが超音速飛行を復活させる可能性[英エコノミスト]

新型ジェットエンジンが超音速飛行を復活させる可能性[英エコノミスト]

1960年代以来、世界中のエンジニアが回転デトネーションエンジン(RDE)と呼ばれる新しいタイプのジェット機を研究してきたが、実験段階を超えることはなかった。世界最大のジェットエンジン製造会社のひとつであるジー・エアロスペースは最近、実用版を開発中であると発表した。今年初め、米国の国防高等研究計画局は、同じく大手航空宇宙グループであるRTX傘下のレイセオンに対し、ガンビットと呼ばれるRDEを開発するために2900万ドルの契約を結んだ。 両エンジンはミサイルの推進に使用され、ロケットや既存のジェットエンジンなど、現在の推進システムの航続距離や速度の限界を克服する。しかし、もし両社が実用化に成功すれば、超音速飛行を復活させる可能性も含め、RDEは航空分野でより幅広い役割を果たすことになるかもしれない。 中央フロリダ大学の先端航空宇宙エンジンの専門家であるカリーム・アーメッドは、RDEとは「火を制御された爆発に置き換える」ものだと説明する。専門用語で言えば、ジェットエンジンは酸素と燃料の燃焼に依存しており、これは科学者が消炎と呼ぶ亜音速の反応だからだ。それに比べてデトネーシ

By エコノミスト(英国)
ビッグテックと地政学がインターネットを作り変える[英エコノミスト]

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今月初め、イギリス、エストニア、フィンランドの海軍がバルト海で合同演習を行った際、その目的は戦闘技術を磨くことではなかった。その代わり、海底のガスやデータのパイプラインを妨害行為から守るための訓練が行われた。今回の訓練は、10月に同海域の海底ケーブルが破損した事件を受けたものだ。フィンランド大統領のサウリ・ニーニストは、このいたずらの原因とされた中国船が海底にいかりを引きずった事故について、「意図的なのか、それとも極めて稚拙な技術の結果なのか」と疑問を呈した。 海底ケーブルはかつて、インターネットの退屈な配管と見なされていた。現在、アマゾン、グーグル、メタ、マイクロソフトといったデータ経済の巨人たちは、中国と米国の緊張が世界のデジタルインフラを分断する危険性をはらんでいるにもかかわらず、データの流れをよりコントロールすることを主張している。その結果、海底ケーブルは貴重な経済的・戦略的資産へと変貌を遂げようとしている。 海底データパイプは、大陸間インターネットトラフィックのほぼ99%を運んでいる。調査会社TeleGeographyによると、現在550本の海底ケーブルが活動

By エコノミスト(英国)