中国、香港のテックIPOに対し「サイバー監視」を強化
中国国家インターネット情報弁公室(CAC)が14日に発表した規則案によると、香港に上場している企業の株式売却が国家安全保障に関わる可能性がある場合には、サイバーセキュリティの審査を受ける必要があるとしている。
中国国家インターネット情報弁公室(CAC)が14日に発表した規則案によると、香港に上場している企業の株式売却が国家安全保障に関わる可能性がある場合には、サイバーセキュリティの審査を受ける必要があるとしている。
規則案の「第13条」では、 以下の活動を行う情報処理者は、関連する国の規制に従い、ネットワークセキュリティ審査の対象となる。
- 国家安全保障、経済発展または公共の利益に関連する大量のデータ資源を保有するインターネットプラットフォーム事業者を集め、国家安全保障に影響を与える、または影響を与える可能性のある合併、再編または分割を実施すること。
- 海外で株式公開される100万人以上の個人情報を取り扱うデータ処理者
- 香港で株式公開され、国家安全保障に影響を与える、または与える可能性があるデータ処理者
- 国家安全保障に影響する、または影響する可能性のあるその他のデータ処理活動
また、主要なプラットフォームは、中国国外に本社やオペレーションセンター、R&Dセンターを設置する際にもCACへの報告が求められるという。
この規制案は、2021年12月13日にパブリックコメントを締め切る。その後、規則がどのように運営されるかは不透明だ。
今回の上場審査は、中国のテクノロジー企業による香港でのIPOに冷や水を浴びせるようなもので、香港での上場を期待していた企業もあった。米国の規制当局は、新規上場企業に対する監視を強化しており、監査法人が米国の監視下で帳簿を開くことを拒否した銘柄の上場廃止計画を進めている。この取り締まりにより、2024年以降、約2兆ドル相当の中国企業のADRが米国の取引所から排除される可能性がある。
CACは7月、海外での上場を目指す企業の規則を強化し、100万人以上のユーザーのデータを保有する企業にはセキュリティ審査を義務付けることを発表した。このガイドラインでは、この規定が香港にも適用されるかどうかは、その時点では明記されていなかった。
CACは、6月にニューヨーク証券取引所に44億ドルという超大型の新規株式公開(IPO)を行った2日後にDiDi Chuxing(滴滴出行)の調査を開始した。同社は調査期間中、新規ユーザーの登録停止を余儀なくされ、株価は暴落し、米国では多数の株主代表訴訟に直面している。
この夏、世界の投資銀行は、中国企業を香港に誘導するために奔走した。香港は、サイバーセキュリティの問題で米国での有利な上場パイプラインが停止した後、テック企業が世界の金融市場にアクセスするための、より政治的に好ましい場所と考えられていた。
また、中国のテクノロジー企業は、ケイマン諸島などのタックスヘイブンを基点とした変分持分事業体(VIE)と呼ぼれる複雑な会社形態を持っており、これも香港上場との相性がいい。
この規則案は、北京証券取引所が開設される前日に発表された。北京証券取引所は、企業が地元の取引所を利用することを奨励しようとする中で、イノベーションを推進する小規模な新興企業の資金を調達するために新設された市場である。
北京証券取引所は、自国の技術リーダーを育成し、外国企業への依存度を下げることを目的とした政府の広範な取り組みの一環として設立された。
中国政府はこれまでにも「中国版ナスダック」とされた上海科創板を設立するなど、香港や海外の証券市場の代替役を国内につくってきており、香港の実効支配を確立した現在、さらに金融ハブの役割を「国内」に移転する方針を加速させているようにみえる。