
グーグルクラウドにオラクル型営業術を植え付けたクリアン体制
トーマス・クリアンは、オラクルの旧来の戦術を検索会社に持ち込み、競合他社のベテランの営業マンを高額報酬で引き抜いた。AWSとマイクロソフトの後塵を拝するものの、クラウドの市場シェアを着実に獲得した。
Google Cloudの社員は、次の上司がシリコンバレーの主力企業オラクルをインターネットコンピューティングの約束の地に導くために奮闘した経営者、トーマス・クリアンになると知って困惑した。
2018年11月のことで、クラウド部門の当時のチーフであるダイアン・グリーンとクリアンは、迫り来る彼のリーダーシップを心配するスタッフたちと質疑応答を行った。「多くの人が、あなたが全く異なる文化を持つオラクルから来たということに懸念を抱いている」と、ある人はクリアンに言った。「では、Google Cloudの文化をどのように守っていくつもりなのだろうか」。その月の会議では、ある社員がこの採用を心配し、クリアンがこの仕事に適しているかどうか、グリーンに再確認を求めた。
それから2年以上が経ったが、誰もクリアンの任命に戸惑うことはない。彼の指揮の下、Google Cloudの売上は2倍以上になり、親会社であるアルファベットの売上よりも速いペースで成長している。コロナウイルス感染症の大流行でグーグルはほとんどの採用を一時停止したが、クリアンの部門は新入社員をかき集めた。同社の他の部門が社内リソースの奪い合いや閉鎖に追い込まれる中、クラウド部門は絶え間なく投資が続いている。彼が就任した当時は2万5,000人だった従業員数は、現在3万7,000人に達し、クリアンはグーグルで最も重要な経営者の1人になっている。
アルファベットは7月27日の決算発表で、Google Cloudの事業拡大におけるクリアンの進捗状況を投資家に報告する予定だ(編注:本記事は2021年7月に公開された)。アナリストらは、第2四半期の同部門の売上高は約45%増の43億5,000万ドルに達したと推定している。
クリアンが着任する前、Googleはエンジニアリングの考え方とテクノロジーの力を信じてクラウドコンピューティングに取り組んでいたが、大きな成功を収めることはできなかった。クラウドコンピューティングで最も評価の高い技術を提供していたが、顧客はほとんど、人工知能(AI)や機械学習といった特殊なニーズでそれを利用していた。この巨大企業は、Amazonやマイクロソフトの後塵を拝し、第3位に甘んじていた。