中国株はバーゲンセールか 勇敢な個人投資家の資金が流入

資本主義を完全に排除する動きではない

中国株はバーゲンセールか  勇敢な個人投資家の資金が流入
"DAV_0929"by UN Women Asia & the Pacific is licensed under CC BY-NC-ND 2.0

要点

  • 中国株の投資信託への個人投資家の資金流入が起きている。中国ほどの流動性のある新興国市場は他にない。
  • 最近の習近平政権の規制は見方によっては伝統的なパターナリスティックな政策とも言える。資本主義を完全に排除しようという動きと見るのは過剰反応だ。

1. 暴落の後個人投資家の流入が続いている

中国のテクノロジー企業に対する一連の規制強化の後、同企業の株価が暴落したことで、投資信託市場にはバーゲン・ハンターが戻ってきた。

英金融メディアCitywireによると、中国株を扱うフィデリティ・チャイナ・スペシャル・シチュエーションズ(FCSS)とJPモルガン・チャイナ・グロース&インカム(JCGI)は、7月にインタラクティブ・インベスターのクローズドエンド型ファンドの売上トップ10に返り咲いた。

フィナンシャル・タイムズが引用したCFRAのデータによると、アリババ、テンセント、JD.com、Meituanなどの大手企業を保有する米国の上場投資信託(ETF)は、7月に入ってから20億ドル以上の新規資金を集めている。53億ドル規模のKraneShares CSI China Internet ETFは、多くの機関投資家が中国当局の厳しい監視にさらされる可能性があると判断したセクターから手を引いている中、個人トレーダーから連日記録的な資金流入を集めているという。

中国の教育分野に対する取り締まりがきっかけとなり、ウォール街に上場している教育関連企業3社が暴落したほか、中国の大手ハイテク企業を対象としたナスダックゴールデンドラゴンチャイナ指数は先月、5分の1以上の値下がりを記録した。KraneSharesファンドは、2021年のこれまでのところ、3分の1にまで暴落している。

年初来、テンセントが約40%、アリババが15%下落していることから、個人投資家は、昨年のトップパフォーマーであった中国に価値が出てきたと考えている。

FTによると、国際的に上場している中国のインターネット株を追跡するベンチマークは、過去5年間で最も低い株価収益率(PER)で取引されており、投資家はおそらく、過去の「大幅な」売り越しの後にアウトパフォーマンスの期間があったことを思い出すだろうと、KraneSharesの投資チーフであるBrendan Ahernは今週のウェビナーで顧客に語った。また、中国関連のETFでは、コールオプションの取引が盛んに行われている。これは、マーケットメーカーと呼ばれる金融機関が、価格が高騰した際の多額の支払いに備えて、ファンドの株式を購入することが多いため、購入を促すものでもある。

ブルームバーグによると、7月の最終週の時点で中国のETFは9億7500万ドル(約1070億円)の純流入だった。先週初めに急落していた中国株が回復していることは、いかに新興国市場の投資家にとって同じぐらい大規模で流動性の高い代替投資先がほとんどないかを浮き彫りにしているという。

2. 長期的には魅力的な投資対象

中国当局によるテクノロジー、教育産業に対する締め付け強化が世界に衝撃を与えており、わずか5ヵ月で約85兆円の時価総額が吹き飛んだ。

だが、中国への投資は長期的に見て魅力的だ。中国の経済成長を支えてきた中産階級の台頭は、コロナウイルスの蔓延からの脱却を促し、輸出主導型経済から国内消費重視型経済への転換を促進すると考えられる。

2月16日の20,893の最高値から、5日時点で45%下落したナスダックゴールデンドラゴンチャイナ指数
2月16日の20,893の最高値から、5日時点で45%下落したナスダックゴールデンドラゴンチャイナ指数

世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーターアソシエイツの創業者レイ・ダリオは、中国の最近の規制強化が、一部の欧米の投資家によって「反資本主義」であると誤解されていると述べている。

「この40年間の流れは、資本市場を持つ市場経済を発展させ、起業家や資本家が豊かになる方向に向かっていたにもかかわらず、(欧米のオブザーバーは)最近の2つの動きをとって、共産党の指導者が真の反資本主義者であることを示していると解釈している」とダリオは言う。「その結果、彼らは中国で起こっていることを見逃してきたし、おそらく今後も見逃すことになるだろう」。

中国の規制当局は、急速に発展する資本市場環境の中で、「適切な規制を模索している」と理解するよう投資家に呼びかけている。「だから、規制当局が急速に変化し、明確でない場合は、このような混乱が生じ、それが反資本主義的な動きと誤解される可能性がある」とダリオは書いている。

「このようなことが将来起こることを想定し、それに合わせて投資する。しかし、このような小刻みな動きをトレンドの変化と誤解してはいけないし、この中国の国営資本主義が西洋資本主義と全く同じになると期待してはいけない」

教育分野への取り締まりは、家庭教師・塾産業の過剰な暴走でコストが急増しており、事実上の両親の課金競争が生まれているため、非営利団体(NPO)化を求める施策は、国内の不平等を減らすための試みともとれるだろう。これらの不平等がカップルが子供を少なくし、資金を重点投入する傾向を促しており、出生率を低下させていると国務院は分析しているとも言われている。

中国はいまや欧米のレールの外側に出て自らのアイデアでテクノロジー産業の規制を行おうとしている。その中にはアントグループやテンセントのフィンテックビジネスをデジタル人民元の傘の下に入れることも含まれている。ある意味では、一部の企業への過剰な力の集約を防ぎ分配を重視する、伝統的な制作を行っている過ぎないだろう。

もちろん中国政府が長期的にどのような道を歩もうとしているかまだ明確なビジョンは示されていないため、今後も注視が必要なのは言うまでもない。