インドは、地球の気温が危険な閾値に達する前に地球温暖化を減らすというパリ協定の目標に沿った排出量削減目標を掲げている数少ない国の一つ。しかし、石炭から再生可能エネルギーへの転換を成功させるためには、太陽光や風力が利用できない場合でも稼働する高度なバッテリー技術が必要となる。

スタンフォード大学の研究者による新たな分析によると、政府の支援があれば、世界で2番目に人口の多いインドも独自の電池産業を発展させることができ、その過程で世界的な電池供給者になることができるとされている。

『Journal of Energy Storage』誌12月号に掲載された新しい研究では、研究者らは、インドが短期的には電池製造に注力するが、長期的にはより価値の高い研究開発のための能力を構築することを推奨している。さらに、政府はターゲット市場の特定を支援し、国内企業が国際的な競争相手よりも有利になるような保護主義的な措置の使用を検討すべきであると、スタンフォード大学プレコートエネルギー研究所の「持続可能な金融イニシアチブ」に所属する研究の著者は述べている。

研究の共著者であるアラビンド・レトナ・クマールは「私たちの成功事例はすべて、成功を確実にするために何らかの形で政府が介入していることを示している」と述べている。「これらはほとんどの場合、地元の製造業者が国際的な競争相手よりも競争上の優位性を得ることを目的としていた」。

野心的な脱炭素化の実現に向けて

2030年までに、インドでは電力の40%を再生可能エネルギーで発電し、自動車販売台数の30%を電気自動車が占めるようにすることを計画している。インドのNDCの下での主要なマイルストーンのいくつかは、2020年までに175GWの再生可能エネルギー目標と、2030年までに設置された発電容量の40%を再生可能エネルギーとすることである。

これにより、インドでは電池需要が大幅に高まると予想される。インド政府はこの市場の可能性を認識しており、国内での電池製造を実施するためのロードマップである「変革的モビリティと電池貯蔵に関する国家ミッション」を承認している。

インド政府は、電池が脱炭素化の目標を達成するための鍵となる可能性があることを認識しており、国内の電池製造能力を開発するための政策を策定する初期段階にある。この新しい研究では、インド、中国、米国のケーススタディを分析し、インドの政策立案者に提言を行っている。

製造・研究開発に注力

米国や韓国などの多くの国は、電池技術の研究と製造の経験という点でインドを大きくリードしており、TeslaやLG Chemなどの企業が業界の最前線に立っている。これらの国々は、研究開発(R&D)への投資の後に技術の商業化と本格的な製造能力の開発を行うというトップダウン型のアプローチを用いて産業能力を開発してきた。

インドは、短期的にはボトムアップによって、そのギャップを縮めることができる、と共著者らは書いている。そのためには、インド企業は、電池パックの製造に焦点を当ててから、セルの製造や原材料の加工など、技術をベースにした研究集約的な活動に移る必要があるという。このアプローチは、韓国の自動車産業、台湾のエレクトロニクス産業、中国の太陽光発電(PV)ソーラー産業など、様々な国の様々な産業で実証されている技術キャッチアップに分類することもできるという。

インドは、インドのメーカーが規模の経済を実現できる国内市場を特定することで利益を得ることができ、EVがエネルギー貯蔵需要の増加の主要な推進役となる可能性が高い、と論文は指摘している。

そのためには、政府は目標を設定し、明確な政策メッセージを発信すべきだと著者らは書いている。例えば、インドは現在、2030年までに道路交通機関の30%を電動化したいと考えているが、これはまだ非公式な目標である。

インドは新世代電池技術(リチウムイオンなど)の開発経験が限られており、業界への参入が遅れていることを考えると、ボトムアップ・アプローチの方がより適切であるかもしれない。

潜在的な保護主義的措置

保護主義的な措置は、短期的にはインドの電池メーカーをグローバル競争から保護するのに役立つ可能性がある。インド政府は、インド企業が足がかりを得るのを助けるために、早い段階でそのような措置を採用することができる、と研究者たちは提言している。中国政府も同様の戦略を採用しており、寧徳時代新能源科技(CATL)のような企業は現在、世界のトップバッテリーメーカーになっている。

しかし、保護主義的な措置は慎重に、そして限られた期間だけ使用されるべきである、と研究者は指摘している。インドはその間、世界の貿易規制に従うよう注意しなければならない、と論文は記述している。

今後の研究では、インドの製造業者が世界的な競争に勝つために、インドが使用できる適切な保護主義的措置を決定することに焦点を当てることができるだろう、と本研究は述べている。

現地のバッテリーストレージメーカーが規模の経済をうまく達成できる(と思われる)国内市場を特定する必要がある。これは、電気自動車市場である可能性が高く、電力システムの柔軟性市場によって適切に補完されている。

共著者らは国内の市場と産業、それから海外直接投資の呼び水として強い政策的シグナリングの必要性を求めている。「インドが適切な投資を誘致するためには、統合計画や明確な目標などの強力な政策が必要である。このような状況の中で、インドは自身の変化する政策シグナルを認識しておく必要がある。例えば、2030 年までに道路交通の電化率 100%を達成するという野心があったが、公式の目標としては実現しなかった。現在、インドは2030年までに道路交通の電動化率30%の達成を目指しているが、まだ批准された目標がない。道路交通の電動化の公式目標を設定するだけで、適切な政策シグナルを送ることができる」。

参考文献

  1. Shrimali, Gireesh and Retna Kumar, Aravind, Battery Storage Manufacturing in India: A Strategic Perspective (May 29, 2020). Available at SSRN: https://ssrn.com/abstract=3616404 or http://dx.doi.org/10.2139/ssrn.3616404

Photo: "Advanced Li-Ion Battery" by Argonne National Laboratory is licensed under CC BY-NC-SA 2.0