Microsoft、VRから撤退しAIに倍プッシュ

Microsoftは、VR/ ARから事実上撤退し、AIへの賭け金を一気に増やした。同社のボスは、AIがモバイルやクラウドに次ぐ大きな波になると予想し、その波が始まる地点に我々はいると考えている。

Microsoft、VRから撤退しAIに倍プッシュ
2017年11月29日(水)、米ワシントン州ベルビューで開催された同社の年次株主総会で講演するMicrosoft Corp.のサティア・ナデラ(Satya Nadella)最高経営責任者(CEO)。David Ryder/Bloomberg.

Microsoftは、VR/ ARから事実上撤退し、AIへの賭け金を一気に増やした。同社のボスは、AIがモバイルやクラウドに次ぐ大きな波になると予想し、その波が始まる地点に我々はいると考えている。


Microsoftは23日、AI研究所OpenAIに対する追加投資で合意したと発表した。両者は投資内容について「複数年、数十億ドルの投資」と表現している。

ブルームバーグが引用した関係者は、Microsoftの総投資額は合計100億ドルに上る、と述べている。これは、2019年にOpenAIに注ぎ込んだ10億ドルと、2021年の2回目のラウンドを含んだものだ。

うわさでは、この取引では、Microsoftは、100億ドルの投資を回収するまで、OpenAIの利益の75%を取得する権利を有する、とされる。その資金を回収した後、MicrosoftはOpenAIの49%の株式を取得し、他の投資家が残りの49%を分配し、OpenAIの非営利団体は残りの2%を取得する。

OpenAIは最近界隈の話題を独占するチャットボットChatGPT、その大本にある大規模言語モデル(LLM)のGPT-3、プログラミングAIのGitHub Copilot、画像生成AIのDALL-E 2等のAI製品を開発した。OpenAIはこれらを開発する計算能力をMicrosoft Azureに依存している。

Microsoftが以前OpenAIに投資したときと同様、今回の取引の価値の多くは、MicrosoftがOpenAIのAIシステムを動かすのに必要なAzureクラウドコンピューティングの馬力を提供するという形になると、ブルームバーグが引用したこの取引に詳しい2人の関係者は述べている。

OpenAIとMicrosoftは、長年にわたり緊密な協力関係にある。2020年、MicrosoftはスタートアップとGPT-3モデルの独占ライセンス契約を結んだと発表し、これが後にGitHub Copilotにつながった。一方、OpenAIは同社のAzureの大口顧客であり、「28万5,000以上のCPUコアと1万以上のGPU」を持つカスタムAIスーパーコンピュータクラスタを利用できる取り決めだった。

Microsoftは今月初め、AzureにChatGPTを追加する予定であると述べ、2021年に発表されて以来、限られた顧客のオプションとなっていたAzure OpenAI Serviceを広く利用可能にすることを発表した。これにより、Azureの顧客は、クラウド上で動作する独自のアプリケーションでOpenAI製品を利用できるようになる。

Microsoft自身も検索エンジンBing、Office、チャットアプリケーションTeams、セキュリティソフトウェアにこうした技術を追加したいと考えている。同社は、DALL-Eを設計ソフトウェアに入れ、Azureクラウドの顧客に提供している。

MicrosoftのCEOであるサティヤ・ナデラはモバイルとクラウドの次はAIの時代だと見ている。「クラウドとモバイルが大きくなった2007年、2008年を思い出してみてください。AIに関しては、そのような段階にあると思う」と1月初旬に行われた米CNBCのインタビューで語っている。

Microsoftは、ゲームやメタバース向けのエンタテインメントVRから事実上撤退した。 ビジネスVR向けのHoloLensでも、米陸軍からの大量発注がストップし、関連従業員の90%を削減した。同社はVR / ARの熱狂を放棄し、LLMへの投資に移行していくように見える。

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OpenAI、法人向け拡大を企図 日本支社開設を発表

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OpenAIは東京オフィスで、日本での採用、法人セールス、カスタマーサポートなどを順次開始する予定。日本企業向けに最適化されたGPT-4カスタムモデルの提供を見込む。日本での拠点設立は、政官の積極的な姿勢や法体系が寄与した可能性がある。OpenAIは法人顧客の獲得に注力しており、世界各地で大手企業向けにイベントを開催するなど営業活動を強化。

By 吉田拓史