新たな半導体問題で日本の自動車メーカーはまだ安心できない
【ブルームバーグ】トヨタ、日産、ホンダ、9ヵ月間で利益を取り戻した。今後1年間の最大のリスク要因はチップ供給との見方。
【ブルームバーグ】日本の大手自動車メーカーは、世界的な半導体不足に見舞われた2021年の厳しい状況を脱し、車両価格の上昇を受けて利益が増加すると予測している。しかし、アナログチップの供給不足が今後の見通しを不透明にする恐れがある。
半導体の供給不足は今年後半に緩和される予定だが、次のボトルネックとなるのは、電動化や自律化が進む自動車に搭載されることが多くなったアナログチップの需要拡大だ。昨年のチップ不足の主な原因は、スマートフォンやコンピュータに使用される主要な計算チップであるマイクロプロセッサの不足だった。
ホンダは、日産自動車とともに、昨年の苦しいスタートから一転、3月までの会計年度の営業利益見通しを上方修正した。トヨタ自動車は、1月に国内生産を数日間停止した後も、年間営業利益の見通しを2兆8,000億円に据え置いた。「半導体が増えれば増えるほど、我々は成長できる」
日産自動車の最高執行責任者(COO)であるアシュワニ・グプタは、今週初めに行われた決算説明会でこのように述べた。
日本の自動車メーカーは、過去半世紀にわたり、日本の製造業が世界の自動車産業で競争するだけでなく、支配することができることを証明してきた。しかし今は、世界的なチップ不足のために、自らの運命を予測することができないという不慣れな状況にある。これは、人々が遠隔地で仕事をしたり、室内で過ごす時間が増えたりして、コンピューターやガジェット、デバイスに対する需要が高まっていることが原因だ。
IHS Markitは先月のレポートで「アナログチップは、今後3年間、自動車生産の主な制約要因となる可能性が高い」と書いている。
コロナウイルス感染症のロックダウン、部品の欠品、チップの不足は、世界中の自動車メーカーが直面している共通の課題だ。フィッチ・ソリューションズの最近のレポートによると、これらの障害により、今年末まで自動車生産が制限され、市場全体の回復が2023年にずれ込むとしている。
マッコーリー・セキュリティーズ・コリア・リミテッドは、「ICチップ供給の正常化は予想よりも遅い」と予測していると、アナリストのジェームズ・ホンは電子メールで述べている。
当初の見通しと比べると、トヨタはほぼ順調に推移している。世界最大の自動車メーカーであるトヨタの営業利益の見通しは、5月に発表した当初の見通しよりも若干上回っているが、生産停止の影響で販売台数の見通しは若干引き下げられている。
ホンダは11月にチップ不足のために見通しの下方修正を余儀なくされ、利益と売上を回復する能力に対する懸念が高まった。しかし、ホンダは今週に入ってから立ち直り、現在は、昨年の当初予想をさらに上回る8,000億円の営業利益を見込んでいる。
当初、年間の利益を横ばいと予想していた日産は、為替の好影響と車両の利益率の向上により、3月期の利益を2,100億円と見込んでいる。また、日産は2020年に、年間約3,000億円のコストを取り除き、生産能力を削減し、利益率を悪化させるインセンティブを削減する回復計画に着手した。
SBI証券のアナリストであるユウジ・エンドウは、チップメーカーが世界的に生産を拡大しているため、半導体の供給は改善していると見ている。供給不足はおそらく上半期に続き、下半期には改善されるだろうとのことだ。エンドウは「また、自動車メーカーの生産台数は、若干ではあるが、回復してきている」と述べている。
そうは言っても、喜ぶにはまだ早いかもしれない。三菱自動車の池谷光司最高財務責任者(CFO)は、今週の決算説明会で、チップ不足が長引く可能性が高く、見通しは依然として不透明であると述べた。「来年には影響が出てくるだろう」。
ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリストによると、自動車生産台数は現在、生産計画を上回り始めているという。「チップ不足に関する不確実性はまだ続いているが、自動車メーカーが生産量を5~10%増やせば、コロナパンデミック以前の生産水準に達するだろう」と、マサヒロ・ワカスギとタツオ・ヨシダは2月4日付のメモで書き、2022年には販売が回復するとの見通しを示している。
東海東京調査センターのアナリストである杉浦誠司は「需要が堅調であるため、自動車の価格が上昇し、値引きに頼っていた自動車メーカーが値引きをせずに自動車を販売していることが業績のアップサイドにつながっている」と述べている。
「新車の需要が積み重なっているため、我慢しているのだ」と述べている。しかし、今のところ、「自動車メーカーは何もできないので、待つしかない」という。
取材協力:River Davis
Shiho Takezawa, New Chip Crisis Means Japan’s Auto Giants Aren’t in Clear Yet. © 2022 Bloomberg L.P.