人類学者で『ブルシットジョブ』の著者であるデヴィッドグレーバー、59歳で死去

『ブルシットジョブ』をはじめとするベストセラーの著者である人類学者でアナーキストのデビッド・グレイバー氏が死去した。去年、59歳。

人類学者で『ブルシットジョブ』の著者であるデヴィッドグレーバー、59歳で死去

『ブルシットジョブ』をはじめとするベストセラーの著者である人類学者でアナーキストのデヴィッドグレーバー氏が死去した。去年、59歳。

3日、グレイバーの妻であり、芸術家で作家のニカ・ドゥブロフスキーは、前日にグレイバーがヴェネツィアの病院で死亡したことをツイッターで発表した。死因はまだ明らかにされていない。

官僚主義、政治、経営封建主義についての鋭い文章で知られるグレイバーは、ウォール街を占拠する運動の第一人者であり、死去時にはロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の人類学の教授を務めていた。彼の最後の著書である『すべてのものの夜明け:人類の新しい歴史』(The Dawn of Everything: a New History of Humanity)は、デビッド・ウェングローブとの共著で、2021年秋に出版される予定である。

1961年、ニューヨークで政治的に活発な両親の間に生まれる。父はスペイン内戦で国際旅団と戦い、母は国際婦人服飾労組のメンバーだった。ニューヨーク州立大学パーチェス校とシカゴ大学で人類学を学んだ後、名誉あるフルブライトフェローシップを獲得し、マダガスカルで2年間の人類学的フィールドワークを行った。

2005年、イェール大学は、彼が終身在職権を確保していたであろう1年前に彼の契約を更新しないことを決定した。4500人以上の同僚や学生が彼を支持する請願書に署名したところ、イェール大学は代わりに彼に1年間の有給サバティカルを提供し、彼はそれを受け入れ、LSEに入る前にゴールドスミスで働くためにイギリスに移った。

2011年に出版された『Debt: The First 5,000 Years』は、彼を有名にした。その中でグレイバーは、お金に基づいてすべての社会的関係の背後にある暴力を探り、主権者と消費者の借金を一掃するために呼びかけた。それは批評家の意見を二分したが、ベストセラーとなり、トマ・ピケティからも賞賛された。

グレーバーは2013年に『The Democracy Project』でそれに続いた。歴史、危機、運動、ウォール街を占拠した彼の仕事について綴った。2013年の論文『デタラメな仕事の現象について』(On the Phenomenon of Bullshit Jobs)は、2018年に出版された著書『Bullshit Jobs: A Theory』につながった。ほとんどのホワイトカラーの仕事は無意味であり、技術の進歩により、人々はより多くの仕事をするようになったと主張していた。

ブルシットジョブ:現代の封建主義が生み出す無意味な労働
自動化が進展しても仕事が亡くならないのは、先進国でブルシットジョブ(どうでもいい仕事)が増えているからだ。この無意味な仕事を生み出すのは、サービス業の多層化した人員構成に寄生する「経営封建主義」という思想のせいである。どうでもいい仕事は人類最大の社会問題である。

Photo: "David Graeber"by Internaz is licensed under CC BY-NC-SA 2.0

Read more

OpenAI、法人向け拡大を企図 日本支社開設を発表

OpenAI、法人向け拡大を企図 日本支社開設を発表

OpenAIは東京オフィスで、日本での採用、法人セールス、カスタマーサポートなどを順次開始する予定。日本企業向けに最適化されたGPT-4カスタムモデルの提供を見込む。日本での拠点設立は、政官の積極的な姿勢や法体系が寄与した可能性がある。OpenAIは法人顧客の獲得に注力しており、世界各地で大手企業向けにイベントを開催するなど営業活動を強化。

By 吉田拓史
アドビ、日本語バリアブルフォント「百千鳥」発表  往年のタイポグラフィー技法をデジタルで再現

アドビ、日本語バリアブルフォント「百千鳥」発表 往年のタイポグラフィー技法をデジタルで再現

アドビは4月10日、日本語のバリアブルフォント「百千鳥」を発表した。レトロ調の手書き風フォントで、太さ(ウェイト)の軸に加えて、字幅(ワイズ)の軸を組み込んだ初の日本語バリアブルフォント。近年のレトロブームを汲み、デザイン現場の様々な要望に応えることが期待されている。

By 吉田拓史
新たなスエズ危機に直面する米海軍[英エコノミスト]

新たなスエズ危機に直面する米海軍[英エコノミスト]

世界が繁栄するためには、船が港に到着しなければならない。マラッカ海峡やパナマ運河のような狭い航路を通過するとき、船舶は最も脆弱になる。そのため、スエズ運河への唯一の南側航路である紅海で最近急増している船舶への攻撃は、世界貿易にとって重大な脅威となっている。イランに支援されたイエメンの過激派フーシ派は、表向きはパレスチナ人を支援するために、35カ国以上につながる船舶に向けて100機以上の無人機やミサイルを発射した。彼らのキャンペーンは、黒海から南シナ海まですでに危険にさらされている航行の自由の原則に対する冒涜である。アメリカとその同盟国は、中東での紛争をエスカレートさせることなく、この問題にしっかりと対処しなければならない。 世界のコンテナ輸送量の20%、海上貿易の10%、海上ガスと石油の8~10%が紅海とスエズルートを通過している。数週間の騒乱の後、世界の5大コンテナ船会社のうち4社が紅海とスエズ航路の航海を停止し、BPは石油の出荷を一時停止した。十分な供給があるため、エネルギー価格への影響は軽微である。しかし、コンテナ会社の株価は、投資家が輸送能力の縮小を予想している

By エコノミスト(英国)