インド、デジタル経済の急成長が続行中

インドのインターネット経済は、インターネットの普及とデジタルコンテンツの消費の拡大に後押しされ、2030年までに1兆ドルに達する可能性がある。

インド、デジタル経済の急成長が続行中
Photo by Raj Rana on Unsplash

2021年12月、インドの無線インターネットサービス加入者は10億人となり、初めて9桁の壁を突破した。しかし、この巨大な数字は、スマートフォンがまだ飽和しておらず、リッチなデジタルサービスを受ける準備が整っていない市場を裏付けている。

同国の電気通信規制庁は2月中旬に発表したデータは昨年12月の1日に1,000,630,000人(10億63万人)の加入者がアクティブであったことを明らかにした。同月の携帯電話契約数を11億5500万とカウントしている。

ちなみに、中国の大手3キャリアは、すでに7億5000万件以上の5G契約と10億件以上の4Gアカウントを誇っている。インドではまだ数千万人が2Gネットワークを利用しており、キャリアはまだ5Gネットワークを運用していない。

インドでは良質な4Gネットワークですら確保しづらいという深刻な問題がある。通信事業者は最善を尽くしているが、インドでは、人々が常に高速データを得るために4Gネットワークに完全に依存できる状況にはない。人口の多い地域では、ネットワークが混雑して いることがほとんどだからだ。

インドの鉄道・通信・電子・情報技術担当大臣Ashwini Vaishnawによると、インド電気通信規制庁は、国内での5G展開について通信業界と協議の最終段階にあるとのこと。政府は7月か8月までに周波数オークションを完了させる予定だ。

2030年までに1兆ドル規模

インドの経営コンサルティング会社RedSeerはインドのインターネット経済は、インターネットの普及とデジタルコンテンツの消費の増加に後押しされ、2030年までに1兆ドルに到達すると予測している。

インドのインターネット経済は2021年に前年比50%以上の成長を遂げ、2030年には1兆ドルの経済規模になると予想されている。出典:RedSeer
インドのインターネット経済は2021年に前年比50%以上の成長を遂げ、2030年には1兆ドルの経済規模になると予想されている。出典:RedSeer

インドのデジタル経済は、高速インターネットアクセスとオンラインショッピングの増加に牽引され、毎年50%以上の割合で拡大していると、同社は報告書で述べている。

この報告書は、世界第2位の人口を誇るインドで進行中のデジタルシフトを強調するものだ。そして、仕事や教育からショッピングに至るまで、あらゆるものがオンライン化され、パンデミックによって加速された。

世界的大流行期間中における主要なインターネット経済圏の復活を目の当たりにした。出典:RedSeer
世界的大流行期間中における主要なインターネット経済圏の復活を目の当たりにした。出典:RedSeer

しかし、そのことが所得ピラミッドの底辺にいる人々の格差を拡大することにもなった。

RedSeerは、年収が3.75ルピー(5,000ドル)未満の約4~5億人の人々が「問題解決のためにデジタルによる介入を必要としている」と述べている。この中には、農村部や第2級都市に住む人々も含まれており、デジタル空間でリーチすることが最も重要な層と考えられている。

インドの新たな「デジタル革命」は、B to B セグメントによるテクノロジー導入の拡大によって、さらに促進されている。RedSeerによれば、SaaS(Software-as-a-Service)市場は、現在の26,341.2ルピー(35億ドル)から、2026年度には80億ドルに成長すると予想されている。テクノロジー企業は収益化に向けて動き出しているか、すでに収益を上げている。

Covid-19による規制で減少傾向にあったe-tail、e-health、フードテック、オンラインモビリティ、ビルペイとリチャージの主要デジタル経済が、そのユーザーベースによって増強され、うまく回復している。

インターネットサービスに満足するユーザー層の拡大・成熟化が、インターネットを利用したビジネスの成長をさらに後押ししている。出典:RedSeer
インターネットサービスに満足するユーザー層の拡大・成熟化が、インターネットを利用したビジネスの成長をさらに後押ししている。出典:RedSeer

良いニュースは、投資家がインドの黄金の機会を迷うことなく認識していることだ。わずか2021年に、400億ドル以上の資金調達と42の新たなユニコーンが誕生した。

2021年にインドの証券取引所にデビューした企業は55社にものぼり、RedSeerは、デジタル化の加速、スタートアップに対する政府の取り組み、高い資本力を持つ国内投資家の増加、テック企業に対する未公開株への出資などを背景に、2025年までに70以上のテクノロジーIPOが起こると予想している。

減少する電子商取引の配送時間(左)と電子商取引の小包一つあたりのコスト(右)。最終的な繁栄は、信頼性が高まり民主化された物流バックボーンによってもたらされる。出典:Redseer.
減少する電子商取引の配送時間(左)と電子商取引の小包一つあたりのコスト(右)。最終的な繁栄は、信頼性が高まり民主化された物流バックボーンによってもたらされる。出典:Redseer.

