シーインの大型上場、IPO市場の復活の兆しとなるか
米国のIPO市場が停滞する中、新たな大型企業が上場を目指しているようだ。中国のオンライン・ファッション大手、シーイン(SHEIN)は、来年に予定される米国での上場に向けて、900億ドルの企業価値を目指していると取り沙汰された。
米国のIPO市場が停滞する中、新たな大型企業が上場を目指しているようだ。中国のオンライン・ファッション大手、シーイン(SHEIN)は、来年に予定される米国での上場に向けて、900億ドルの企業価値を目指していると取り沙汰された。
11月27日、オンライン・ファッション企業のシーインが、米国での上場申請を非公開に行ったとの噂が流れた。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の報道によると、 5月の資金調達ラウンドで約660億ドルと評価されたシーインは、より高いIPOを目指す可能性があるという。 11月初旬のブルームバーグの報道では、同社は800億〜900億ドルの企業価値を狙っていると言われた。
事業規模は十分だ。リークを受けたとみられるWSJによると、2022年、同社は売上高230億ドル、純利益8億ドルを記録。さらに、2023年の第1~3四半期は過去最高の売上と利益を記録した、とされている。ブルームバーグの引用した情報筋によると、2023年通年の予想純利益は25億ドルに達し、2019年の1億3,700万ドルから約18倍に増加するという。中国メディアの報道によると、2022年のSHEINの流通総額(GMV)は290億ドル。尺度は違えど、ファストファッション最大手ザラの年間売上高は326億ドルで、近づいてきている。
データプロバイダーdata.aiの最新データによると、今年第1~3四半期のダウンロード数で、シーインはアマゾンと格安ECアプリ「ティームー」を上回り、世界のショッピングアプリのダウンロード数をリードしている。
同社の世界的な影響力は拡大を続けている。最近では、オーストラリアの有名デザイナー、アリス・マッコール(Alice McCall)とパートナーシップを結び、10月にはフォーエバートゥエンティワン(Forever21)との共同ブランドを立ち上げ、イギリスの有名ファッションブランド、ミスガイデッド(Missguided)のブランドの知的財産権(IP)を取得した。
シーインは自社ブランドを基盤に、世界中の外部マーチャントを集め、「自社ブランド+マーケットプレイス」というアマゾンのようなプラットフォーム運営を形成している。
シーインは米IPOの布石を打っていた。同社は最近、大手ゲームパブリッシャーのアクティビジョン・ブリザードの元幹部で元政府高官のフランシス・タウンゼントを上級顧問として採用した。
シーインのIPOが成功すれば、2021年のディディ・グローバル(滴滴出行)のIPO以来、中国発祥の企業としては最大規模の株式公開となる可能性がある。ライドシェア大手のディディは、北京の取り締まりに巻き込まれた後、ニューヨーク証券取引所の上場を廃止し、バリュエーションは8割落ちた。
現在の米国のIPO市場は厳しく、2022年はIPOにとって過去10年以上で最悪の年となり、2023年はわずかな改善しかもたらされなかった。2023年の主要IPO4社のうち3社が公募価格を下回る水準にとどまっている(ソフトバンクグループの子会社である英半導体設計のアームもそのうちの一つだ)。
シーインの他にも有望株が機会を待ち構えている。インターネット掲示板レディットは、新規株式公開(IPO)の可能性について投資家と協議しており、第1四半期の上場を目指している。マイクロソフトが支援するクラウドとデータセキュリティの新興企業、ルーブリックも第1四半期にIPOを考えている。有名セレブ、キム・カーダシアンの下着ブランド「スキムス」は40億ドルと評価され、来年のIPOの可能性を含む戦略的選択肢を模索している。