アフターコロナの前にまず不況をどうにかしよう

今回の大不況が社会に与えた衝撃は、その後の世界を変えるだろうか。コロナ禍が生んだ変化は、不可逆な変化なのか、それとも元の木阿弥なのか、誰もが知りたいところだろう。

アフターコロナの前にまず不況をどうにかしよう

本記事は6/12のAxion Tech Newsletterで公開されたものです。Newsletterの購読はこちらから。

新型コロナの影響で、日本経済は欧米諸国と同様、厳しい状況にあると考えられる。6月8日発表の世銀予測は、2020年には世界のGDPが5.2%縮小すると想定し、日本のGDPは6.1%縮小すると予測した。パンデミックの影響で、ほとんどの国が2020年には景気後退に陥ると予想され(図1)、1870年以降、世界の国々の中において最大の割合で一人当たりの所得が減少している。

図1.不況の国の割合。世界のほとんどの国が2020年に不況に直面すると予測される。Source: World Bank

危機が世界経済を席巻したスピードを見れば、不況の深さを知る手がかりになる。世界的な成長率見通しの急ピッチな下方修正は、今後さらに下方修正が行われる可能性があることを示唆しており、経済活動を支えるために政策立案者が今後数ヶ月の間に追加的な措置を講じる必要があることを示している(図2)。

この見通しの中で特に懸念されるのは、世界的な景気後退が、新興市場や発展途上国において、GDPの3分の1を占めると推定されるインフォーマルセクターが広範に存在し、総雇用の約70%を占める経済に、大きな打撃を与えるという点である。しかし、インフォーマルセクターは新興国特有の事象ではなく、富裕国においても、ギグワーカー、フリーランスなどと形容される非正規雇用が存在し、彼らは不況の打撃を著しく受けている。

日本でも苦境に喘いでいる人はたくさんいる。休業者数が統計開始以来最多に達し、失業率も上昇傾向にある。経産省の『新型コロナウイルスの影響を踏まえた 経済産業政策の在り方について』によると、休業者数は597万人に上昇。労働力人口(約6800万人)のうち9%が休業している計算。今後、企業倒産が増えた場合、支えられなくなった休業者は失業者へと転換される可能性がある。4月に入り、非正規雇用者数は、前月比131万人の減少だった。

経済産業省『新型コロナウイルスの影響を踏まえた 経済産業政策の在り方について』Jun 17, 2020.

菊池信之介、北尾早霧、御子柴みなもの研究は、所得水準の低い就業者は新型コロナによる影響を受けやすく、 労働市場における格差拡大につながる可能性が高い、と主張している。

今回の不況は、典型的な不況の場合とは明らかに異なり、社会的関係や対面での取引に頼りがちな業界を痛めつけ、仕事の配置に柔軟性がなく、リモートでは完結できない仕事が多い職業を苦しめる傾向がある。リモート可能とリモート不可能な職業の間の痛みに大きな格差が生じている。菊池らは、政府が早急に対応し、危機に瀕している個人の弱い立場にある人々に財政支援を行う必要がある、と訴えている。

本研究は、JCB消費NOWの支出データを用いて、COVID-19危機の影響を経済の異なるセクター間で評価し、異質な労働者の収益がショックにどのように反応するかを定量化している。

このニュースレターでは以前も、JCB消費NOWを利用しコロナ以降のオンライン消費の動向を予測した渡辺努、大森悠貴らの研究紹介している。

渡辺らは、消費者の消費行動の状態を「オフラインのみ」「併用」「オンラインのみ」の3つと定義し、コロナ前とコロナの最中での遷移の確率を、上述のデータに基づいて推計する手法をとった。この結果、渡辺らは、コロナ感染拡大に伴うオンライン消費の利用増加は、既存のオンライン消費者がその利用割合を高めたために引き起こされており、非利用者のデジタル転換を実現していないため、コロナ収束後は、オンライン消費の増加分は剥げ落ちる可能性がある、と主張している。

