暗号通貨Libraの通貨のためのデジタルウォレットNoviの開発が進む中、Facebookの研究者はブロックチェーンベースの決済システムが、クレカネットワークに匹敵する性能を発揮したと主張する論文を発表した。実証実験が進むデジタル人民元との開発競争がさらに激化しているように見える。

FacebookのNovi部門の科学者が共著した論文では、FastPayと呼ばれる決済システムを提案している。このシステムは、暗号通貨の決済や不換通貨(フィアット)でのリテール決済をサポートするインフラとして使用できると彼らは主張している。実験では、チームは20もの異なる決済機関との間で、1秒間に8万件以上のトランザクションを達成することに成功した。ピーク時には 16 万 トランザクション/秒を観測した。大陸間での支払い確認の待ち時間が200ミリ秒未満である。

またFastpayは比較的低コストで実装が可能なようだ。論文によると、FastPayのテスト実装を Amazon Web Services上に構築するには、3人のエンジニアが約2.5 ヶ月の作業を要し、サーバーにはIntel Xeon Platinum 8175 の48個の物理コアと384GBのメモリを備えた96個の仮想プロセッサが搭載されていた。実験では、FastPay は、月に4,000ドル未満のコモディティコンピュータで実行しながら、48コアで150 万件のトランザクションの総負荷(Visa の決済ネットワークのピークトランザクションレートの約7倍)の下で、1秒あたり最大16万件のトランザクションをサポートしたと主張している。レイテンシーのテストでは、FastPayは転送注文と確認注文の両方でパフォーマンスを発揮したと論文は記述している。

これらは、FastPayが商品やサービスを迅速かつ対面で受け取る必要がある店頭での支払いに適していることを意味している。ブロックチェーンベースのシステムで、クレジットカードやQRコード決済と同様のパフォーマンスでオフライン決済を実行可能なことを示している。詳細は明らかにされていないが、中国のデジタル人民元もまた、深センなどの都市でオフライン決済を成功させたことを報告している。論文はデジタル人民元に言及していないが、同社は主要な競争相手として意識しているはずだ。

ブロックチェーン技術は、個人のウォレットやプライベートトランザクションのようなアプリケーションを可能にすることを約束しているが、そのオープンで分散型の性質は、高いコストとスケーラビリティの欠如を伴ってきた。国際決済銀行は2017年の論文で、決済、清算、決済インフラにおける分散型台帳の利用について論じており、ブロックチェーンを採用する上での大きな障壁の1つとして「決済の最終性(ファイナリティ)に関連する曖昧さ」を挙げている。

研究者は、FastPay は、リテールカードネットワークのピーク時の量とリアルタイムグロス決済システム(Real-time gross settlement systems RTGS)に匹敵する容量を提供しながら、物理的な店頭決済に適した遅延確認をサポートしていると主張している。「FastPay は、ネット決済のカウンターパーティーリスクと信用リスクを排除し、中間銀行とその間の複雑な金融契約がこれらのリスクを吸収する必要をなくす」と共著者は書いている。

研究者はテストがベストケースのパフォーマンスであることを認めている。Novi部門は透明性の観点から、FastPayシステムの実装、サポートスクリプト、測定データをオープンソース化した。

研究者たちは、「FastPay は、合理的な完全性保証と十分なプログラミング性を備えた、あらゆる暗号通貨のサイドチェーンとして使用することができる」と書いている。「FastPay のパフォーマンスと堅牢性は、最先端の技術を超えており、中央集権的なソリューションと完全なコンセンサスの両方から脱却して、事前に資金を調達したリテールペイメントを管理することには大きなメリットがあることを検証している」。

参考文献

  1. Mathieu Baudet et al. FastPay: High-Performance Byzantine Fault Tolerant Settlement. AFT '20: Proceedings of the 2nd ACM Conference on Advances in Financial Technologies (2020).

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