
インドネシアのEV供給網の野望
インドネシアは、中国が圧倒的な優位を築き、欧米が巨額の産業政策で追走するEV供給網をめぐる競争の中で、台風の目となっている。この特集記事ではEV大国化を目論む同国の野心とその政策について詳述している。
インドネシアは、中国が圧倒的な優位を築き、欧米が巨額の産業政策で追走するEV供給網をめぐる競争の中で、台風の目となっている。この特集記事ではEV大国化を目論む同国の野心とその政策について詳述している。
「私たちが欲しいのはEVであって、電池ではない。テスラには、インドネシアでEVを製造してもらいたい」とジョコ・ウィドド大統領(通称ジョコウィ)は8月中旬のブルームバーグによるインタビューで語った。フォード、現代、トヨタやスズキのいずれにも、国内にEVのエコシステムを作って欲しい、とジョコウィ氏は語った。
EVサプライチェーン(供給網)の誘致競争でインドネシアに優位性をもたらした要因は2つある。
1つ目はすでに自動車産業の集積があることだ。首都ジャカルタ東部の集積地帯には水資源、産業用の電力供給、その他のインフラ、大量の労働者と自動車工場を開設するための諸条件がすでにある。テスラのようなEVメーカーが工場を建設した際に熟練労働者の確保や自動車生産に必要な電力・水道・高速道路などのインフラ面のサポートを期待できる。一部のサプライヤーはガソリン車と共通するだろう。
これらの基盤は主に日本企業が耕したものであり、その基盤が後発のEV企業によって享受されることになる。EV勢が自動車企業の基盤を使うのはこれが初めてではない。テスラはトヨタ自動車と米ゼネラル・モーターズの旧合弁工場の土地建物を4,200万ドルと破格の価格で買収し、量産を開始した。リビアン(Rivian)も最初の大量生産要工場については三菱自動車のイリノイ州の工場を安く買っている。