北米ロボタクシー市場はCruiseとWaymoのマッチレース:「その他大勢」は淘汰されるか

CruiseとWaymoは、投資家や自動車メーカーの間で自律走行車(AV)の完成時期に対する幻滅が高まっているにもかかわらず、より多くの都市にロボタクシーを導入する計画を推進している。2者が北米市場を支配し、その他のプレイヤーは淘汰される局面にあるかもしれない。

北米ロボタクシー市場はCruiseとWaymoのマッチレース:「その他大勢」は淘汰されるか
WaymoとZeekrが共同開発したロボタクシー用EV。出典:Waymo

CruiseとWaymoは、投資家や自動車メーカーの間で自律走行車(AV)の完成時期に対する幻滅が高まっているにもかかわらず、より多くの都市にロボタクシーを導入する計画を推進している。2者が北米市場を支配し、その他のプレイヤーは淘汰される局面にあるかもしれない。


CruiseとWaymoはすでにカルフォルニア州サンフランシスコとアリゾナ州フェニックスで無人運転タクシーを走らせている。複数の都市でロボタクシーサービスを迅速に拡大することで、早い段階からリードを築くことができれば、自動運転技術の経済性が実現可能であり、単なる高価な科学実験ではないことを証明するチャンスである。

一方、他の主要なプレーヤーは、閉鎖、合併、縮小を進めている。フォードとフォルクスワーゲンは10月、自律走行車の合弁会社であるAlgo AIを停止させた。AVデリバリーのスタートアップNuroは従業員の20%を解雇し、AVの要素技術LiDARの大手サプライヤーのOusterとVelodyneは合併を発表した。

Waymoの親会社であるAlphabetでさえ、アクティビスト投資家からAV部門の損失を減らすよう圧力をかけられている。フォードのCEOであるジム・ファーレイは、「収益性の高い、大規模な完全自律走行車の実現は、まだ先の話だ」と述べている。

しかし、Waymoとゼネラル・モーターズ(GM)が支援するCruiseは、後退するどころか、アクセルを踏み込んでいる。GMのメアリー・バーラCEOは10月、投資家に対して「我々は今、リードしているので、商業化を制約しないようにし続けるつもりだ」と述べた。「うまくいくわけがない、何十年も先のことだと書いている人たちは、この車に乗っていないのです」。

Cruiseはサンフランシスコに続き、12月末までにフェニックスとテキサス州オースティンでもロボタクシーサービスを展開する予定だ。Cruiseは先週、サンフランシスコ大学と提携し、同校の8,500人以上の学部生と大学院生に2023年5月までロボタクシーに無料で乗れるようにする、と明らかにした。

同社は11月、カスタムメイド車両Origin(画像㊦)を公道でテストするための許可を、カリフォルニア州自動車局に申請した。2023年にはさらにいくつかの都市でのサービスが予定されており、CruiseのCEOであるKyle Vogtは、2025年までに売上高10億ドルを目指すと述べている。

ロボタクシー専用のカスタム車両Origin。出典:Cruise

Waymoも拡大を続けており、ロサンゼルスを(フェニックスとサンフランシスコに続く)3番目の市場にすると発表している。Waymoは19日、フェニックスでダウンタウン(中心街)とスカイハーバー国際空港の間のルートで、無人のロボタクシーを開通させた、と明らかにした。空港はタクシーや配車の主要な商圏であり、ロボタクシーにとっても有望な市場だ。

11月、カリフォルニア州はWaymoに、サンフランシスコでセーフティドライバーなしで乗客を輸送する許可を与えた。Waymoは先週、サンフランシスコの全域で完全な自律走行を行っていると発表した。市内のほとんどの場所で、Waymo Oneアプリを使えば、誰でも無料でAV車両を呼ぶことができる。同社がアリゾナ州と同様にサンフランシスコで運賃の徴収を開始するには、まだ別の許可が必要である。

Waymoは、中国の吉利汽車集団が所有するハイエンド電気自動車(EV)ブランドZeekrと共同開発した専用のロボタクシーも発表している。一方、別のAV企業であるMotionalは、UberおよびLyftと提携し、来年からいくつかの都市で現代自動車のロボタクシーを配車の車両に加える予定だ。

Zeekrと共同開発したロボタクシー用EV。出典:Waymo

CruiseとWaymoの動きは、様々な産業の黎明期で起こったような、リーダー企業がその他大勢を引き離していく、業界全体の淘汰の始まりかもしれない。

Cruiseの大きな強みは、自動車メーカーの融資部門であるGM Financialから50億ドルの融資枠を受け、事業拡大の資金を調達していることだ。WaymoもまたAlphabetの手厚い支援を受け、同時に外部のプライベートエクイティの資金を継ぎ足し、他のAV企業よりも潤沢な資金を確保してきた。

それでも、両社にはAV技術で儲けられることを証明するプレッシャーがかかっている。その唯一の方法は、迅速に規模を拡大することである。

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