Didi、香港上場の交渉開始も難航
Didiが香港上場に向けた非公式な交渉を開始したが難航している。香港での上場には、調査の正式な終了とアプリのオンラインストアへの復帰が不可欠だが、それらは習近平政権の意向に依存している。
中国配車大手Didi Global(滴滴出行)はニューヨーク証券取引所(NYSE)からの撤退に向けて、第2四半期中に香港で新規株式公開(IPO)を行う方向で交渉を進めている。
報道によると、Didiの銀行担当者は、香港証券取引所に正式に上場申請するためのA1フォームを提出する前に、香港証券取引所と予備的な話し合いを行ったという。
市場の状況次第では、北京に本社を置く同社は第2四半期に香港で上場する可能性があると関係者は述べ、提案された上場の財務条件はまだ検討中であると付け加えたという。
Didiは昨年6月、中国の規制当局による差し止め命令を無視して、ニューヨークで44億ドルのIPOを強行したが、規制当局は後にこの物議を醸す上場を「意図的な詐欺行為」と表現。この動きは、Didiに対する一連の報復を引き起こし、スマートフォンアプリをアプリストアから削除させ、同社による顧客データの使用に関する一連のサイバーセキュリティ調査を開始した。
FTが引用したあるDidiの大口投資家によると、香港での上場は今やDidiにとって重要であり、その後、アメリカで上場廃止の手続きを開始し、米国預託証券(ADR)の保有者に香港株との1対1の交換を提案するという。
「これは中国(政府)からの提案であり、もしこれが実現できなければ、彼らは永遠にペナルティボックスの中にいることになる」と、その投資家は語っているという
Didiが抱える2つの大きな課題は、Didiに対する政府の調査が未解決であることと中国のいくつかの都市で事業とドライバーのための適切な許可を得るための問題が続いていることだ。
FTが引用した関係者2人によると、政府をなだめ、政治的地位を向上させるために、Didiは国策投資家を株主として迎え入れようとしているという。複数の国策グループに「求婚」しているが、プロポーズは受け入れられなかったようだ。
香港での上場には、調査の正式な終了とアプリのオンラインストアへの復帰が不可欠であると、IPO候補の審査に携わったことのある香港取引所の元幹部は述べているという。
Didiに対する中央政府の調査では、恐れられている国家安全部を含む7つの機関がDidiの本社に職員を派遣しているが、まだ解決していない。調査開始から6カ月が経過し、調査官はDidiのオフィスを出て報告書を提出し、会社の関係者は神経質に判決を待っているという。
Didiの経営陣に近いある人物は、Didiが北京の政府省庁との間の配車依頼を含む同社の機密データを米国に転送したり、公開したりしていたという中心的な申し立てについて、調査によって実質的な証拠は発見されていないと主張した。
しかし、FTによると、その人物は、北京が同社を見せしめにするために「Didiが間違っていたことをまだ見つけるだろう」と予測している。Didiは、香港での上場を目指すという発表や業績の公表は認められているものの、再びアプリを一般に提供できるようになる時期は見えていない。
習近平政権が「調査の正式な終了」を先延ばしにしてDidiの上場を恒久的に認めない可能性もあるのだろうか。
Didiは、昨年の1-9月期に76億ドルの損失を計上している。同社は、2023年半ばまでに現金と現金同等物を使い果たす勢いである。