人は「無料」に致命的に弱い 行動経済学の実験が示した事実

人々は無料商品に対しては通常時とは劇的に異なる反応を示し、正しい判断力を持ちえません。彼らは必ずしも最も費用対効果のいい選択肢を選ばないのです。

人は「無料」に致命的に弱い  行動経済学の実験が示した事実

人々は無料商品に対しては通常時とは劇的に異なる反応を示し、正しい判断力を持ちえません。彼らは必ずしも最も費用対効果のいい選択肢を選ばないのです。

Shampan'er と Arielyの研究は、「タダ」がどれだけ人の意思決定に対しインパクトがあるかを示しています。

Shampan'erらはゼロへの反応を測定するために、好ましいと思われる選択肢を放棄しなければならない場合でも、人々が無料の製品を選択するかを調べればいいと考えました。それで、彼らはチョコレートの値付けとその反応に関する実験を設定したのです。彼らは、費用対効果に基づいた合理的なモデルを作り、実験の結果とモデルが選ぶ結果を比べることで、我々の意思決定についての洞察を得ようとしました。

Shampan'erらはチョコレートの販売でそれを試しました。彼らは「高級チョコ」と「低級チョコ」の二種類を販売し、「無料」がどのような影響を及ぼすかを観察したのです。最初に高級チョコを15セント、普通のチョコを14セントで販売したところ、高級チョコの方が販売数が大きく勝りました。両方のチョコの値段を1セントずつ下げていっても、結果はかわらず高級チョコの方が売れます。だが、最終的に高級チョコが1セントになり、低級チョコが無料になると、低級チョコが圧倒的に人気になりました。どちらも等しく1セントずつ値段を下げたのだから、客が費用対効果を基準に商品を選定していたのなら、1セントの高級チョコのほうが人気になるはずでした。

彼らは、同様の枠組みを採用した一連の実験で、人は1つが無料である2つの製品の選択肢に直面した場合、価格がゼロの場合は製品の購入コストが低くなるだけでなく、本源的価値が上がることを意味するかのように、無料の製品に過剰に反応することを実証しました。

Arielyは、アイスクリームチェーン「Ben & Jerry's」が無料のアイスクリームコーンを提供した際に長蛇の列ができたことを、しばしばに出しています。列に並ぶ時間が20分とすると、アイスクリームコーンの価格は1.45ドルに過ぎないため、1.45ドルを儲けたとしても20分を割くことには釣り合いません。米政府は、あなたの余暇は1時間あたり12.90ドルの価値があると算定しています。無料のアイスクリームコーンを並んで買うことが、好ましくない選択肢であることは明らかです。人々は20分をもっと価値の高いものごとに振り分ければ、多くのリターンを得られた可能性があります。

最大利益を生んだはずの選択肢と、それ以外の選択肢の差のことを、機会費用と呼びます。無料のアイスクリームコーンに並ぶ人々から分かるのは、無料を提示されたとき、人は機会費用のようなものへの感覚に蓋をされてしまうことです。

参考文献

Kristina Shampan’er. Dan Ariely. Zero as a special price: The true value of free products. 2007.

US Department of Transportation. Revised Departmental Guidance on Valuation of Travel Time in Economic Analysis. 2011.

ダン・アリエリー. 予想どおりに不合理: 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」. 早川書房. 2010.

Photo by daria lisovtsova on Unsplash

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