中国企業の米上場、包囲網狭まる
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中国企業の米上場、包囲網狭まる

DiDiが米上場を廃止し香港で再IPOをすると発表したことで、中国企業の米上場は危機に瀕しているとの見方が濃厚となった。蜜月は中国企業とウォール街の蜜月はついに終わるのか?

吉田拓史

要点

DiDiが米上場を廃止し香港で再IPOをすると発表したことで、中国企業の米上場は危機に瀕しているとの見方が濃厚となった。中国企業とウォール街の蜜月はついに終わるのか?


Didi Global(滴滴出行)は米国預託株式(ADR)のニューヨーク証券取引所からの上場廃止を申請し、香港での上場を目指すと木曜日に声明を発表した。この動きはDiDiの取締役会で支持されたという。

声明によると、Didiは、米国預託株式のニューヨーク証券取引所への上場廃止を申請すると同時に、他の国際的な証券取引所で自由に取引できる株式への転換を保証する。また、この動きについて投票するための株主総会を手配するとしている。DiDiは、ニューヨークでの上場廃止を計画した理由を明らかにしていない。

DiDiは6月30日に約44億ドルを調達し、ニューヨーク証券取引所に上場した。しかし、IPOの直後、中国当局はDidiの上場の動きに不満を示し、データ・セキュリティの審査を開始したと発表した。また、中国の規制当局はDiDiの中国事業が新規ユーザーを追加することを阻止し、一部のアプリを削除するよう命じた。

これに先立ち、11月下旬には中国は企業が変動持分事業体を通じて海外の株式市場に上場することを禁止する計画であるとブルームバーグは関係者の談話をもとに報じていた。

報道によると、中国は企業が「変動持分事業体(VIE)」として知られるオフショア構造を使用することを禁止することを計画していると。これにより、中国のテクノロジー産業が海外の上場すっるための長年利用してきた抜け道が塞がれることになる。

この禁止令は、データの安全性に関する懸念に対処することも目的としており、早ければ今月中にも最終決定される可能性のある中国の海外上場規則の新しい草案に含まれている変更点のひとつであると、ブルームバーグが引用した関係者は語っている。いわゆるVIE構造を採用している企業は、規制当局の承認を得た上で、米上場を廃止し香港で再IPOを行うことが求められているとされている。

これに対し、中国証券監督管理委員会は1日、ウェブサイト上で、VIE構造を利用している企業の海外上場を禁止するというメディアの報道は事実ではないと反論した。声明は非常に短く、反論以外の情報が得られないものだった。

米国側も態度を硬化

米証券取引委員会(SEC)は2日、外国企業に米国の監視下で帳簿を公開することを義務付ける新法を導入するための最終計画を発表した。中国企業がこれを満たせなければ、3年以内にニューヨーク証券取引所とナスダックから追い出される危険性がある。2002年以来、米国は検査を義務付けているにもかかわらず、中国と香港は検査を拒否している。

米国証券取引委員会(SEC)の新規則は、SECが上場廃止の対象となる企業をどのように特定するか、またコンプライアンスに違反した企業を取引所から追い出すための手順を定めた

SECのゲイリー・ゲンスラー議長は声明の中で「米国で公開証券を発行したいのであれば、帳簿を監査する会社は公開会社会計監視委員会(PCAOB)の検査を受けなければならない。50以上の国と地域がPCAOBと協力して必要な検査を行っているが、中国と香港の2つの国は歴史的に検査を行っていない」

VIEは役割を終えた?

現在、米国と香港に上場しているVIEを使用している企業は、特に外国からの投資が禁止されている分野において、規制当局の審査で所有構造がより透明になるよう調整する必要があるという。これが、株主の見直しを意味するのか、あるいはもっと大胆に、最も機密性の高い企業の上場廃止を意味するのかは不明だが、このような動きは、テクノロジーなどの分野における中国と米国のデカップリング(分離)への懸念を再燃させる可能性がある。ルール案の詳細はまだ議論中で、変更される可能性もある。

VIE構造を全面的に禁止することは検討されてないが、海外での上場が停止され、香港でのIPOが追加で規制当局から審査されることになれば、多くの新興企業にとってVIEモデルは資本市場に参入するための有効な手段ではなくなるはずだ。すでに一部の投資銀行は、規制当局からVIEを含む新規取引を中止するよう勧告を受けていると、この問題に詳しい関係者はブルームバーグに語ったという。

VIEルートの崩壊は、ウォール街の銀行にとっては、過去10年間で約300社の中国企業が米国で初めて株式を売却して以来約820億ドルを調達するのを支援してきた錬金術を破綻させかねないだろう。

VIEはその法的地位の不安定さから、世界の投資家にとって長年の悩みの種でした。VIEの枠組みは、2000年のIPOの際に新浪とその投資銀行家によって開発されたが、北京から正式に承認されたことはない。

それにもかかわらず、中国企業は、インターネット産業を含む機密性の高い分野で、国内の外資規制を回避することができた。VIEは、中国企業が利益をケイマン諸島や英領バージン諸島などで登録されたオフショア企業に移転し、その株式を外国人投資家が所有できるという仕組みである。

中国の大手インターネット企業のほとんどがこの仕組みを利用しているが、テクノロジー企業が中国の生活の隅々にまで入り込み、大量の消費者データを収集した後、北京ではこの仕組みがますます心配になってきた。中国の中国国家インターネット情報弁公室(CAC)は7月、100万人以上のユーザーデータを保有する企業が他国での上場を希望する場合、承認を受けなければならないと発表した。

また、香港でIPOを計画している企業でも、上場が国家安全保障に影響を与える可能性があると判断された場合には、サイバーセキュリティの審査が必要になるかもしれない。