FTX問題のまとめ

経営破綻したFTXを巡る状況は刻一刻と変化し、ニュースの雨嵐を降らせている。この記事ではFTX問題のポイントを整理する。この「前回までのあらすじ」を整理してから、未曾有のヒューマン・ドラマの続きを観ることをおすすめしたい。

FTX問題のまとめ
2022年7月19日、米国ニューヨークで開催されたBloomberg Crypto Summitで講演するFTX Cryptocurrency Derivatives Exchangeの創設者兼最高経営責任者のサム・バンクマンフリード。このときはまだ「暗号資産界のJ.P.モルガン」と呼ばれていた。Jeenah Moon/Bloomberg. 

経営破綻したFTXを巡る状況は刻一刻と変化し、ニュースの雨嵐を降らせている。この記事ではFTX問題のポイントを整理する。この「前回までのあらすじ」を整理してから、未曾有のヒューマン・ドラマの続きを観ることをおすすめしたい。


1. FTXは引き出しに応じるのに新たに80億ドル以上必要

11月初旬、FTXの姉妹会社で、FTX CEOのサム・バンクマンフリードが個人保有する投資会社アラメダ・リサーチのバランスシートの欠損疑惑が指摘された。これによって、FTXの財務状況に猜疑の目が向けられ、取り付け騒ぎが起き、FTXはそれに応えられる資産をまったくもっていないことが判明した。

バンクマンフリードの破産申請寸前のツイートによると、FTXは6日におよそ50億ドル相当の引き出し依頼を受け、7日に顧客の引き出しを一時停止した。10日の段階で、支払いに応じるには新たに80億ドルが必要だったと取り沙汰されている。

2. FTXは危機を回避するための流動性を持っていなかった

FTXは、金曜日の破産申請の前日、90億ドルの負債に対してわずか9億ドルの流動資産を保有するのみだったと、フィナンシャル・タイムズ(FT)は12日に、同紙が確認した文書を引用して報じた。FTが取得したスプレッドシートによると、記録された資産のほとんどは、流動性の低いベンチャーキャピタル投資か、広く取引されていない暗号通貨だという。

また、サム・バンクマンフリードは金曜日の午後まで、4億7,200万ドル相当の米スマホ証券取引所ロビンフッドの株を1株約9ドルで売却しようとしていたと、FTは交渉に関わった人物の話を引用して報じた。

この報道には、バンクマンフリードが60億ドルから100億ドルの資金調達を目指していたことも記されており、これには、後にFTX Internationalの普通株式10%に転換される転換社債が120億ドルから150億ドル分発行する道を探ったことも示されている。

3. 顧客資産の流用疑惑、使途不明が10億ドル以上

バンクマンフリードは、FTXから同氏が過半数株主である投資会社アラメダ・リサーチに、100億ドルの顧客資金を密かに移したとロイターが報じた

バンクマンフリードは、今週開かれた投資家会議で、アラメダはFTXに約100億ドルの借りがあると述べたと、WSJが引用した関係者は語った。FTXは、顧客が取引目的で取引所に預けた資金を使ってアラメダに融資したが、バンクマンフリードはこの決定を判断ミスだったと述べたと、関係者の1人は述べたという。

FTXの顧客資産は全部で160億ドルだったため、FTXは顧客資金の半分以上を姉妹会社のアラメダに貸し付けていたと、この関係者は述べている。

流用した資金の一部がその後所在不明となった。ロイターが取材した関係者は、不明になっているのは約17億ドルとし、別の筋は10億〜20億ドルとしている。

4. 幹部は顧客資金流用を関知か

アラメダの最高経営責任者とFTXの幹部は、FTXがアラメダの負債を補填するために顧客の資金を貸したことを知っていたと、ウォール・ストリート・ジャーナルは述べている。

先週水曜日(香港時間)遅くに行われたアラメダの従業員とのビデオ会議で、アラメダCEOのキャロライン・エリソンは、彼女とバンクマンフリード、そして他の2人のFTX幹部、ニシャッド・シンとゲリー・ワンは、アラメダに顧客資金を送るという決定を認識していた、と述べたという。シンはFTXのエンジニアリング・ディレクターで、元Facebookの社員。Googleに勤務していたワンはFTXの最高技術責任者で、バンクマンフリードとともに取引所を共同設立した。

アラメダは、暗号通貨ヘッジファンドThree Arrows Capitalが6月に崩壊し、Voyager Digitalなどの暗号通貨ブローカーに損失を生じさせた後、貸し手からの返済請求の嵐に直面した。バンクマンフリードは、これをFTXの顧客資金によって補填した疑いがかかっている。

5. リスクの高い投機が春以降の暗号通貨市場の崩壊によって罰せられたか

アラメダの活動を追跡するためにブロックチェーンデータを使用したアナリストによると、最近、同社は「イールドファーミング」、つまり金利のような報酬を支払う暗号通貨への投資で最大のプレーヤーの1つになっている。ブロックチェーン分析会社ナンセンによると、アラメダが管理するある暗号通貨ウォレットは、2020年以降、5億5,000万ドル以上の取引利益を生み出しているとのことだ。

イールドファーミングは、コイン価格が上昇、あるいは少なくとも横ばいであることを想定した戦略で、ボラティリティの高い暗号通貨市場で取るべき戦略ではなかったようだ。春のTerraUSDの破綻によって暗号通貨価格は下落の一途をたどったことで、レバレッジのかかった取引を好むアラメダが深いダメージを負った可能性がある。

6. 破産申請直後に暗号資産を盗まれる

破産手続き中のFTXのウォレットから約6億ドル相当の暗号通貨が盗まれた。FTXはインターネット接続していない「コールドウォレット」に暗号通貨を移したという。チェーンのデータによると、様々なトークンがFTXの公式ウォレットから外部に移され、1inchなどの分散型取引所に移動。盗んだコインの洗浄が行われている形跡が報告されている。

7. FTXの新CEOはエンロン解体を監督した人物

弁護士のジョン・J・レイIIIはFTX Trading Ltd.および多数の関連企業の最高経営責任者になったことが、裁判所文書で明らかにされている。再建の専門家であるレイは、エンロン社の清算と、その会計スキャンダルに伴う多額の和解を監督していた。

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OpenAI、法人向け拡大を企図 日本支社開設を発表

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OpenAIは東京オフィスで、日本での採用、法人セールス、カスタマーサポートなどを順次開始する予定。日本企業向けに最適化されたGPT-4カスタムモデルの提供を見込む。日本での拠点設立は、政官の積極的な姿勢や法体系が寄与した可能性がある。OpenAIは法人顧客の獲得に注力しており、世界各地で大手企業向けにイベントを開催するなど営業活動を強化。

By 吉田拓史
アドビ、日本語バリアブルフォント「百千鳥」発表  往年のタイポグラフィー技法をデジタルで再現

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By 吉田拓史