Googleが編み出した反トラスト法違反取り締まり回避策
Googleは反トラスト法違反をめぐって米欧当局に譲歩案を提案しているようだ。このGoogleの提案に関する報道は米欧当局の出方を知るための観測気球なのかもしれない。
Googleは反トラスト法違反をめぐって米欧当局に譲歩案を提案しているようだ。このGoogleの提案に関する報道は米欧当局の出方を知るための観測気球なのかもしれない。
Googleは、司法省から予想される2度目の反トラスト法違反訴訟を回避するため、広告技術事業の一部を親会社Alphabet傘下の別会社に分割することを申し出たと、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が先週金曜日に報じた。
WSJによると、Googleは、ウェブサイトやアプリに広告をオークション形式で掲載する事業の一部を、Alphabet傘下の別会社に分割することを提案しているという。
司法省は、Googleがデジタル広告のブローカーとオークションの両方の役割を悪用して、ライバルを犠牲にして自らのビジネスを有利に進めているという疑惑について、長期にわたって調査を続けている。同省は、Googleの広告技術に関する慣行が反競争的であると主張する訴訟を準備しており、早ければ今年の夏にも提訴する可能性があるという。
約2年前に司法省がGoogleに対して、同社がオンライン検索における支配的地位を維持するために反競争的な戦術を用いたと主張する訴訟を起こした。Googleはこの疑惑を否定しており、裁判は現在も進行中である。
司法省、EU、英国による調査に加え、Googleは、同社が広告業界の競合他社や出版社に損害を与える独占的な経営を行っていると主張するケン・パクストン・テキサス州司法長官を中心とする米国諸州が提起した公判に備えている。
パクストン氏の訴訟だけ他と様子が違う。彼はトランプ氏支持と非常に近いことで知られる。2020年の大統領選後、パクストン氏はテキサス州司法長官として激戦州4州の選挙結果を無効と訴え(最高裁が棄却)、2021年1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件の直前に開催された集会にも参加していた人物である。パクストン氏は職権乱用に関する連邦捜査局(FBI)の捜査を受けたり、2015年に起訴された証券詐欺疑惑に直面したりしたこともある人物だ。
Googleは、パクストン氏の訴えの棄却申し立てに対する裁判官の決定を待っているところだが、この訴えは「不正確なものばかりで、法的なメリットに欠ける」と反論している。
また、共和党のマイク・リー上院議員(ユタ州選出)率いる超党派の議員団は、5月に「デジタル広告における競争と透明性法案(the Competition and Transparency in Digital Advertising Act)」を提出している。この法案は、デジタル広告の収益が200億ドル以上の企業(基本的にはGoogleとMetaだ)がデジタル広告バリューチェーンの複数の部分を所有することを禁ずるものだ。
この法案が成立すると、Googleは、買い手か売り手か、あるいは両者の間で広告交換を行うかのいずれかを選択しなければならなくなる。Googleは現在、3つの部分すべてを所有しており、「市場を不当に操作するためにその力を使用している」という非難を受けている。
Googleが行ったとされる分割提案はこの「デジタル広告における競争と透明性法案」への整合性を意図している側面があるかもしれない。
欧州でもYou Tube広告取引のオープン化を提案
WSJの報道は、Googleの欧州での規制当局に対する提案にも光を当てている。Googleは、同社の広告部門を調査している欧州連合(EU) に対して、YouTubeに関連する反競争的行為の疑惑を解決するための申し出を行ったと、この問題に詳しい一部の関係者の談話をWSJは紹介した。
その申し出の一環として、Googleは競合他社が動画サービス上で直接広告の販売を仲介することを認めることだという。現在はGoogleのプラットフォーム以外を通じて、広告の売買を行うことはできない。
欧州議会は先週火曜日、約2年にわたる法的論争の末、デジタル市場法(DMA)とデジタルサービス法(DSA)を可決した。この2つの法律が承認されたことで、この措置は欧州理事会に移され、可決されることになる。今後数カ月で承認されると予想されるが、DMAとDSAはEU諸国で実施され、実行に移されることになる。なお、どちらの法律も、早くても2024年1月1日までは施行されない。
Googleの申し出は、予定されるこの2つの法律の施行を勘案したものと考えられる。