AI企業に変身するバイドゥ

AIプラットフォーム「Baidu Brain 7.0」とAIチップ「Kunlun II」の2本立て

AI企業に変身するバイドゥ
百度世界大会 via Baidu.

要点

バイドゥは中国テック企業の3強に数えられるが、アリババとテンセントに大きく水を開けられた。そのバイドゥが人工知能(AI)で輝きを取り戻そうとしている。


中国の大手テクノロジー企業バイドゥ(百度)は、同社のオープンAIプラットフォームの最新版「Baidu Brain 7.0」の提供を開始し、さらに同社のAIチップ「Kunlun II」が量産されたことを発表した。

これらのアップデートは、北京からライブストリーミングされた同社の技術カンファレンス「Baidu World 2021(百度世界大会2021)」で発表された。この会議は、COVID-19のパンデミックが続いているため、仮想的に開催された。

同社によると、Baidu Brain 7.0は世界最大級のAIオープンプラットフォームであり、BaiduがAIやBaidu Cloudの産業応用をサポートするために使用している。新バージョンでは、幅広い知識ソースの統合を強化し、技術の組み合わせによる言語理解や推論などのディープラーニングを実現し、言語、音声、ビジュアルのフォーマットを超えた出力を可能にしている。なお、今回のカンファレンスでは、新バージョンの詳細や仕様については発表されなかった。

前バージョンの「Baidu Brain 6.0」は、270以上のコアAI機能を開発し、開発者向けに31万以上のモデルを作成し、幅広い業界におけるインテリジェントな変革の重要な推進力となっていたという。Baidu Brainは、2016年にプラットフォームとして発表された。

バイドゥの新しいAIチップ「Kunlun II」が大量に入手可能になったことで、顧客は、劇的に改善された「Baidu Brain 7.0」ソフトウェアとともに最新のチップを使用して、新世代のAIアプリケーションを実現できるようになると、同社は声明で述べている。

バイドゥが独自に開発したKunlun IIチップは、第一世代のKunlunチップに比べて2~3倍の処理能力を約束している。Kunlun IIは、7nmプロセスを採用し、クラウド、エッジ、AI向けにバイドゥが独自に開発した第2世代のXPUニューラルプロセッサアーキテクチャを搭載しているとのことだ。

バイドゥによると、Kunlun IIチップは、最大256TeraOPS(INT8)、128TFLOPS(FP16)を実現し、最大消費電力は120Wとなる。このチップには、Arm CPU、高速インターコネクト、セキュリティ、仮想化のほか、アップグレードされたコンパイラエンジンと開発キットが搭載されている。なお、Kunlun IIチップの追加仕様や性能については、現在のところ公表していない。

第一世代のKunlunチップは2018年に発表され、2019年末に量産を開始した。バイドゥによると、これまでに2万個以上の第1世代Kunlunチップが製造され、検索エンジン、スマートアシスタント、クラウドビジネスのニーズに使用されてきた。

バイドゥのAIチップ「Kunlun Ⅱ」のイメージ via Baidu.

初代のKunlunチップは、14nmプロセス技術を使用し、512ギガバイト/秒(Gbps)のメモリ帯域幅を搭載していた。このチップは、150ワットで最大260TOPSの性能を発揮し、 バイドゥが開発したErnieの自然言語処理の事前学習モデルは、従来のGPU/FPGAで加速するモデルに比べて3倍の速さで推論することができたと、バイドゥは述べている。

バイドゥによると、新しいKunlun IIチップは、高性能コンピュータクラスタ、バイオコンピューティング、インテリジェントな交通機関や自律走行など、さまざまなニーズに対応するクラウド、端末、エッジコンピューティングのシナリオで使用することができる。Kunlun IIチップは、音声、自然言語処理、画像などのAI技術に最適化されており、バイドゥのオープンソースの深層学習プラットフォームであるPaddlePaddleなどの深層学習フレームワークをサポートしている。

ロイターによると、3月にBaiduのKunlunチップ部門は、約20億ドルとも言われる新たな資金調達を受けた一方で、6月にはより大きな動きとして、BaiduはKunlunチップ製造部門を独自の会社として分離した。

また、バイドゥは8月24日、同社の人工知能(AI)音声アシスタント「シャオドゥ・テクノロジー」が51億ドルの評価額でシリーズBの資金調達を終えたと発表した。2020年11月にシリーズAの資金調達を完了し、ポストマネーの評価額は29億ドルだったとバイドゥは述べている。

Read more

AI時代のエッジ戦略 - Fastly プロダクト責任者コンプトンが展望を語る

AI時代のエッジ戦略 - Fastly プロダクト責任者コンプトンが展望を語る

Fastlyは、LLMのAPI応答をキャッシュすることで、コスト削減と高速化を実現する「Fastly AI Accelerator」の提供を開始した。キップ・コンプトン最高プロダクト責任者(CPO)は、類似した質問への応答を再利用し、効率的な処理を可能にすると説明した。さらに、コンプトンは、エッジコンピューティングの利点を活かしたパーソナライズや、エッジにおけるGPUの経済性、セキュリティへの取り組みなど、FastlyのAI戦略について語った。

By 吉田拓史
宮崎市が実践するゼロトラスト:Google Cloud 採用で災害対応を強化し、市民サービス向上へ

宮崎市が実践するゼロトラスト:Google Cloud 採用で災害対応を強化し、市民サービス向上へ

Google Cloudは10月8日、「自治体におけるゼロトラスト セキュリティ 実現に向けて」と題した記者説明会を開催し、自治体向けにゼロトラストセキュリティ導入を支援するプログラムを発表した。宮崎市の事例では、Google WorkspaceやChrome Enterprise Premiumなどを導入し、災害時の情報共有の効率化などに成功したようだ。

By 吉田拓史
​​イオンリテール、Cloud Runでデータ分析基盤内製化 - 顧客LTV向上と従業員主導の分析体制へ

​​イオンリテール、Cloud Runでデータ分析基盤内製化 - 顧客LTV向上と従業員主導の分析体制へ

Google Cloudが9月25日に開催した記者説明会では、イオンリテール株式会社がCloud Runを活用し顧客生涯価値(LTV)向上を目指したデータ分析基盤を内製化した事例を紹介。従業員1,000人以上がデータ分析を行う体制を目指し、BIツールによる販促効果分析、生成AIによる会話分析、リテールメディア活用などの取り組みを進めている。

By 吉田拓史
Geminiが切り拓くAIエージェントの新時代:Google Cloud Next Tokyo '24, VPカルダー氏インタビュー

Geminiが切り拓くAIエージェントの新時代:Google Cloud Next Tokyo '24, VPカルダー氏インタビュー

Google Cloudは、年次イベント「Google Cloud Next Tokyo '24」で、大規模言語モデル「Gemini」を活用したAIエージェントの取り組みを多数発表した。Geminiは、コーディング支援、データ分析、アプリケーション開発など、様々な分野で活用され、業務効率化や新たな価値創出に貢献することが期待されている。

By 吉田拓史