RedSeerのCEO兼創設者であるAnil Kumarは「インドが1兆ドルの消費者インターネット経済に至るまでには、eコマース、eヘルス、フードテック、オンラインモビリティ、クイックコマースなど、複数のインターネット分野が結集し、消費主導型経済の強力な基盤を作り上げたというユニークなストーリーがある」と語っている。

有料購読者へのご案内

購読頂きありがとうございます。ブログなどで報告している通り、アクシオンの本サイトにはブルームバーグ、ニューヨーク・タイムズ、サイエンティフィック・アメリカン等の厳選された記事を有料会員限定で提供しています。オリジナルと足し上げると毎月70本程度の有料記事を提供しており、今後も有料記事が拡大する方向で進んでいます。ぜひ、本サイトを訪れてください。

アクシオン|経済メディア
ビジネスパーソンがテクノロジー業界の先端知識を得るための情報に特化したメディア。デジタル経済のニュースを深掘りするオリジナル記事や教養を深めるための動画・イベントをお届けします。テクノロジーと経済が交差する地点に見える社会の巨大な変化の兆しを知り、ビジネススキルを著しく向上させましょう。

Read more

AI時代のエッジ戦略 - Fastly プロダクト責任者コンプトンが展望を語る

AI時代のエッジ戦略 - Fastly プロダクト責任者コンプトンが展望を語る

Fastlyは、LLMのAPI応答をキャッシュすることで、コスト削減と高速化を実現する「Fastly AI Accelerator」の提供を開始した。キップ・コンプトン最高プロダクト責任者(CPO)は、類似した質問への応答を再利用し、効率的な処理を可能にすると説明した。さらに、コンプトンは、エッジコンピューティングの利点を活かしたパーソナライズや、エッジにおけるGPUの経済性、セキュリティへの取り組みなど、FastlyのAI戦略について語った。

By 吉田拓史
宮崎市が実践するゼロトラスト:Google Cloud 採用で災害対応を強化し、市民サービス向上へ

宮崎市が実践するゼロトラスト:Google Cloud 採用で災害対応を強化し、市民サービス向上へ

Google Cloudは10月8日、「自治体におけるゼロトラスト セキュリティ 実現に向けて」と題した記者説明会を開催し、自治体向けにゼロトラストセキュリティ導入を支援するプログラムを発表した。宮崎市の事例では、Google WorkspaceやChrome Enterprise Premiumなどを導入し、災害時の情報共有の効率化などに成功したようだ。

By 吉田拓史
​​イオンリテール、Cloud Runでデータ分析基盤内製化 - 顧客LTV向上と従業員主導の分析体制へ

​​イオンリテール、Cloud Runでデータ分析基盤内製化 - 顧客LTV向上と従業員主導の分析体制へ

Google Cloudが9月25日に開催した記者説明会では、イオンリテール株式会社がCloud Runを活用し顧客生涯価値(LTV)向上を目指したデータ分析基盤を内製化した事例を紹介。従業員1,000人以上がデータ分析を行う体制を目指し、BIツールによる販促効果分析、生成AIによる会話分析、リテールメディア活用などの取り組みを進めている。

By 吉田拓史
Geminiが切り拓くAIエージェントの新時代:Google Cloud Next Tokyo '24, VPカルダー氏インタビュー

Geminiが切り拓くAIエージェントの新時代:Google Cloud Next Tokyo '24, VPカルダー氏インタビュー

Google Cloudは、年次イベント「Google Cloud Next Tokyo '24」で、大規模言語モデル「Gemini」を活用したAIエージェントの取り組みを多数発表した。Geminiは、コーディング支援、データ分析、アプリケーション開発など、様々な分野で活用され、業務効率化や新たな価値創出に貢献することが期待されている。

By 吉田拓史