GPT-4の一部データが秘匿され、他社の追随が懸念される

話題沸騰のGPT-4の「論文」がモデルに関するデータを公開せず、批判が湧き上がっている。オープン性はAIの安全性と技術革新の点で社会的意義があったと考えられるが、他社が追随すればそれらは失われるだろう。

GPT-4の一部データが秘匿され、他社の追随が懸念される
via OpenAI.

話題沸騰のGPT-4の「論文」がモデルに関するデータを公開せず、批判が湧き上がっている。オープン性はAIの安全性と技術革新の点で社会的意義があったと考えられるが、他社が追随すればそれらは失われるだろう。


OpenAIが14日、大規模言語モデル(LLM)のGPT-4を公開して以来、付属の「テクニカルレポート」に対してネット上で批判が相次いでいる。

OpenAIのGPT-4研究論文は、90ページを超える長さでありながら、検証可能な詳細やベンチマークを提供していないとして批判を受けている。問題は、結果を再現する方法を提供せずに、OpenAIが科学研究を装っていることだ。

Facebook AI研究所ディレクターであるヤン・ルクンの研究室出身の AI研究者で、AIスタートアップLightning AIのCEOである、William Falconが米テクノロジー誌Venture Beatのインタビューで語ったところによると、ChatGPTとDALL-Eには検証用のコードがあり、GPT-4とは異なり、オープンソース化された技術に基づいていた。しかし、GPT-4にはOpenAIが共有しない「秘密の成分」があり、それが混乱と批判を引き起こしている。

クローズドソースモデルは、研究者がモデルの潜在的に危険な結果を特定し、対処することを困難にする可能性がある。OpenAIが作った前例がGoogleやMeta、NVIDIAにも伝播する恐れがある。

Falconによると、Metaは最もオープンな会社で、Googleはプライベートなモデルを持っているが、常に再現可能な論文を書いているという。再現性、透明性といったアカデミアのプリンシプルを守らない前例が、アカデミアのバックグラウンドを持たない新興企業に模倣されると危険だ、とFalconは主張している。

Falcon はOpenAIがモデルの情報を隠す理由について、新しいものを発表してもすぐさまコピーされてしまうという熾烈な競争環境を指摘している。「Stable Diffusion(のような画像生成モデル)は、何年も前にOpenAIによって発表されていた。再現するのに数年かかったが、Stability AIによってオープンソースで行われた。その後ChatGPTが出てきて、まだ数ヶ月しか経っていないが、すでにかなり良いバージョンがオープンソースで出ている。だから(コピーされるまでの)時間が短くなっている」

このため、特定のモデルや技術ではなく、トレーニングデータの方が重要性を増しており、それを公にしない態度はAI研究を行う大手企業の間で共通のものだ、とFalconは言う。

もともとNPOだったOpenAIが営利企業となり、290億ドルとも言われるバリュエーションを付け、Microsoftの投資を受け、最終的にモデルの透明性が失われたことで、OpenAIがダブルスタンダードを使っているという非難もある。イーロン・マスクは15日「私が約1億ドルを寄付した非営利団体が、なぜか時価総額300億ドルの営利団体になったのか、いまだに混乱している。もしこれが合法なら、なぜみんなそうしないのだろう?」とツイートした。

データサイエンス関連の人材開発会社 DataedX CEOである‪Brandeis Marshall博士は、「GPT-4は、AIの透明性、説明責任、ガバナンスのプロトコルがないままリリースされました。これは、私たち人類にとって恐ろしいことです」とツイートした。「GPT-4が解決しようとした現実の問題は何か、そして人類はどのような恩恵を受けるのでしょうか」

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米国のEV革命は失速?[英エコノミスト]

米国のEV革命は失速?[英エコノミスト]

米国人は自動車が大好きだ。バッテリーで走らない限りは。ピュー・リサーチ・センターが7月に発表した世論調査によると、電気自動車(EV)の購入を検討する米国人は5分の2以下だった。充電網が絶えず拡大し、選べるEVの車種がますます増えているにもかかわらず、このシェアは前年をわずかに下回っている。 この言葉は、相対的な無策に裏打ちされている。2023年第3四半期には、バッテリー電気自動車(BEV)は全自動車販売台数の8%を占めていた。今年これまでに米国で販売されたEV(ハイブリッド車を除く)は100万台に満たず、自動車大国でない欧州の半分強である(図表参照)。中国のドライバーはその4倍近くを購入している。

By エコノミスト(英国)
労働者の黄金時代:雇用はどう変化しているか[英エコノミスト]

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2010年代半ばは労働者にとって最悪の時代だったという点では、ほぼ誰もが同意している。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの人類学者であるデイヴィッド・グレーバーは、「ブルシット・ジョブ(どうでもいい仕事)」という言葉を作り、無目的な仕事が蔓延していると主張した。2007年から2009年にかけての世界金融危機からの回復には時間がかかり、豊かな国々で構成されるOECDクラブでは、労働人口の約7%が完全に仕事を失っていた。賃金の伸びは弱く、所得格差はとどまるところを知らない。 状況はどう変わったか。富裕国の世界では今、労働者は黄金時代を迎えている。社会が高齢化するにつれて、労働はより希少になり、より良い報酬が得られるようになっている。政府は大きな支出を行い、経済を活性化させ、賃上げ要求を後押ししている。一方、人工知能(AI)は労働者、特に熟練度の低い労働者の生産性を向上させており、これも賃金上昇につながる可能性がある。例えば、労働力が不足しているところでは、先端技術の利用は賃金を上昇させる可能性が高い。その結果、労働市場の仕組みが一変する。 その理由を理解するために、暗

By エコノミスト(英国)
中国は地球を救うのか、それとも破壊するのか?[英エコノミスト]

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脳腫瘍で余命いくばくもないトゥー・チャンワンは、最後の言葉を残した。その中国の気象学者は、気候が温暖化していることに気づいていた。1961年、彼は共産党の機関紙『人民日報』で、人類の生命を維持するための条件が変化する可能性があると警告した。 しかし彼は、温暖化は太陽活動のサイクルの一部であり、いつかは逆転するだろうと考えていた。トゥーは、化石燃料の燃焼が大気中に炭素を排出し、気候変動を引き起こしているとは考えなかった。彼の論文の数ページ前の『人民日報』のその号には、ニヤリと笑う炭鉱労働者の写真が掲載されていた。中国は欧米に経済的に追いつくため、工業化を急いでいた。 今日、中国は工業大国であり、世界の製造業の4分の1以上を擁する。しかし、その進歩の代償として排出量が増加している。過去30年間、中国はどの国よりも多くの二酸化炭素を大気中に排出してきた(図表1参照)。調査会社のロディウム・グループによれば、中国は毎年世界の温室効果ガスの4分の1以上を排出している。これは、2位の米国の約2倍である(ただし、一人当たりで見ると米国の方がまだひどい)。

By エコノミスト(英国)