Facebookの深刻な若者離れ
Facebookは10年以上前から若者の獲得に苦戦しており、長きにわたる経営課題だったことが漏洩した内部文書で明らかになった。ティーンエイジャーでは利用者数とアクティブ性の双方で長期的に退潮しており、再活性化手段は見つかっていない。
要点
Facebookは10年以上前から若者の獲得に苦戦しており、長きにわたる経営課題だったことが漏洩した内部文書で明らかになった。ティーンエイジャーでは利用者数とアクティブ性の双方で長期的に退潮しており、再活性化手段は見つかっていない。
Facebookは元プロダクトマネジャー、フランシス・ホーゲンは大量のFacebookの内部文書を米証券取引委員会(SEC)に提出し、議会にも公開。ブルームバーグを含む米国の報道機関17社によるコンソーシアムは、議会が受け取った編集済み文書を入手している。
Facebookの主要アプリである米国の10代および若年層などの主要なユーザーグループの成長指標が数年にわたって低下していることが明らかになった、とブルームバーグは結論づけている。
ブルームバーグによると、米国のティーンエイジャーのFacebookでの「滞在時間」は前年比で16%減少し、米国の若年成人のFacebookでの滞在時間も5%減少している。また、ティーンエイジャーの新規登録数も減少している。
若者がFacebookにサインアップするまでに以前よりもずっと時間がかかるようになっているようだ。2000年以前に生まれた人々のほとんどが、19歳か20歳までにFacebookのアカウントを作成していたが、2000年以降に生まれた人々がアカウントを作成するまでおそらく24歳か25歳くらいになっていると推定されている。
ブルームバーグによると、2021年初頭のある社内レポートには、「(若年層の)共有の問題がある。彼らは、日々の瞬間や人生の瞬間を共有するために、他のアプリを選択している」と書かれているという。
ホーゲンがSECに告発した所によると、Facebookは長年にわたり、全体的な成長を示す一方で、主要な人口動態の鈍化を示す詳細情報を除外することで「投資家や広告主に対して主要な指標を誤って伝えてきた」。
「10代のユーザーが2年間で45%減少」の予測
今年の初め、Facebookの研究者が、驚くべき統計を同僚と共有したことをThe Vergeは報じている。
The Vergeによると、米国におけるFacebookアプリの10代のユーザーは、2019年以降13%減少し、今後2年間で45%減少すると予測され、同社にとって最も収益性の高いデイリーユーザーが全体的に減少している。20歳から30歳までの若年層は、同じ期間に4%減少すると予測された。さらに悪いことに、ユーザーが若ければ若いほど、アプリを定期的に利用していないことが判明した。つまり、Facebookは若い世代の支持を急速に失っているということだ。
The Vergeによると、研究者は内部メモで「高齢化問題は現実に起こっている」と書いているという。彼らは、「年齢を重ねるにつれ、Facebookを選ぶ10代の若者がますます減っていく」のであれば、Facebookはすでに予測されているよりもさらに「深刻な」若いユーザーの減少に直面するだろうと予測している。
更に若年層を失う可能性が高い
The Vergeが引用した今年初めの社内発表では、10代の若者がTikTokに費やす時間はInstagramの2〜3倍であり、親友とのコミュニケーションにはSnapchatが好まれると社員が推定している。
今年3月、Facebookのデータサイエンティストチームが行ったFacebookとInstagramの10代・若年層における利用状況の調査によると、Instagramは依然として若者の間で強い人気を誇っているものの、米国、オーストラリア、日本などの主要市場ではエンゲージメントが低下していることがわかった。また、Facebookのユーザー層の年齢は急速に上昇していたとThe Vergeは社内文書を引用している。
「Facebookに対する様々なネガティブイメージ」の
プレゼンテーションによると、「ほとんどの若年層は、Facebookを40代、50代の人たちが利用する場所だと認識している」とのことだ。「若年層はコンテンツをつまらない、誤解を招く、ネガティブなものと認識している。重要なことにたどり着くためには、無関係なコンテンツを通過しなければならないことが多い」「プライバシーへの懸念、健康への影響、関連サービスの認知度の低さなど、Facebookに対してさまざまなネガティブなイメージを抱いている」としていた。
データサイエンティストチームが3月に最高プロダクト責任者(CPO)のクリス・コックスに提出した資料によると、米国では「10代のユーザー獲得数は低く、さらに後退している」という。18歳未満のユーザーのアカウント登録数は、アプリの上位5カ国で前年比26%減となっている。すでにFacebookを利用している10代のユーザーについては、「以前のコホートと比較して、エンゲージメントのレベルが低い、または悪化している」という状況が続いているとのことだ。10代のユーザーが送信したメッセージ数は前年比で16%減少し、20~30代のユーザーが送信したメッセージ数は横ばいだった。
Facebookは社内で、国連が発表した特定の国の人口推計値とユーザーベースを比較している。ある年齢層の月間ユーザー数が、その地域の人口推計値と同じであれば、その地域は完全に飽和していることになる。The Vergeが引用したコックスに提出されたプレゼンテーションでは、「Facebookユーザーの平均年齢は、「時間の経過とともに、平均的な人口の年齢とは不釣り合いに上昇している。この状態が続けば、(Facebookアプリの)平均年齢は上昇し続け、若いユーザーの関心をさらに失う可能性がある」と説明している。
Instagramに暗雲が立ち込めている?
