
鴻海が中国本土の対抗馬・立訊に脅かされている
中国の電子機器の受託製造サービス(EMS)大手、立訊精密が鴻海が10年以上iPhoneの組み立てを独占している状況に挑戦状を突きつけた。中国とAppleの蜜月が立訊に追風となっている。
要点
中国の電子機器の受託製造サービス(EMS)大手、立訊精密が鴻海が10年以上iPhoneの組み立てを独占している状況に挑戦状を突きつけた。中国とAppleの蜜月が立訊に追風となっている。
立訊精密工業(ラックスシェア)は現在、Appleの承認を得て中国東部に大規模な製造施設を建設している。立訊は、江蘇省昆山市に総投資額110億元(17億2,000万ドル)を投じて28万5,000平方メートルの製造施設を建設している。この広大な敷地はサッカー場40個分の広さがあり、早ければ来年にも数百万台のiPhoneを生産する予定だ。
この新工場の建設により、中国のサプライヤーは、iPhoneの組み立てにおけるシェアを、2021年の約650万台から、早ければ来年には1,200万台から1,500万台へと大幅に引き上げることを目指しているという。
フィナンシャルタイムズが引用した複数の関係者によると、中国のもう一つの新興電子機器製造企業である聞泰科技(ウィングテック)は、最近Appleのサプライチェーンに参入し、Mac miniとApple TVの製造を受注したという。Appleはまた、BOE Technologyを今年の新型iPhoneのプレミアムディスプレイサプライヤーのリストに加えた。
現在、立訊は、Microsoft、Google、Amazonなど、世界最大級のハイテクブランドの製品を手がけている。しかし、Appleは依然として立訊の最大の顧客であり、立訊の最新の年次報告書によると、2020年の売上高約145億ドルのうち約70%を占めている。また、立訊の株式時価総額は530億ドル(約5,000億円)であることから、共同創業者でCEOの王來春が保有する株式は約100億ドル(約1兆円)の価値があることになる。
Appleと中国政府の関係の恩恵
Appleが立訊を鴻海の対抗馬にしようとするのは、サプライヤーを競争させたほうが良いという戦略的な判断だけでなく、中国でのビジネス環境を良くするための中国政府とティム・クックの「密約」が関係している可能性があると米テクノロジーメディアThe Informationは主張している。