前述の世銀の報告書は「パンデミックによって引き起こされた大不況は、投資の減少、失われた仕事や学校教育による人的資本の侵食、世界貿易と供給の連携の分断によって、永続的な傷跡を残すことが予想される」と説明している。

今回の大不況が社会に与えた衝撃は、その後の世界を変えるだろうか。コロナ禍が生んだ変化は、不可逆な変化なのか、それとも元の木阿弥なのか、誰もが知りたいところだろう。

Photo by Alecsander Alves on Unsplash

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米国のEV革命は失速?[英エコノミスト]

米国のEV革命は失速?[英エコノミスト]

米国人は自動車が大好きだ。バッテリーで走らない限りは。ピュー・リサーチ・センターが7月に発表した世論調査によると、電気自動車(EV)の購入を検討する米国人は5分の2以下だった。充電網が絶えず拡大し、選べるEVの車種がますます増えているにもかかわらず、このシェアは前年をわずかに下回っている。 この言葉は、相対的な無策に裏打ちされている。2023年第3四半期には、バッテリー電気自動車(BEV)は全自動車販売台数の8%を占めていた。今年これまでに米国で販売されたEV(ハイブリッド車を除く)は100万台に満たず、自動車大国でない欧州の半分強である(図表参照)。中国のドライバーはその4倍近くを購入している。

By エコノミスト(英国)
労働者の黄金時代:雇用はどう変化しているか[英エコノミスト]

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2010年代半ばは労働者にとって最悪の時代だったという点では、ほぼ誰もが同意している。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの人類学者であるデイヴィッド・グレーバーは、「ブルシット・ジョブ(どうでもいい仕事)」という言葉を作り、無目的な仕事が蔓延していると主張した。2007年から2009年にかけての世界金融危機からの回復には時間がかかり、豊かな国々で構成されるOECDクラブでは、労働人口の約7%が完全に仕事を失っていた。賃金の伸びは弱く、所得格差はとどまるところを知らない。 状況はどう変わったか。富裕国の世界では今、労働者は黄金時代を迎えている。社会が高齢化するにつれて、労働はより希少になり、より良い報酬が得られるようになっている。政府は大きな支出を行い、経済を活性化させ、賃上げ要求を後押ししている。一方、人工知能(AI)は労働者、特に熟練度の低い労働者の生産性を向上させており、これも賃金上昇につながる可能性がある。例えば、労働力が不足しているところでは、先端技術の利用は賃金を上昇させる可能性が高い。その結果、労働市場の仕組みが一変する。 その理由を理解するために、暗

By エコノミスト(英国)
中国は地球を救うのか、それとも破壊するのか?[英エコノミスト]

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脳腫瘍で余命いくばくもないトゥー・チャンワンは、最後の言葉を残した。その中国の気象学者は、気候が温暖化していることに気づいていた。1961年、彼は共産党の機関紙『人民日報』で、人類の生命を維持するための条件が変化する可能性があると警告した。 しかし彼は、温暖化は太陽活動のサイクルの一部であり、いつかは逆転するだろうと考えていた。トゥーは、化石燃料の燃焼が大気中に炭素を排出し、気候変動を引き起こしているとは考えなかった。彼の論文の数ページ前の『人民日報』のその号には、ニヤリと笑う炭鉱労働者の写真が掲載されていた。中国は欧米に経済的に追いつくため、工業化を急いでいた。 今日、中国は工業大国であり、世界の製造業の4分の1以上を擁する。しかし、その進歩の代償として排出量が増加している。過去30年間、中国はどの国よりも多くの二酸化炭素を大気中に排出してきた(図表1参照)。調査会社のロディウム・グループによれば、中国は毎年世界の温室効果ガスの4分の1以上を排出している。これは、2位の米国の約2倍である(ただし、一人当たりで見ると米国の方がまだひどい)。

By エコノミスト(英国)