Appleのプライバシー規定が張子の虎に
Appleが今春導入したユーザーがアプリ行動の追跡を拒否できるようにしたプライバシーポリシーの影響をGoogleやMetaのようなデジタル広告企業は事実上回避することに成功した。効果的な迂回策が採用されている。
要点
Appleが今春導入したユーザーがアプリ行動の追跡を拒否できるようにしたプライバシーポリシーの影響をGoogleやMetaのようなデジタル広告企業は事実上回避することに成功した。効果的な迂回策が採用されている。
フィナンシャルタイムズ(FT)は、Appleの新しいプライバシーポリシーでは禁止されているにもかかわらず、MetaやSnapなどの大手企業がiPhoneを介してユーザーデータにアクセスすることをAppleが容認しているとする、衝撃的なレポートを公表した。
レポートは、Appleが最近導入したユーザープライバシーポリシーの施行において、少なくともMetaやSnapなどの大手に関しては、緩いアプローチを取っていると主張している。
App Tracking Transparency(ATT)ポリシーは、モバイルユーザーがアプリに対して、ウェブ上での行動を追跡したり、ユーザーレベルの情報を収集することを禁止する選択肢をユーザーに委ねる措置だ。
同社は、広告主や開発者の「トラッキング」を取り締まるよう、議員や技術者への圧力が高まる中、ユーザーのデータプライバシーをさらに優先させるという使命を率直に語っている。5月には、アプリのトラッキングがもたらす不正行為を強調した派手な広告も発表した。さらに6月には、iOS 15のアップデートの一環として、電子メールのプライバシーを高めるための内蔵VPN「Private Relay」など、ユーザーのプライバシー保護機能を新たに導入した。
しかし、FTによると、開発者たちはAppleのルールを、コホート(固有のIDを割り当てなくても、人々が入れられたグループ)を対象に広告を出すことが許されるという意味に解釈しているという。Snapのようなデベロッパーは、個々のユーザーに結びつく可能性があるものは匿名化されてグループ化されるという正当な理由で、追跡しないように依頼した人からも一部のデータを収集し続けているとのことだ。
これは、Google社が計画している「FLoC」と同様のコンセプトであり、個人を追跡する代わりに、どのような商品を購入するかを示すラベルが割り当てられる。広告主がすべての人の行動を追跡しなくても、広告はターゲットを絞ることができる。
しかし、開発者の中には、広告会社から受け取った情報をもとに、広告を見た後のユーザーの行動を予測しようとしている人もいると認めている。FTによると、IPアドレス、位置情報、画面サイズなどの個人情報は、広告が適切に表示されるようにするために、今でも広告主に提供されているという。
迂回策の具体的な手法
米経済メディアThe Informationの新しいレポートでは、Snapが使用している回避策に特に焦点を当てて、この問題を詳しく説明している。
このレポートによると、Appleの「App Tracking Transparency」のルールでは、開発者はユーザーを追跡したり、異なるアプリやサービス間で「ユーザーまたはデバイスのデータ」をリンクさせたりすることはできないとされているが、ガイドラインでは「リンク」を具体的に定義していない。このため、ユーザーが追跡を希望しなかった場合でも、ポリシーの空白地帯があるとのことだ。Verizonやアドテクノロジー企業のAdjustによると、全世界のApple iOSユーザーの約80%が少なくとも1つのアプリのトラッキングを拒否しているにもかかわらず、アプリ開発者はユーザーに関するデータを共有しており、後でユーザーを特定するために使用される可能性があるという。
例えば、Snapが使用していると報じられている迂回策は「Advanced Conversions」と名付けられており、「個々のiPhoneユーザーの活動に関する詳細な情報を(第三者の)アドテクノロジー企業から受け取る」ことができる。
そのデータを利用することで「ユーザーがSnapにデータを送っているアプリに追跡しないように頼んでいても、広告の効果を測ることができる」と言われています。しかし、Snapの戦略の鍵は「Snapchatで広告を見た人が、その後他のアプリで何をしたか」という情報を暗号化でぼかし、個人に結び付けられないようにしている。それでも、Snapはそのデータを分析して、広告主に成果を提供することができる。
The Informationによると、Snapは自社のシステムがAppleのApp Tracking Transparencyガイドラインに違反しているとは考えていないとのことです。また、FacebookやGoogleも同様のシステムを構築していると報じられていますが、彼らもガイドラインに違反していないと考えているようだ。
Snapは受信したデータに複雑な数学的モデルを用いて、オプトアウトしたユーザーが自社アプリで広告を見たことに基づいて特定の行動をとった可能性を分類しているという。FacebookやGoogleも同様のシステムを構築しているという。GoogleはThe Informationに対し追跡されないように要求したiOSユーザーのデータを、アップル社の規則に準拠していると思われるプライバシー保護の方法で使用していると述べている。
しかし、Snapchat、Facebook、Googleがいずれもこのようなシステムを開発したと報じられているにもかかわらず、FacebookとSnapの両社を含む企業が、App Tracking Transparencyによって金銭的な影響を受けたと報告している。
広告トラッカーをブロックするアプリLockdown PrivacyはAppleのポリシーを「サードパーティによるトラッキングを止めるには機能的に役に立たない」と指摘している。