夜間のEV充電は電気供給を壊しかねない:スタンフォード大学の研究結果
スタンフォード大学の新しい研究によると、現在の電気自動車(EV)充電を自宅から職場、夜から昼にシフトすることでコストを削減し、電気系統を助けることができるという。
スタンフォード大学の新しい研究によると、現在の電気自動車(EV)充電を自宅から職場、夜から昼にシフトすることでコストを削減し、電気系統を助けることができるという。EVの所有者の大半は、夕方から夜にかけて自宅で充電している。
スタンフォード大学 工学部土木環境工学科准教授Ram Rajagopalらの研究チームは3月に、さまざまな人口やその他の要因に適用できる充電需要のモデルを作成し、論文を発表している。9月22日にNature Energy誌に掲載された今回の研究では、そのモデルを米国西部全域に適用し、EV所有者の増加によって2035年までにこの地域の電気系統が受けるストレスを検証した。その結果、家庭での夜間充電が引き続き主流であると仮定すると、10年強の間に、EVの急速な普及によってピーク時の電力需要が最大25%増加する可能性があることが判明した。
研究者は、発電と蓄電のための新しい設備にかかる高いコストを抑えるには、ドライバーは職場や公共の充電ステーションでの昼間の充電に移行すべきであり、そうすれば温室効果ガス排出量も削減できるだろうと述べている。特にカリフォルニア州では、8月下旬に2035年からガソリン車と小型トラックの販売を禁止することを決定しており、この発見は地域とその電力会社にとって政策や投資に影響を与えるものである。
カリフォルニア州では、2月にEVの累計販売台数が100万台に達し、自動車と小型トラックの約6%を占めるようになった。同州では、2030年までに500万台のEVを走らせることを目標としている。
カリフォルニア州に人口の約半分が住む米国西部で、走行中の車の50%が電気で動くようになれば、充電の習慣が現在のままなら5.4ギガワット以上のエネルギー貯蔵が必要になる。これは大型原子炉5基分の容量に相当する。自宅ではなく職場で充電するように大きくシフトすれば、EVに必要な蓄電池は4.2ギガワットまで減少する。
現在の時間帯別料金は、食器洗い機や電気自動車の充電など、可能な限り夜間に電気を使うよう消費者に促している。この料金体系は、太陽光発電や風力発電が大量に供給される前、日中、特に夏の午後遅くに需要が供給を上回る恐れがあった時代を反映している。
現在、カリフォルニア州では、主に太陽光発電により、深夜から早朝にかけて電力が余っている。もし、この時間帯にほとんどのEVが充電すれば、安い電力が無駄にならずに利用できる。一方、EVの充電が夜間に集中するようであれば、天然ガスを燃料とする発電機を増設するか、高価な蓄電池を大規模に建設する必要がある。巨大なバッテリーに充電された電気が、次にEVのバッテリーに充電されると、停電による電力ロスが発生する。
地域レベルでは、ある地域の3分の1の家庭がEVを所有しており、その所有者のほとんどが、午後11時や電気料金が下がったときに充電を開始するように設定し続けているとしたら、地域の送電網は不安定になる可能性がある。
電力料金設計のもう一つの問題は、商業・産業界の顧客にピーク時の電力使用量に応じた大きな料金を課していることだ。特に従業員の半数以上がEVを所有している場合、充電器を設置する意欲を失わせる可能性がある。研究チームは、充電インフラの利用可能性に関するいくつかのシナリオと、家庭用の時間帯別料金、商業用の需要料金を比較した。その結果、料金の変更によってグリッドレベルの状況が悪化するものもあれば、改善されるものもあった。しかし、日中の充電を増やし、家庭での充電を減らすような充電インフラの整備シナリオが、最も大きなメリットをもたらすことが判明した。
参考文献
- Powell, S., Cezar, G.V., Min, L. et al. Charging infrastructure access and operation to reduce the grid impacts of deep electric vehicle adoption. Nat Energy (2022). https://doi.org/10.1038/s41560-022-01105-7