コロナワクチンを三度打てば長い間次のブースター接種が不要になるかもしれない
【ニューヨーク・タイムズ】最近の一連の研究では、ブースター接種はコロナウイルスの変異体に対して、免疫系のいくつかの部分が持続的かつ強力な反応を示すことが示唆されている。

【ニューヨーク・タイムズ、著者:Apoorva Mandavilli】世界中の人々がコロナウイルスとの共存を考えている中、ひとつの疑問が浮かび上がってきた。どれくらいの期間で再接種が必要になるのか?
新しい研究によれば、何ヶ月も、そしておそらく何年も必要ないという。
コロナウイルス感染症のワクチンを3回接種するだけで、あるいは2回接種するだけで、ほとんどの人を重篤な病気や死亡から長期間にわたって守ることができることが示唆されている。
ペンシルバニア大学の免疫学研究所の所長であるジョン・ウェリーは、「追加接種の回数が減少していることがわかり始めている」と述べている。「65歳以上の人や病気のリスクが高い人には4回目の接種が有効かもしれないが、ほとんどの人には必要ないかもしれない」と付け加えている。
また、バイデン政権の感染症対策トップのアンソニー・ファウチ博士をはじめとする米保健当局者も、秋までに4回目の接種を推奨する可能性は低いと述べている。
オミクロン変異株は、コロナワクチンを2回接種した後に作られる抗体(ウイルスが細胞に感染するのを防ぐ免疫分子)をかわすことができる。しかし、ファイザーとバイオンテックやモデルナのmRNAワクチンを3回目に接種すると、体内ではるかに多様な抗体が作られるようになり、ウイルスのどの亜種も逃れることができなくなるというのが最新の研究結果である。
このようにして作られた多様な抗体のレパートリーは、元のウイルスとは大きく異なる新たな変異株から人々を守ることができるはずだと、この研究は示唆している。
シアトルにあるフレッド・ハッチンソンがん研究センターの感染症内科医で免疫学者のジュリー・マッケラス博士は、「もし人々がオミクロンのような別の変異株にさらされた場合、それに対抗するための追加の弾薬を手に入れたことになる」と語っている。
さらに、この1ヶ月間に一流誌に掲載された少なくとも4つの研究によると、免疫システムの他の部分が、数ヶ月どころか数年にわたってウイルスを記憶し、破壊することができるという。
ファイザー・バイオンテック、モデルナ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ノババックスの4ブランドのCOVIDワクチンによる免疫後に産生されるT細胞と呼ばれる特殊な免疫細胞は、他の亜種と比較してオミクロンに対して約80%の力を発揮することが研究で明らかになった。研究者らによると、オミクロンの変異がこれまでの変異とは大きく異なることから、今後発生する変異に対しても、T細胞が同様に強力な攻撃を行う可能性が高いという。
これは、2003年にアジアで流行して800人近くの死者を出したSARSコロナウイルスについて科学者たちが発見した結果と一致する。このウイルスに感染した人のT細胞は、17年以上も生き続けているという。専門家によると、これまでの証拠から、新型コロナウイルスの免疫細胞(記憶細胞と呼ばれることもある)も、非常にゆっくりと減少していく可能性があるという。
ケープタウン大学の免疫学者であるウェンディ・バーガースは、「記憶反応は何年も続く可能性がある。T細胞の反応は非常に長持ちする可能性がある」と述べている。
今回のパンデミックでは、ウイルスに対する最初の防御手段である抗体に注目が集まっている。これは、抗体分子が比較的研究しやすいことが理由の1つだ。一滴の血液から測定することができる。
一方、免疫細胞を分析するには、何ミリリットルもの血液、熟練した技術、特殊な機器、そして多くの時間が必要だ。バーガースは「桁違いに時間がかかり、手間もかかる」と言う。
これらの細胞を研究できる研究室は少なく、その結果、抗体の研究に比べて何週間も遅れている。そのためか、科学者たちは免疫システムの他の部分の重要性を見落としがちであると専門家たちは言う。
ボストンのベス・イスラエル・ディーコネス・メディカルセンターのウイルス専門家で、T細胞の研究を主導したダン・バルーシュ博士は、「ほとんどの人は、T細胞が何であるかさえ知らないのだ」。
「基本的には、T細胞は多くの人が評価している以上に重要であると言える」とバルーシュは言う。