EU、スパコンで地球のデジタルツインを作成へ

欧州連合(EU)は地球の「デジタルツイン」の作成を計画している。デスティネーション・アース(DestinE)と呼ばれるこのムーンショット・プロジェクトは、超高解像度のモデリングを活用して、欧州の環境政策の影響を情報提供・実証し、持続可能な開発の新時代を切り開くことを目指して、今後10年間に渡って展開される予定だ。

EU、スパコンで地球のデジタルツインを作成へ

欧州連合(EU)は地球の「デジタルツイン」の作成を計画している。デスティネーション・アース(DestinE)と呼ばれるこのムーンショット・プロジェクトは、超高解像度のモデリングを活用して、欧州の環境政策の影響を情報提供・実証し、持続可能な開発の新時代を切り開くことを目指して、今後10年間に渡って展開される予定だ。

欧州委員会は声明の中で、「DestinEは、地球の物理的資源のデジタルモデリングの可能性を解き放ち、気候変動、水/海洋環境、極地、低温圏などの地球規模の関連現象を解明し、環境への移行を加速させ、大規模な環境悪化や災害の計画を支援します」と述べている。

欧州委員会は、DestinEの多くの注目すべき用途として、次のようなものを挙げている。高精度シミュレーションによる気候、極地、土地利用などの惑星システムの健全性のモニタリング、異常気象のモデリングと予測能力の向上、EUの政策立案と実施の支援、シミュレーション、モデリング、分析、AI、HPCにおける欧州の能力の全般的な強化などである。

欧州委員会によれば、DestinEの「中心」となるのは、統合されたクラウドベースのモデリングおよびシミュレーションプラットフォームである。クラウドプラットフォームのユーザーは、サービス、モデル、シナリオ、シミュレーション、予測、可視化にアクセスでき、さらには独自のアプリケーションを開発し、独自のデータを統合することも可能になる。

DestinEは、欧州委員会のグリーンディールプログラムとデジタル戦略プログラムの傘下にあり、それぞれEUの持続可能な経済を確保し、公正で民主的なデジタル経済におけるグローバルプレーヤーとしてEUを位置づけることを目的としている。これはまた、DestinEをEuroHPC Joint Undertaking (JU)とリンクさせている。これは、欧州連合の32の加盟国からなる協調的なHPCの取り組みで、スーパーコンピューティングへの80億ユーロの投資計画を発表したばかりだ。

DestinEの下でデジタルツインやその他のシミュレーションに電力を供給するのは、もちろん計算量の多い作業になります。DestinEは、EuroHPCを通じ、3つのプリ・エクサスケール・スーパーコンピュータのうちの1つを使用する。フィンランドのCSCがホストするLUMIシステム、バルセロナ・スーパーコンピューティング・センターがホストするMareNostrum 5システム、イタリアのCINECAコンソーシアムがホストするLeonardoシステムだ。これら3つのシステムは、1億2,000万ユーロから1億5,140万ユーロの費用が見込まれており、2020年後半から2021年前半に導入される予定。

これは、欧州委員会が発表した計画と一致しており、2021年から7年から10年かけてDestinEを準備して導入するというものである。昨年11月の最初の利害関係者会議に続き、欧州委員会の共同研究センターは、DestinEのユースケースに関する報告書を作成し(今月予定)、DestinEのデジタルツインの最初のものに関する2つのワークショップを開催している。

Photo by The New York Public Library on Unsplash

Read more

OpenAI、法人向け拡大を企図 日本支社開設を発表

OpenAI、法人向け拡大を企図 日本支社開設を発表

OpenAIは東京オフィスで、日本での採用、法人セールス、カスタマーサポートなどを順次開始する予定。日本企業向けに最適化されたGPT-4カスタムモデルの提供を見込む。日本での拠点設立は、政官の積極的な姿勢や法体系が寄与した可能性がある。OpenAIは法人顧客の獲得に注力しており、世界各地で大手企業向けにイベントを開催するなど営業活動を強化。

By 吉田拓史
アドビ、日本語バリアブルフォント「百千鳥」発表  往年のタイポグラフィー技法をデジタルで再現

アドビ、日本語バリアブルフォント「百千鳥」発表 往年のタイポグラフィー技法をデジタルで再現

アドビは4月10日、日本語のバリアブルフォント「百千鳥」を発表した。レトロ調の手書き風フォントで、太さ(ウェイト)の軸に加えて、字幅(ワイズ)の軸を組み込んだ初の日本語バリアブルフォント。近年のレトロブームを汲み、デザイン現場の様々な要望に応えることが期待されている。

By 吉田拓史