IPOに復活の兆し ベンチャー投資の再活性化も

2022年初頭以降停滞してきた米株式市場の新規株式公開(IPO)に復活の予兆が訪れた。試金石となるIPOが成功すれば、「放牧中」のユニコーン企業が上場に向かい、VCの新規投資活動も再び盛り上がることになる。

IPOに復活の兆し  ベンチャー投資の再活性化も
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2022年初頭以降停滞してきた米株式市場の新規株式公開(IPO)に復活の予兆が訪れた。試金石となるIPOが成功すれば、「放牧中」のユニコーン企業が上場に向かい、VCの新規投資活動も再び盛り上がることになる。


25日、食料品配達会社のインスタカートが新規株式公開(IPO)を申請し、来月にはナスダックに上場される見込みだ。

インスタカートは、コロナ以降のバリュエーション・リセットの煽りを最も受けたレイターステージ(後期段階)のスタートアップである。同社は、コロナウィルスの大流行時のオンライン食料品通販の急増から恩恵を受け、その売上高は2020年に前年比590%増となった。これが評価額の高騰に拍車をかけ、2021年のピーク時には390億ドルに達した。しかし、2021年以降、下降線をたどり、直近では130億ドルとなっている。

それでも、同社はすでに黒字化している。以前のIPOマーケットであったらすでに上場しているべき財務面を表現している。2022年に4億2,800万ドル、2023年上半期に2億4,200万ドルの利益を計上し、売上高は2022年に25億5,000万ドル、2023年上半期に14億8,000万ドルとなっている。財務状況は、6月30日現在で20億ドル近い手元資金がある。

ブルームバーグのDave Leeはパンデミック以降の成長停滞に着目しており、また、同社が構築した広告事業もマクロ経済環境に影響されると主張。収益の大半を少数の小売業者に依存しているため、これらの小売業者が独自の宅配サービスを開始する可能性もある、とも述べた

それでも、ベンチャーキャピタル(VC)に支えられたユニコーン企業としてのインスタカートの公開は、市場の動向を示す象徴的な出来事として注目されている。2022年1月以降のIPO市場は沈静化しており、2023年はKenvueやCava、そして最近のArmのような話題の新規公開が登場し、熱気のほとばしりが生まれつつある。

その他、直前に控えているIPO計画は以下の通り。

  • Klaviyo。95億ドルの評価を受けたメールマーケティング提供会社KlaviyoもIPOを申請した。2023年上半期の売上高3億2,100万ドルで1,500万ドルの純利益を計上した。PitchBookのデータによると、Klaviyoは2022年7月に1億ドルの資金調達ラウンドを実施し、約7億7,900万ドルの資金を調達して95億ドルの評価額を達成。Klaviyoの上場時時価総額は市場の体温を測る検温器となるだろう。
  • バイオテクノロジー企業Neumora Therapeuticsも金曜日にSECに申請した。ソフトバンクグループ(SBG)が出資するNeumoraの上場申請書には、IPO株価や発行株式数は開示されていない。バイオテクノロジー大手のアムジェンの支援を受ける同社は、脳疾患の精密医薬品を開発している。同社のラインナップには、大うつ病性障害、不安神経症、PTSD、統合失調症の治療薬が含まれる。
  • Armは8月中旬に上場申請を実行した。SBGは文書で株式売却の条件案を開示していないが、600億ドルから700億ドルの評価額を求めると見られている。この想定企業価値は、AI誇大広告が株式市場でどの程度機能するかを試すことになるだろう。
  • 吉利汽車傘下の中国EVメーカーZeekrが、新規株式公開に向けて投資家とのロードショーを開始すると、ロイターが無名の情報筋の話を引用して報じた。Zeekrは、評価額130億ドルでの売出しを目論んでいるとされる。Zeekrは昨年12月に秘密裏にIPOを申請し、2月に7億5,000万ドルを調達した。Zeekrが成功して実際に上場すれば、過去2年間で最大規模の中国IPOとなる可能性がある。

非上場継続を選んだ例

非上場継続を選んだ、後期段階のスタートアップもある。IPO候補とされることの多いソフトウェア会社、データブリックス(Databricks)は、現在ティー・ロウ・プライスと新たな資金調達ラウンドについて交渉中だ、とブルームバーグが報じた。このラウンドにより、同社の評価額は430億ドルに達する可能性がある。成功すれば、この評価額は2年前の380億ドルを上回ることになる。

さて、これらのIPOがうまくいくなら冬眠していたユニコーンがIPOに向かい、VCが絞っている新規投資が再び活気づくだろう。

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