インドネシアのIPO市場が絶好調

国営企業Telkom Indonesiaのインフラサービス部門は、ジャカルタでの新規株式公開(IPO)で約13億ドルを調達。2021年は過去10年以上で同国最大のIPOの年となりそうだ。

インドネシアのIPO市場が絶好調
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要点

国営企業Telkom Indonesiaのインフラサービス部門は、ジャカルタでの新規株式公開(IPO)で約13億ドルを調達。2021年は過去10年以上で同国最大のIPOの年となりそうだ。


ブルームバーグによると、Telkom Indonesiaの子会社PT Dayamitra Telekomunikasi(別名Mitratel)の株価は1株あたり800ルピアで、引受希望が多かったため、今回の募集で売り出された株式数を増やしたと関係者の1人が語った。この株式は11月22日に上場する予定だ。

13億ドルの売り出しが実現すれば、インドネシアのIPO市場は新たな記録の年を迎えるだろう。ブルームバーグの計算によると、Mitratelを含む約34億ドルの調達額は、これまでの年間最高額であった2010年の30億ドルを上回ることになる。

Mitratelはインドネシア全土で28,000以上の通信塔を管理しており、その半数以上はジャワ島以外の地域にある。MitratelはIPOで得た資金を使ってさらに6,000基のタワーを購入する予定だと述べた。今後は、5G分野に注力するとともに、東南アジアやアジア全般での長期的な事業拡大を目指している。

同国のIPOマーケットの興隆は8月に行われたオンライン・マーケットプレイスのBukalapakの上場によって火がついた。同社の15億ドル上場は、国内では過去最大のものだった。マイクロソフトや中国アント・グループなどを支援者に持つBukalapakは、第1四半期の業績は3,238億ルピア(約25億円)の損失となる赤字上場だったが、市場は強気の姿勢を崩さなかった。

Bukalapakの成功は、他の地域のテクノロジー企業の国内IPOの流れを作っている。インドネシアのGoToは、ライドハイリング大手のPT Aplikasi Karya Anak Bangsa(通称Gojek)とEコマース企業のPT Tokopediaが合併して誕生した企業で、年内に株式を公開して最大300億ドルの企業価値を目指している。

インドネシアのオンライン旅行プラットフォームTravelokaとシンガポールの配車企業Grabも年内にSPACを通じた株式公開を目指している。他にも、ジャルムグループが支援するBlibliとして知られる電子商取引プラットフォームのPT Global Digital Niagaは、ともに2022年の上場を計画している。また、インドネシア最大の国営企業Pertaminaも来年には上場を予定している。

国営企業の上場

インドネシア政府が2023年までに株式市場への上場を計画している14の国有企業の中には、化石燃料輸送会社と地熱発電会社が含まれており、経営改善とコロナウイルス対策で枯渇した公的資金の補充を目的としている。

インドネシアには100以上の国営企業がある。そのうち株式市場で取引されているのは34社で、主に運輸やエネルギーなどの基幹産業の企業だ。IPOブームの今、政府は民間の投資資金を活用する好機だと考えている。

Mitratelの他にも来年までに2つの国有企業の子会社のIPOが予定されている。その一つは、国営石油メジャーのプルタミナの子会社であるプルタミナ国際海運。同社は350隻以上の船舶を保有し、石油や液化天然ガスを輸送している。東南アジアでは、よりクリーンなエネルギーであるLNGの獲得が急がれており、プルタミナ国際海運は船隊の拡大を目指している。

プルタミナのもう一つの部門であるプルタミナ地熱エネルギーも、2022年までに上場する予定だ。同社は、再生可能エネルギーへの需要の高まりに対応するため、地熱発電所の拡大を模索している。

IPOは国家財政の改善にもつながる。昨年、インドネシアの財政赤字は国民総生産の6%を超えたが、これはパンデミックによる経済的損失を食い止めるための刺激的な支出によるもの。赤字の支出をGDPの3%以内に抑えるルールは中断されているが、2023年に復活することになっている。

この目標を達成できなければ、インドネシアの信用度は低下する。また、増加する高齢者のための社会保険支出も、均衡のとれた予算を追求する原動力となっている。

国営企業からの配当と税金は、2019年のインドネシアの税収の約5分の1を占めている。国益企業の収益性が高まれば、それらの企業からの配当や税収が増える可能性がある。国が保有する株式の売却による収益も、財源に貢献するだろう。

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