書評『Founders at Work 33のスタートアップストーリー』:テック起業で勝負したいなら必読の冒険譚

このブログは『Founders at Work 33のスタートアップストーリー』の書評です。本書は、Yコンビネーターの創業パートナーであるLivingstonが、テクノロジー企業の創業者33人にインタビューをする内容です。

書評『Founders at Work 33のスタートアップストーリー』:テック起業で勝負したいなら必読の冒険譚

このブログは『Founders at Work 33のスタートアップストーリー』(Jessica Livingston)の書評です。

本書は、Yコンビネーターの創業パートナーであるLivingstonが、テクノロジー企業の創業者33人にインタビューをする内容です。内容は基本的にテクニカルではなく、テック企業の創業とそこから企業を成長させるまでの努力についてのものです。スタートアップ業界はドッグイヤーと言われ、本書は2011年の出版ではありますが、さまざまな人が本書から学び取れることがあると、僕は思いました。

PayPalの共同創業者であるMax Levchinは、大学卒業後すぐに、最終的にPayPalになった会社を(Peter Thielと)共同設立しました。 Levchinは、PayPalの不正防止に特に貢献し、コンピュータを人間が操作しているか確認するテスト「CAPTCHA」の最初の商用実装の1つである「Gausebeck-Levchinテスト」の共同作成者でもあります。

Levchinはペイパルの最初期について、最初は、オンライン決済を行おうとはしていなかった、と語っています。1998年に、LevchinとPeter Thielは、ユーザーがPDA端末を「デジタルウォレット」として機能させるために、ユーザーがPalmPilotやその他のPDAデバイスに暗号化されたデータを保存できるセキュリティ会社Fieldlinkを設立しました。彼らは試行錯誤の末、端末をデジタルウォレットにするのではなく、サーバ側にデジタルウォレットを保持できる仕組みを採用することにビジネス上の可能性を見出します。

FieldlinkからConfiinityに名前を変更したチームは1999年に、Elon Muskのオンライン銀行 X.com と合併します。合併後、Muskはサービスの基盤システムのOSをMicrosoftのWindowsに移行しようとしますが、Linuxを採用していたLevchinと激しく対立します。Levchinは、本書では、この時の状況を控えめな言葉で説明していますが、実際には、Levchinは、Elon Muskが新婚旅行で豪州に行っている間に、取締役会で彼を追放する決議をとり、Linuxを死守したのです。(ここらへんはGoogleに聞いてみると面白いかも知れません)。

会社は、eBayにパワーユーザーが存在することを知り、彼らを顧客開拓先として最優先しました。成長を遂げた会社は「友人であり敵である」eBayから買収されました。この事業売却で資金を得たPayPal創業者は次の創業でも大きな成功を収め、PayPalマフィアとして知られています。

Evan Williamsは大学中退後、オライリーメディアに入社。のちにプログラマーになり、Bloggerを開発し、2003年にGoogleに売却します。06年に、ジャック・ドーシーやビズ・ストーンとTwitterを立ち上げ、08年からはCEOを務めました。12年にMediumを立ち上げています。

本書ではBloggerの運営会社Pyraの創業と売却について語っています。「Pyra」とも呼ばれる同社の最初の製品は、プロジェクトマネージャー、事業マネージャー、および予定リストを結合するWebアプリケーションでした。 1999年、まだベータ版でしたが、Pyraの基本は社内ツールに再利用され、その後、ブロギングツールのBloggerになりました。 このサービスは1999年8月に一般公開されました。バブルの崩壊のせいで資金繰りに窮し、従業員は無給で会社のために働きましたが、状況は改善しませんでした。様々な噂が存在しますが、共同設立者であるWilliamsは、本書では、ビジネスや製品の方針で共同創業者らとの一致が見られず、自分以外の会社の全従業員を解雇した、と説明しています。Williamsは、Trellixによる投資を確保できるようになるまで、実質的に単独で会社を経営しました。最終的には、広告をサポートするBlogspotと有料型のBlogger Proが登場しました。

Hotmailの創業者Sabeer Bhatiaは、ベンチャーキャピタリストに真のアイデアを伝えるかどうかをどのように決定したかについて説明しています。「ベンチャーキャピタリストが間違った理由で私たちを拒否しないというリトマス試験に合格し、『OK、あなたが若いことを気にしない、あなたが管理経験を持たないことを気にしません』」となったときに初めてアイデアを共有することに決めていたといいます。Bhatiaは、とある投資家から受けた痛烈な打撃を数度に渡り受けたことを説明しています。それが誰か、どんな状況か、どうしてそのようなことがおきるのか、は本書を読んで確認してみてください。

『Founders at Work 33のスタートアップストーリー』(Jessica Livingston)アスキー

Image via TechCrunch(CC BY 2.0)

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アドビ、日本語バリアブルフォント「百千鳥」発表  往年のタイポグラフィー技法をデジタルで再現

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アドビは4月10日、日本語のバリアブルフォント「百千鳥」を発表した。レトロ調の手書き風フォントで、太さ(ウェイト)の軸に加えて、字幅(ワイズ)の軸を組み込んだ初の日本語バリアブルフォント。近年のレトロブームを汲み、デザイン現場の様々な要望に応えることが期待されている。

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