The Vergeが引用した社内文書は、Instagramにもまた暗雲が立ち込めていることを示唆している。
Instagramは、米国、フランス、英国、日本、オーストラリアでは完全に飽和状態になっており、若年層の間では好調だった。しかし、懸念すべき点もあった。10代の若者による投稿は、2020年から13%減少しており「最も懸念される傾向である」と研究者たちは指摘している。さらに、10代の若者がTikTokを利用するようになったことで「利用時間の総量が減っている可能性がある」と付け加えている。
今年初めに発表されたプレゼンテーションでは、10代の若者の7%がInstagramでのいじめを経験したと報告しており、いじめの40%はプライベートメッセージで起きているという。
ウォール・ストリート・ジャーナルが報道した他の内部調査資料によると、10代の若者たちは、Instagramを利用することで社会的な比較の対象となり、さらにはうつ病を経験したと同社に語っている。
Instagramの10代の新規アカウントの61%は、初期設定時にプロフィールを非公開にすることを選択しており、Instagramの従業員は、より多くの若いユーザーがアカウントを非公開にするように「うながす」製品調整を行いたいと考えていると発表した。資料によると、二次的な非公開アカウント「フィンスタ」も、特にInstagramの若いユーザーの間で爆発的な人気を博しており、従業員は若者を引き留める方法としてこの行動を奨励したいと考えていたという。
メタバースにこだわる理由:若者の移住先
現在、10代の若者たちは、FortniteやSaymanの現在の雇用主であるRobloxのような、より没入感のあるソーシャルゲームのプラットフォームにますます集まってきている。このような3Dの世界で自分のアバターを作ることは、自分の外見や周囲の環境を人に判断されることなくオンラインで活動したいと考える若者にとって魅力的だ。
また、従来のソーシャルメディアの多くはパフォーマンスのように感じられることがあるが、このようなバーチャルゲームの世界は楽しいものだ。ちなみに、Facebookはメタバースに焦点を当てた企業名のリブランディングを計画しているが、これは若者に再びアピールしようとする試みである可能性もある。
コメント
Snapchatは「若者に弱い」というFacebookの弱点を的確に突いてきた、恐るべき競争相手だった。Facebookは、InstagramにSnapchatの人気機能を丸パクリさせる作戦でSnapchatの追撃を抑止した。
当時は、Snapchatの挑戦を退けたFacebookがソーシャルメディアに完全に揺るがない牙城を築いたように見えたが、それでもFacebook本体の高齢化という問題はどうしようもないようだ。近年はTikTokが台頭し、さらにメタバースという新しいトレンドによってソーシャルメディアを代替しようとするEpic Gamesのようなゲーム企業との競争も激化している。
ケンブリッジ・アナリティカ事件以降無数のスキャンダルに身を焼かれているFacebookが、ビッグテックの一角からこぼれ落ちるシナリオは十分ありうる話だ。ビッグテックはゲーミングビジネスでは概ね失敗している。トレンドの変化は巨人ですらもいとも簡単に退場させうることをMetaへの社名変更は示唆しているだろうか。
クリエイターをサポート
運営者の吉田は2年間無給、現在も月8万円の役員報酬のみ。