インドのPE-VC投資が日本の4倍に到達

インドの2021年1~9月の取引額は490億ドルと過去最高に到達した。日本の2020年通年実績である100億ドル超の約5倍だ。出口戦略の確実性が高まったテクノロジーセクターが牽引している。

インドのPE-VC投資が日本の4倍に到達
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要点

インドの2021年1~9月のPE-VC投資の取引額は490億ドルと過去最高に到達した。日本の2020年実績の約4倍だ。急成長は出口戦略の確実性が高まりブームとなっているテクノロジーセクターが牽引している。


インドにおけるプライベート・エクイティ・ベンチャー・キャピタル(PE-VC)への投資は引き続き増加しており、2021年1~9月の取引額は、前年同期比52%増の490億ドルと過去最高を記録し、2020年の年間投資額である395億ドルをすでに上回っている。

JPEAによると、日本のプライベートエクイティ(PE)市場における年間案件総額は約1.3兆円とされる。一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター(VRC)によると、2020年の日本国内のVC投資額は1,512億円。合計で1兆4,152億円(約126億ドル)。インドの2021年1−9月実績は日本の3.88倍に相当する。

2021年、インドでは、アーリーステージおよびレイトステージの企業へのPE-VC投資が大幅に増加し、幅広い分野での成長が見られた。Venture Intelligenceのデータによると、2020年通年の892件、2020年1~9月の651件に対し、2021年1~9月の案件数はすでに840件に達している。この集計には、不動産へのPE投資は含まれていない。

大規模サイズ(規模1億ドル以上)のディール数は、2020年の同時期にはわずか41件であったのに対し、2021年の9ヶ月間では100件を超えた。同様に、シードステージの案件も190件から249件へと30%以上増加した。昨年の2億1600万ドルに対し、今年は4億2200万ドル相当のシードステージ投資がVCによってインドのスタートアップに行われた。

Venture Intelligenceの創設者であるArun Natarajanは「インドにおけるPE-VC投資の記録的なペースが持続していることは心強いが、最新の四半期のハイライトは、インドの消費者市場に特化したZomatoとグローバルな企業向けSaaSに特化したFreshworksのIPOが成功したことである。このような模範的な流動性イベントは、インドへのPE-VC投資が国内外の投資家から得られる資産配分のパイのシェアを拡大するだろう」と語っている。

7-9月期のPE-VC投資は、368件の案件で201億ドルとなり、前四半期比で35%、前年同期比で69%増加した。

ユニコーンへの投資は合計で200億ドルを超え、これまでの2021年におけるバリューパイの41%近くを占めている。7-9月期には、ユニコーン企業に100億ドル以上(28件)の投資が行われた。

パンデミックにより急速なデジタル化が進む中、IT関連業界は、2021年1-9月期の投資額全体のうち281億ドル(70%)を占めた。また、このセクターでは、期間中に58件のメガディール(1億ドル以上のディール)と3件の10億ドルディールが発生した。

電子商取引大手のフリップカートが36億ドルのプレIPO資金を調達したことや、BPO企業のHinduja Global Solutionsがヘルスケアサービス事業を12億ドルでBaring Private Equity Asiaに売却したこと、Blackstoneがウェルスマネジメントに特化したASKグループの株式を10億ドルで取得したことなどが、7月から9月にかけてのトップディールとして挙げられる。

「選ばれた企業」への集中傾向

このようなトレンドの中で選ばれた企業がより大きな投資を引き受けるようになっている。

印経済メディア・エコノミックタイムズが業界の追跡機関Venture Intelligenceから入手したデータによると、1月から9月の間にインドの新興企業が調達した総資金245億ドルのうち、約50%がフォローオン(追加投資)で73社に投入されている。

フィンテック、産業、自動車、消費者向け製品、サービスなどの分野の高成長企業が、今年、追加のリスクキャピタルを獲得したことになる。1月以降、過去のラウンドを獲得した新興企業に129億ドルもの資金が流入しており、高成長分野の上位2~3社の新興企業が投資家の資金の大半を占めていることを示している。

例えば、PharmEasyは、今年5件の取引を成立させ、総額9億7,500万ドルを調達した(企業価値は56億ドルに達した)。また、企業間取引(B2B)のスタートアップであるOfBusinessは、同時期に4件の取引で5億400万ドルを調達した(企業価値は30億ドルに達した)。

FOMO(取り残されることへの恐れ)が投資家の熱狂を後押ししているのかもしれない。ユニコーンへの投資機会を逃したことを悔やむ投資家たちがTwitterで絶え間なく投稿している。これがさらなるFOMOを掻き立てている。

マーケットリーダーに資本が集中する傾向は否定し難い。Venture Intelligenceによると、2019年には約99社が総資金の65%近くを調達し、2020年には約69社がその年の総資金の60%近くを受け取ったという。

エコノミックタイムズの取材によると、Infra.Marketの共同設立者であるAaditya Shardaは「投資家は、”経営破綻の可能性が高い"企業や若い企業にドライパウダー(投資可能な資金)を投入するのではなく、実績のある企業にプレミアムを支払うことを望んでいる」と述べている。

データによると、Pine Labs、Swiggy、Dailyhuntなど、2021年以前に誕生した9つのユニコーンは、今年、複数のラウンドを調達し、合計56億ドルのベンチャー資金を集めている。また、Apna.co、BharaPe、Digit、Meeshoなど、ユニコーンクラブ(企業価値10億ドル以上の新興企業)に入った新興企業のうち、複数のラウンドを調達した14社には、約55億ドルの資金が集まっているという。

リスク投資家たちは、今後2~3年の間にIPOを目指すトップ企業に、より多くの資金を投入したいと考えているとされる。「今では、IPOへの道筋が見えるようになった。例えば、あるカテゴリーのNo.1企業に投資すれば、最小限のリスクで、今後2〜3年のうちにIPOして、かなりのアップサイドを得て撤退することができる」とKooやShareChatなど、今年複数の資金調達を行った企業をポートフォリオに持つIndia Quotientの創業パートナーであるAnand Luniaは述べている。

ある投資家は「資金調達ブームと巨額の軍資金を持つトッププレーヤーの誕生により、今後2〜3年の間にM&Aが盛んに行われるだろう。これは、UnacademyやByju'sなどの資金力のあるプレーヤーが教育工学分野ですでに行っていることだ」と述べている。

「これは新しい段階の始まりです。このような投資を受けた企業の多くは、M&Aマシンになるでしょう」と、Spinnyの出資者であるBlume Venturesの資本市場担当部長Kunal Bajajは述べている。「チームや代理店チャネル、上流のメーカーを買収することで、フルスタックを所有することができる。今後2、3年は、これらの新興企業によるM&Aが急激に増加するでしょう」と述べている。

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