FTXはエンロンを超えるか 「米史上最大の金融詐欺」との声も

暗号資産取引所FTXの一連の騒動は、巨額の不正会計・取引で知られるエンロン事件を凌ぐ「米国史上最大の金融詐欺」になるかもしれない。一時は時代の寵児ともてはやされた創業者のサム・バンクマンフリードには数十億ドルの顧客資金を流用した疑いがかかる。

FTXはエンロンを超えるか 「米史上最大の金融詐欺」との声も
2021年5月11日(火)、中国・香港にて、FTXの共同創業者兼最高経営責任者のサム・バンクマンフリード。

暗号資産取引所FTXの一連の騒動は、巨額の不正会計・取引で知られるエンロン事件を凌ぐ「米国史上最大の金融詐欺」になるかもしれない。一時は時代の寵児ともてはやされた創業者のサム・バンクマンフリードには数十億ドルの顧客資金を流用した疑いがかかる。


FTXの最高経営責任者(CEO)、サム・バンクマンフリードが13日にバハマで現地警察によって逮捕された。この逮捕は米連邦当局の起訴を受けてのものだ。

米検察は、バンクマンフリードが米裁判所で裁判を受けられるよう、身柄を引き受ける必要がある。バハマは米国と犯罪人引渡条約を結んでいるが、バンクマンフリードが異議を唱えれば、その手続きは数週間から数カ月に及ぶ可能性がある。

米国ニューヨーク州南地区連邦検事局による13ページの訴状では、顧客や貸し手に対する詐欺、選挙法違反などの8つの訴因に言及している。ニューヨーク州南部地区連邦検事のダミアン・ウィリアムズは記者会見で、FTXに関する捜査は「非常に迅速に進んでいる」と述べた。彼は、同社の破綻を「アメリカ史上最大の金融詐欺の一つ」と呼んだ。

同検事局の主な主張は以下の通り。

  1. 少なくとも2019年5月から2022年11月にかけて、バンクマンフリードは、FTXの株式投資家を詐取するスキームに関与
  2. 顧客資産を流用し、非公開のベンチャー投資、贅沢な不動産購入、多額の政治献金に充てていた
  3. バンクマンフリードは、FTXには顧客資産を保護するための一流の高度な自動リスク対策があり、資産は安全であり、アラメダは特別な特権を持たない単なるプラットフォームの顧客であると投資家や投資家候補に伝えた。だが、これらの発言は虚偽のものだ
  4. 2022年5月に暗号資産の価格が急落すると、アラメダの貸し手は数十億ドルの融資の返済を要求してきた。アラメダはこの時点ですでに、FTXの顧客資産数十億ドルを奪っていたにもかかわらず、義務を果たせなくなった。バンクマンフリードは、FTXにアラメダにさらに数十億ドルの顧客資産を流用するよう指示
  5. アラメダとFTXが顧客を救済できないことが次第に明らかになっても、バンクマンフリードはFTXの顧客資金を不正に流用しつづけた。彼は2022年の夏まで、FTXの顧客資金をさらに数億ドルをアラメダに誘導し、それを追加のベンチャー投資や自身や他のFTX幹部への「融資」に充てていた

FTXがアラメダに「無制限の信用枠」という特権を与えていたが、ロイターがその詳細を報じている。FTXは、信用取引を行う顧客が借り入れた資金を一定以上失った際、顧客の資産を自動的に売却する機能を持っていた。この機能はFTXのリスク管理力の高さを示す証左の一つと喧伝されていた。しかし、FTXのチーフエンジニアのニシャド・シンは、バンクマンフリードの指示の下、2020年中頃、この機能からアラメダを除外したという。

ロイターがコードを確認した所によると、この変更を説明する部分には「清算しないように特に注意してください」とコメントが付与されていた。この除外により、アラメダはFTXから、その融資を担保する証拠金の多寡に関係なく、資金を借り続けることができるようになった。

2022年に暗号通貨市場全体が値下がりすると、アラメダの貸し手は返済を求め始め、すでに数十億ドルを流用し、さらに市場でも失っていたとされるバンクマンフリードは、その場を凌ぐためにさらに多くの資金をアラメダに渡し始めたとSECは述べている。

2020年3月から2022年9月の間に、バンクマンフリードはアラメダから10億ドル以上の融資を実行し、その一部は自分自身に融資された、とSECは主張している。シンとゲイリー・ワンもそれぞれ数億ドルを借り入れ、これらの融資は「文書化が不十分で、時には全く文書化されていなかった」という。

SECは、顧客資金の流用について、非常に稚拙な慣行を採用していたことも明らかにしている。FTXは、顧客に対し、アラメダが管理する銀行口座に不換紙幣(米ドル等)を入金するよう指示していた。FTXの顧客資金とアラメダの自己資金との間の区別をつける考えが、バンクマンフリードには最初からなかったのかもしれない。

証券取引委員会(SEC)のゲーリー・ゲンスラー委員長は「バンクマンフリードは、暗号通貨業界で最も安全な建物の1つであると投資家に言いながら、欺瞞の基盤の上に『〔トランプカードで作った家のような〕不安定な建物』を建てた」と述べている。

バンクマンフリードはその間に、ソフトバンクグループ、テマセク、タイガー・グローバル・マネジメント、インサイト・パートナーズといったベンチャーキャピタル投資家から18億ドル以上を調達していた。破産弁護士を雇ったことで、FTXに出資していたすべての人たちの出資比率は事実上ゼロになった。

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By 吉田拓史
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